大丈夫 同じオンナよ コワクナ〜イ
舞無舞無
残業帰りだったので、夜道をペタペタと歩いていた。
駅から我が家までは、徒歩10分ほど。生憎、ヨーカドー閉店時間だったので、大回りして、夜光堂で『暗闇坂』と劇的な名を冠されている、街頭と人通りの少ない道を通らねばならなかった。
ヨーカドーの開店時間内だと、店内を通り抜けることが出来るので、避けることが出来るのだが…まあ、致し方なしである。
夜の坂は…まぁ…怖い。
幽霊とか心霊とか、その類いもだけど、“人”が…もっと言ってしまえば、“野心満々のヘンな人”に遭遇するのが怖い。
実家にいたときに、“パンツ+ブラジャーonトレンチコート”という解放的なスタイルの男に、コートの中身を見せられて、『うわあぁぁ!』と叫んだのも、夜(正確には未明)の坂での出来事だったし、にしおかすみこが、ワンピース脱がされて下着姿で逃亡した…という体験をしたのも、夜の坂ではなかったか?!
ホントね…。 住居を決めるときは、昼間だけじゃなくて夜の様子もチェックしないとダメだね。
で、その坂を1人でふらふらと昇っていたわけだ。 音楽を聞きながら。
ふと、前を見ると、細身の女の子が歩いていた。
「あ、お仲間だ〜。良かった、お互い安心じゃん〜」
と、思った。私は、そう思った。
しかし! 彼女はそうは思わなかったらしく…。
振り返る! 振り返る! いちいち振り返る! 何度でも振り返る!!
そんなに振り返っても、ここは一本道だから…私じゃなかったとしても、貴女の後ろを歩くしかない状態なんだよ〜。
その時の、私の服装。 黒のカットソーに膝丈の花柄スカート。
…女じゃね? 女らしくね? そりゃ短髪だけど、『女装した男子』には見えないくらいのシルエットは形成しているという自負がある!
だから、大丈夫だよ〜。
なのに、振り返る。
尾行を警戒してる犯罪者か? ってくらいに振り返る。
こっちも、何だか申し訳ないっつーか、そんなに警戒されると逆に居心地が悪いっつーか…。
「この坂抜けて、しばらく歩いたら、わたくし、路地に入るからさ…それまで我慢して…」
と、心で話しかける。
なのに、なのに、ああ、なのに!
私が曲がる路地を彼女も曲がって行くのだった…。
「…う、わあ…」と思いながら、当然、私だって曲がる。帰りたいもん、早く!
そして、やはり振り向いた彼女は、明らかに“ギョッ”とした顔でこちらを見た…。
…あのさぁ…。
何となく予感してるんだけどさ…。
この路地を曲がるってことはさ…。
貴女さ…。
かなりの確率で…。
ああ、やっぱり…。
彼女は、私の住む部屋のあるマンションの玄関へと吸い込まれて行った。
…おんなじとこに住んでたんだね…。
数十秒遅れて玄関に現れた私を見た時のひきつった顔といったら!!
密かに傷ついた…。
更に、彼女が開けてる郵便ポスト…。
ウチの隣なんですけれどもぉぉぉ〜。
お前か! 毎週末に彼氏を部屋に連れ込んでいちゃこらしてんのは!!
あと、こないだ、ウチのベランダを訪れたGの虫をそっちに追いやってごめんね!
何故か郵便受け前で未だグズグズしている彼女を尻目に、私はさっさと自分の部屋に戻ったのですが。
きっと、女ストーカーに付回されて嫌な思いをしたことがおありなのねそうなのね。
・・・彼氏に送って貰えばいいのに。ぶちぶち。 |