其の弐拾六『僕の愛した饂飩(うどん)』の巻 |
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今何が食いたいと言われれば、『肉汁うどん』が食べたい。 『肉汁うどん』というのは、我が地元宮城県のとある饂飩屋さんで出している料理で、『肉』の一文字から見てもらっても解るように、七海の大好きな一品なのだ! 冷た〜い手打ちうどんを、熱〜い汁につけて食べる幸せ。 濃いめの汁の中には、やわらかい豚肉と大きくぶつ切りにされたネギがたっぷり入っており、それがまたなんともいえない風味をかもし出している。冷たいうどんと熱い汁を吸った豚肉を同時に口に入れれば、サッパリとコッテリを同時に味わえるという塩梅だ。 そう。鴨ザルなんかの豚肉版だと思ってもらってよろしい。 七海は実家に帰る度に、阿呆のひとつ覚えのようにこの『肉汁うどん』をオーダーし続けている。おかげで、その店の他のメニューは食ったコトがないという有様だが、仕方がない。ウマイモンはウマイ!食いたいモノは食いたい!のだ。 * 今、ブームになっているのは四国出身讃岐うどんだが、我が故郷東北にもうまいうどん屋はたくさんある。 思えば、僕のうどん好きは会津若松に端を発している。 『峠のうどん』屋。 その名の通り山の峠に店をかまえている。雪に負けないように、ドッシリと構えた大きな店。だが、ドッシリと構えているのは建物だけではない。 『峠のうどん』屋で出しているうどんは、それはそれは度肝を抜くくらいドッシリとしているのだ!なんせ太い!そして驚くほどにコシがある! 普通ざるうどんなどは、つゆにつけたらズルズルズル〜っと一気に啜るものだが、『峠のうどん』はそうはいかない。一本ずつ、モクモクと食べざる得ないのだ。ズルズル啜りたいヤツは啜るがいい。止めはしない、が、死ぬかもしれん。(笑)「うどんで窒息死!」そんな言葉が浮かぶくらい迫力のあるうどんなのだ。 僕は麺類をズルズル啜って食べることが出来ないのだが、コレはもしかしたら幼い頃にこの啜っては食べられないうどんに出会っていたからかも知れない。 『峠のうどん』屋の名物は、なんといっても『ざるうどん』と『けんちんうどん』で、「麺類は冷たいモノに限る」と豪語する僕は、当然冬のまっただ中でも『ざるうどん』派だった。 『ざる』と言っても、ざるにのってくるワケではなく、まわりは黒く中は朱塗りの大きなお椀のような入れ物に入ってやってくる。中を覗けば、太くて長いうどんがとぐろを巻くように入っており、その餅のような白さがお椀の朱に映えてなんとも美しかった。 そんなボリュームたっぷりのうどんをつけるつゆも、また少し他とは違う。見た目は真っ黒く、いかにも濃そうな雰囲気を漂わせているのだが、うどんをつけて食べてみるとコレが不思議にほんのり甘いのだ。 甘い、といってもまろやかな甘さで、言うなれば・・・・、味噌ではなく鯛味噌(もしくは田楽味噌)、醤油ではなくダシ醤油、のような・・・・、しょっぱ味の中にもまったりとした甘みが引き立っているというような味なのだ。どうしてもわからない人は、味噌汁に使う味噌と鯛味噌を交互に舐めて見てくれ!(それでもわかんなかったら、仕方がない!会津まで食べに行け!) そのつゆの中に、お好みで白ゴマやネギ、それにウズラの卵を入れて、うどんをよく絡ませてモクモクと食べる。お口直しには小さなカリカリ梅が付いていて、それもまた僕が気に入っている点だった。 『けんちんうどん』は、その名のとおり味噌仕立てのけんちん汁の中にうどんが入っているという、冬にオススメのあったかメニューだ。人参、牛蒡、大根、里芋・・・・様々な野菜がたっぷり入っており、栄養も満点。ホクホクした野菜と、熱々の汁だけでも十分幸せそうなモノを、さらにそこにモチモチのうどんが入ってるんだから、さらに幸せ倍増!みたいな一品だ。僕はこのけんちんの汁が大好きで、お父やんなんかが『けんちんうどん』をたのむと、もれなく汁を啜らせてもらったものだった・・・。 * ウチの家族は田舎モノなので、みんな『田舎そば』が好きらしい。 オヤジとハハはうどんよりも蕎麦が好きなのだが、真っ白な更級蕎麦よりは真っ黒で味の濃い田舎蕎麦(特に山形の蕎麦を絶賛しています。山形で蕎麦屋を営んでいる皆さん、なんかウチの両親に送ってやってください。でも蕎麦蜜は苦手です。)のほうが好みなのだそうだ。 僕も細くてスラスラと飲み込めるようなうどんより、モクモクと頬をいっぱいにして食べられる太くてコシのある田舎うどんが大好きだ。 会津の『峠のうどん』屋さんには、小学校高学年で引っ越してしまって以来、足が遠のいてしまっている。聞いたところによると、バイパスが出来て、山を越えるためには必ず通らなければならなかったその道も車通りが少なくなったとか・・・。にしても、僕のようにそれを『思い出の味』としている人は少なくはないはずだ。 またいつか、他のどの店でも食べられない『峠のうどん』屋さんの『ざるうどん』を食いに行きたいものだと思う。 (実は僕は蕎麦が苦手で小さい頃から食べられません。山形なんかに行くと、蕎麦だけを専門にやっているところも少なくはなく、両親に「スマンね!スマンね!」と言いながらどうにかうどんや御飯モノを一緒にやってる店を探してもらいます。そういえば、最近いわゆる狂牛病の国内7頭目の牛が発見されたことにより、七海家ではまたしてもお肉禁止令がしかれました。(涙)短い春だった・・・・。発見されてんじゃねえよ、牛!) |