暴風雨 お尻がまあるく 濡れる朝
紀之一多


<解説文>

【台風一過を「台風一家」だと思っていた小学生は何人いるだろう?】

月影:ちなみに上田くんは、むかし「台風の目」と聞いて、本当に空にぽっかり巨大な目
   玉が現れると思いこみ、熱を出して寝込んだことがあったね。

上田:人の恥ずかしい過去を微笑ましい口調で語るな!!

月影:で、一多。この「お尻がまあるく」っていうのはどういう状況なんだ?

紀之:うん。コレはね、俺が台風の朝に街を歩いていて発見したんだけど、暴風雨のとき
   って傘なんかさしてても濡れるだろ?

月影:ああ。ときたまオジサンのさしてる黒傘が「びよ!」っとひっくり返る事すらあるね。

上田:「びよ!」ってなんだ?

紀之:それでね、お尻って出っ張ってるから雨が当たりやすくて、見たらみんなお尻がま
   あるく濡れてるの。俺を追い越すサラリーマンのオジサンみんな、お尻のトコロの
   布がヘタヘタってくっついて中のパンツのガラまで見えちゃってるわけ。

月影:おぇ。

上田:失礼なヤツだな、おまえ。傘がひっくり返るのもそうだけど、そういうのって不可
   抗力だよな。自然のイタズラっていうか。

月影:オロカだなあ、上田くん。精神でバリアを張ればいいんだよ。風も吹き込まないし、
   傘だっていらないんだぞ?

上田:当然みたいな顔して言うな!!出来るワケないだろうが!!

月影:じゃあ、君はこの僕に、「靴下の中にズボンのスソを突っ込んだオッサン姿」で出
   かけろというのか!?

上田:そんなこと言ってねえだろ!?どっから出てくるんだ、その具体的な恰好は!!

月影:うちのチチが今朝ほど・・・。

上田:俺のことを「オロカ」呼ばわりする前に、貴様の父親の恰好をなんとかせえよ
   オマエは〜!!

紀之:ボクのお父さんは、台風が来ても何事もなかったかのようにスーツ姿でチャリンコ
   にまたがって出かけていくよ。

上田:傘は?

紀之:傘とかカッパとかなんにもなしで、普通に玄関開けて「いってきま〜す」って。

上田:雨風ゴーゴーの中、チャリ漕いで行くってか?!

月影:僕も見たことがあるけれどあれはなかなかどうして凄いモンだよ。なんせ笑顔だか
   らね!いつ何時でも笑顔を忘れない・・・なんて立派な人なんだろうか・・・。

上田:忘れちゃならんのは、この場合笑顔じゃなくて傘だろう!!

月影:我ながら「ウマイこと言った」と思ったろ?

上田:思ってねえよ!!

月影:よ!歌丸!!

上田:いらんかけ声すんな!オマエのようなヤツが、ドラマなんかでふと停電になった時
   に日頃ニクイヤツを殺害したりするんだよ!!

月影:そんなことしないよ。僕だったら・・・(フッと電気が消える)

紀之:うわあ、停電だあ!(しかし暗闇は一瞬で、すぐに電気が点く)

上田:あ!!俺のオヤツがないっ!!

月影:ニヤリ・・・。

非常じゃないときに非常食を食ってしまった!紀之一多+月影星之介・上田柾流