八月 第四週


  水とまる 真夏なのに 水でない

                                                守餌象

  鼻を舐めたぁっ! あいつ、鼻、舐めたぁっ〜!!

                                                舞無舞無

もはや、五七五を守れないくらいの衝撃を受けたことを表現してみました。
それは会社からの帰り道 in 電車の中。
ギュウギュウという程ではないけれど『もう、ヒトは入ってこないで欲しいなぁ、もっとも、私は次で降りるけどねーん』と思う程度の混み具合の車内に。
一組のカップルがいた。年の頃は双方20代前半といったところか。
たまたま、視界ど真ん中だったので眺めるともなしに見ていたのだが、ギュウギュウでもないのにお互い向き合って不必要に身体を寄せ合っていた。まぁ、別に普通。
『きっ、きき君たちッ!!! もうちょっと離れなさいッ! ハ、破廉恥なッ!!』なんて、野暮なこと言う気はない。私は風紀委員でも生活指導担当でも何でもないし。
昔は『カップル死ね死ね団』を自称していて、寄り添ったカップルの間を敢えて通り抜けてみたりしていた(←馬鹿)もんだがね・・・と思った、その時。
オトコがオンナの鼻を・・・ベロリと舐めた。
んなっ! ななななっ! な、何をっ! 何をしてるんだ、君わっ!!!
ええ、多分、瞳孔開いたと思います、その瞬間。目からチャクラ的なモノが出た可能性も。
恋する2人に、周りは見えないものかもしれない。OK、いいだろう、それは認めよう。
『恥じらい』が云々とかも言わないでおこう。
しかし、鼻を舐めることはないだろう。それなら、いっそ、マウスtoマウスにしてくれ。
それでもきっと、私の目からチャクラは出るだろうけれども(笑)、少なくとも理解可能だ。
鼻舐めなんつー、そういう、個人的な・・・プレイ的な・・・アレは・・・真実、2人きりのときにやってくれ!! 
犬か、キサマは! この獣め! 今、この瞬間から、お前の名前は「ケン」だ! 無論、漢字で書いたら「犬」だ、分かったか、このヤロウ!!!
これで、彼女の方が喜ばしい顔をしていたら、そっちにも、すごいあだ名をつけてやろうと思っていたのだが、幸い(?)彼女は、ちょっと嫌そうな顔をして、ケンから身体を離した。
む? 恋愛感情的には、ケン>彼女なのか?! 鼻舐めはケンの彼女へ対する想いの暴走か?!
こりゃあ、面白くなってきたわい・・・。手にしていた文庫本を閉じ、本格的にカップル観察に入る私。俗人と言わば、言え。
ケンは、彼女の反応に「しまった・・・?」と思ったようだった。おもむろに哀しげな顔になり、こう言った。
「昨日から、お母さんが入院に行っちゃってさ・・・」
スタァァァ〜〜〜〜ップ(STOP)!! ケン!! ステイ、ヒア!!! ビ、クールッ!!!
その台詞は、突っ込みどころが満載過ぎる。満載にも程がある。
そのいちっ!
『お母さん』ってゆーなよ、いいオトナが!! しかもカノジョの前で!! せめて「ハハオヤ」と言ってはくれまいか? 自分のオトコが第三者の前で『お母さん』なんて単語を使うのを聞いたら、少なくとも、私は自爆する。恋は冷める。
そのにっ!
『入院に行く』っておかしいから。『入院した』もしくは『病院に行く』だから!! 
そのさんっ!
百歩譲って、お母さんが入院したのが辛くて堪らなかった・・・のだとしよう。しかし、それは恋人の鼻を舐める理由にはならんから! 断じてならんから!!

「・・・そうだったんだ・・・」

え?
待てよ。待ちたまえよ、彼女。
今の、台詞の、何、に、ナットク、した、の?
っつーか、あれ(お母さんが入院云々)って2人に通じる暗号か何か?
少なくとも、私にはケンが彼女の同情を引くための、あからさまな嘘に見えたんだけど・・・?
違うにょ?

途方に暮れる私を余所に(っつーか、私は最初から余所の人だが)2人は再び身体を寄せ合った。
残念ながら、そこで私は電車を降りたわけだけれども。
うーん、恋は当人達同士以外にとっては・・・まったくもって不可解だ。

  通勤中 セミに顔面 当たられて・・・
                                                紀之一多

【ちょっとした事故ですよ】
上田 : イデデデデデ・・・・。
月影 : この世ならさるものばかり見ているからこういう目に遭う。
上田 : この世ならざるものなんか見とらんわい!!セミ甘くみんな!!セミ早ェぞ!!
月影 : そんなことないよ。僕なんかお箸で捕まえちゃう。ほれ。
上田 : やめい!!
月影 : 三途の川も渡っちゃう。ほれ。
上田 : 渡っとる場合か!!今は俺のセミの話だろうが!!
月影 : 上田くんのセミではない。あれはフリーのセミだ。むしろ地球のセミだ。
上田 : 確かに俺の飼っているセミではないが・・・しかし、俺の飼っているセミだとしたら、飼い犬に手を噛まれる如き出来事ではないのか?
月影 : 飼いセミに顔に当たられる・・・。
上田 : ム!?ゴロが悪い!!
月影 : 上田くん、セミに激突されたからと云ってそこまで激怒しなくても。セミのほうがよっぽどダメージが大きかったと思うよ。口を開けて歩いていなくて良かったと思わなければ。
上田 : うう・・・星なんかになぐさめられるなんて・・・っていうか、何故セミ如きにここまで凹まねばならぬのか・・・!?
月影 : それは君が病んでいるからさ。この薬を飲みなさい。なんかよくわからないけど、よく効くから。
上田 : あ、怪しい!!なんなんだ、その「なんかよくわからないけど」ってのは!?
月影 : 僕のタンスから、ぽろっと剥き身で出てきたので。
上田 : それ薬かどうかも解らないじゃないか!?
月影 : いわしの頭も信心から。薬だと信じて飲めばなにがしかに効くであろう。
上田 : 偉い坊さんみたいに云っても駄目っ!!
月影 : 神主さんのほうがいいな・・・。
上田 : 淋しそうに呟くんじゃない。
月影 : 僕は淋しい子どもなんだ!!小さい頃、学校で飼っていた白犬ポチに上履きをくわえて走り去られて以来、ずっとかたっぽ履きなんだ!!
上田 : 買ってもらいなさい、上履きくらい。
月影 : 趣味は体育館シューズを体育館以外で履くことです!!
上田 : 意味わからん!!ちゃんと体育館で履けぃ!!
月影 : 靴って・・・なんだろう・・・。
上田 : そこまでか?そこまで来ちゃったのか?早く現実に帰ってきなさい。
月影 : はっ!ただいま!!セミの話だったよね!?
上田 : え!?そっから!?よりによってそこに戻るの!?
月影 : 上田くんがセミに真っ向勝負を挑んだ挙げ句に、返り討ちにされたあの虚しく悲しい人VSセミ戦争の話だったよね?
上田 : そんな話ないわい!!しかもそれ俺負けちゃってんじゃん!!
月影 : 命を大切にしないやつなんかだいっきらいだ〜。
上田 : 「ゲド戦記」だよ!!
月影 : 見てないけどね。
   (「ブレイブストーリー」もまだ。とほほ)紀之一多+月影星之介・上田柾流




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