其の弐拾四『フシギナデキゴト』の巻



 部屋の中でふと見つけた紺色のメモ帳。
 いつ買ったとも覚えのないソレを、ピラピラと捲ってみて驚いた。
 最初の一ページの他には何も書いていない。
 しかし問題なのはそこではなかった。
 その、最初の一ページに書かれた謎の文章なのである。

 『シロイタマシイハ  ヨイタマシイ
  キイロイタマシイハ ヨイタマシイ』

 ・・・・は?
 僕は呆然とした。
 なんのこっちゃ?なんの呪文なんだコレは?なにがヨイタマシイなんだ??
 真っ白なメモ帳にたった二行だけ、少し細目の紺色のペンで書かれたその文字は、見まごう事なき僕の字である。なんなんだよ、この妙に意味ありげな言葉はッ!!シロイタマシイはともかく、何故キイロイタマシイもヨイタマシイなのか!?わからん!まったくもってワケがわからん!!一体何を復活させようとしていたんだ、当時の俺よ?(笑)ああ〜気になる〜。自分で書いておきながら、すっげえ気になる〜ぅ。
 気になる〜ぅ、と言えば最近こんな不思議な出来事があった。
 某有名古本屋で購入した四冊(うち2冊は上下巻の同作品)、作者も出版社も違う三つの作品に奇妙な共通点があったのだ。
 中味もロクロク見ないで買った4冊である。コレはもう不思議な偶然だ、としか言いようがないのだが・・・その奇妙な共通点とは「カニバリスム」なのである。
 「カニバリズム」、要するに人喰いだ。不思議なことに同じ日に買った作品全部に、カニバリズムの要素が含まれていたのである。日頃から「肉が食いたい、肉が食いたい」と呪文のように呟いている僕の中の呪われた血が、人をムシャムシャと喰らうこれらの作品を無意識に呼び寄せたのであろうか・・・!ハッ、そういえば、夜光堂の第3回公演「BLUE NIGHT’S HEAVEN」において人喰いを物語に取り入れていたのは、何を隠そうこの僕ではないか!(笑)そうか。そうだったのか。羊の皮をヌクヌクとかぶった七海の中にも、人喰いというタブーに惹かれる狼的なデンジャーゾーンがあったのだな・・・ふむふむ・・・と、納得したいところだがソレはないと断言したい。僕は過去一度として人間を見て「な、なんてうまそうなお肉なんだ〜」とヨダレを垂らしたこともないし(ソレはハッキリ言って変態だね!)、ふと目覚めたら口の周りが血でベトベトだった(ソレはハッキリ言って病気だね!)こともないからだ。そう、僕が愛しているのはあくまでもお牛様のお肉なのだ!
 にしても「カニバリズム」とは不思議な縁である。
 赤川次郎『崩れる』(桃園書房)では、ニナと呼ばれる謎の女がおばあさんをシチューにして喰っていた。
 浦賀和宏『記号を喰う女』(講談社ノベルス)では、人を喰うことによってそのパワーを手に入れることが出来るという伝説を軸に殺人が起き、最後には数人の学生たちが死にたての男をムシャムシャ喰らう場面が出てくる。
 そして僕がガツンとハマったのは、三つ目の作品である『アナザヘヴン(上・下)』(角川ホラー文庫)だった。『NIGHT HEAD』でもお馴染みの飯田譲治・梓河人の作品である。映画もドラマも見逃してしまっていたので、物語をちゃんと見るのは小説が初めてなのだが・・・いや、こりゃ予想以上に僕のツボをギュウギュウ押す面白さだ!コレだけ長いのに一度事件が起こると加速度的に物語が転がり、ちっとも飽きることなく始終ドキドキしっぱなしでアッという間に読み終えてしまった。またこの物語に出てくる刑事クン・早瀬学がカッコイイんだ!(笑)

 物語はとある猟奇的な殺人事件からはじまる。
 被害者は二十七歳の男性。首が斬られている・・・まではまだよいとしても、その猟奇性の凄まじい事には、なんと脳が抜き取られシチューの材料にされていたのだ。第一発見者であるアパートの大家中村は、警察に電話してこう言ったという。『・・・脳味噌がぐちゃぐちゃだ。人間がシチューになってるよ、お鍋の中でニンジンやジャガイモといっしょにことこと煮えてるよ、ははははは』(上巻21ページより)。しかも驚くべきことに、そのシチューを、犯人は、食べていたのだ・・・。事件担当刑事の飛鷹と部下の早瀬は犯人を追うべく調査を開始するが、それをあざ笑うかのように次々とマッドクックによる料理は続いていく。グラタン、カレー、スパゲティ・カルボナーラ、エビピラフ、マーボー豆腐、鍋焼きうどん・・・。脳を抜かれて料理された被害者の男性たちを調べていくうちに、飛鷹と早瀬はとある女性に行き当たる。犯人に危うく殺されかけた男からの通報もあり、いよいよ二人はマッドクックを追い詰めるのだが・・・・。
 それは、長い長い事件の、ほんの序章に過ぎなかった。

 果たしてこの先、飛鷹・早瀬の二人がどんな運命の渦に巻き込まれていくのか?マッドクックの真の正体とは一体なんなのか・・・?この猟奇殺人の結末、そしてその先にあるものは・・・?興味を惹かれた方は是非とも読んでみていただきたい。殺人事件ではあるがミステリではなくホラー系なので、謎解きよりは飛鷹と早瀬の巻き込まれていく物語を楽しんでいただきたい。コレはもう文句無しに面白いです、僕的に。(しかもシチュー云々を読んでいる日に出てきた七海家の夕食がよもやクラムチャウダーだとは・・・出来過ぎている。)
 世の中に不思議なことなどないのだよ、と京極堂はよくよく言っているが、やっぱり自分でも解らないウチに不思議ゾーンに入ってしまっていることはあるのだと思う。例えば、カニバリズムを題材とした本を何冊も一気に買ってしまったり、ワケのわからない呪文のような言葉を書き綴っていたり・・・それに、行きずりのダレカを、コトコト美味しいお鍋にして食べてしまっていたり・・・・ね?


(この最後の一文はフィクションであります。白子は脳味噌に似ているから食べられない、と豪語する僕にヒトは料理出来ません。本や漫画を買うにあたって、当てずっぽうに手にしたモノがココロにジャストミートすることが時々ありますが、忘れもしない上野駅で「電車に乗ってる暇な時間を埋めよう」と手にしてハマった漫画が『サイコ』(田島昭宇×大塚英志)でした。(笑)こういうの好きなんだな、きっと。癒やし系では伸たまき(今は獣木野生)先生の『パーム』シリーズ。コレはもう最高にココロに優しい物語です。ああ〜そういやあ今最も僕のココロの糧となっている『龍騎』が19日で終わるんだな〜。その後僕は一体何を糧に生きていけばいいんだらうか・・・。ここは樹海のまっただ中って感じだな・・・。)

A Theatrical Campany yakoudou