| 其の四『小学生の頃、河童が好きだった』の巻 |
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実家の本棚で懐かしい本を見つけた。 ざらついた赤い表紙、うすく透けたような紙、ページを開けば独特の香り。『芥川龍之介全集』である。これは元々文学青年であった叔父の持ち物だったというから、昭和も半ばに発行された結構な年代の本なのであるが、私はコレを小学生の頃に譲り受けた。そして出会った。芥川龍之介が描く『河童』の世界と。 久々に『河童』のページを開いてみると、そこには鋭い目つきをした細身の河童が蓮の葉を肩にかけてこちらを窺うように見つめている。ふふふ。一度でいいからこんなのと夜中の沼べりで出会って腰を抜かしてみたいものだ。半ばこの絵の迫力に押されるように読み始めた『河童』に、小学生の私はすっかり参ってしまった。 話はとある男の口から語られる。 男は河童の世界を見たのだと言う。河童と言えば、川縁に棲む胡瓜が大好きで相撲が強くて時に人の尻コ玉を抜き取る、というイメージだろうが、芥川の作品に出てくる河童はまたそうした妖怪・河童とはひと味違うのだ。言葉も流暢に話せば、仕事も持っている。家が在り、家族が在り、人間も驚くような文明社会の中で生きている。一部には人間を凌駕するような制度を持っていたりするのだ、この河童どもは。幼心に刻みつけられた、今でも大変インパクトの強いシーンがある。河童の出産だ。とはいえ、河童が川の岩影に玉子をポロポロ産むとか、そんな生易しいモノではない。芥川の世界の河童は腹が膨れる。人間のお母さんと同じように腹が膨れるのだ。そうしてこれまた人間のように10ヶ月ほど腹の中で育てるワケだが、さていよいよ出産となった時、医者は聴診器を母親の産道に当てて中の赤ん坊にこう尋ねるのだ。「おまえはこの母親と父親のもとに生まれたいか?」。赤ん坊は腹の中から答える。「いいえ。僕はこの親の子どもとして生まれたくはありません」。すると医者は、そうかと言って母親のお腹にぷすりと注射を打つ。すると母親の腹は見る間に萎んでいくのだ。 怖い。相当怖い。生まれる前の赤子が意志を持ち、親を否定する。生きることを望まない赤子は注射一本でアッという間にかき消える。この制度が子どもにとって幸せなのか、不幸なのかは未だに解らない。でも、もし私が生まれる時にこうして聞いてくれていたら、私はなんと答えたろうね?ふふふ。なかなか子宮がキュッとなるようなブラックな話で、好いでしょ。(男の人には解らない喩えだったか・・・) 長い河童の世界の話を終えた後、男は虚ろな目で蛇口からポタポタと滴る水滴を見つめる。男が言うことには、男が河童の世界を離れた後も、友達となった河童たちは水を通して彼の元に遊びにくるのだという。さあ、この『河童』の話を語った男の今いる場所とはどこなのでしょう。窓に鉄格子のはまった・・・と言えばお分かりいただけるだろう。ふふふ。 こんな話の感想を原稿用紙にしたためて、小学生高学年の私は夏休みの宿題・読書感想文に持っていった。当時他に好きな作家といえば、宮沢賢治や江戸川乱歩、コナン・ドイル、ミヒャエル・エンデ、横溝正史等が居たが、なにぶんにも宮沢賢治の透きとおった夜の風のような作品は、私の心の奥底に溜まったコールタールのような汚い物質の浄化剤であった為、大切すぎて感想文などというちゃちなレベルで語れるモノではなかったし、かといって、江戸川乱歩の『人間椅子』など題材にして、自分の作った椅子の中に潜んで「うへ〜、奥さんのフトモモが〜私の上に〜」(という記述ではないが、コレにほぼ等しい表現は存在する)といったフェチな男の心情を想うというのも小学生としていかがなものかと思う。『シャーロック・ホームズの冒険』も『モモ』も『果てしない物語』も読み物としては大変好きな作品だが、感想文にするとなると難しい題材だ。ましてや手鞠歌になぞらえて起こるおどろおどろしい殺人事件を題材にでもしようものなら、間違いなく親が学校に呼ばれてしまう。 そう考えた末持っていった題材『河童』は、センセイが「次に読んでもらうのは・・・七海〜河童〜」と句読点もなんもない言い方で呼んだ為に教室中が爆笑の渦に巻き込まれ、内容をロクロク聞いてもらえないという悲しい事態に陥ったのだ。くう〜、河童の祟りか!?(違うだろう。)胡瓜をお供えすべきだった!!クケー! 『椰子の花や竹の中に 仏陀はとうに眠っている 路ばたに枯れた無花果といっしょに 基督ももう死んだらしい しかし我々は休まなければならぬ たとい芝居の背景の前にも』 『河童』の冒頭に添えられた、私の大変好きな文句だ。是非とも皆さん、これを機に芥川龍之介の『河童』ワールドにハマってみませんか? (そういう俺は未だに『龍騎』から抜け出せず、というかむしろ泥沼化して困っている。気が付けばビジュアルブックが家に四冊揃ってるし!どういうこっちゃ。そういえばこの前山形県にある温泉に行ったとき、ビデオデッキまで持参したにも関わらず山形だけで『龍騎』やってネエでやんの!その前後の番組『ハリケンジャー』と『お邪魔じゃドレミ』はやってんのに、『龍騎』の枠だけ山形の県政を考えようみたいな番組になってて・・・。っていうか、こんな朝っぱらから県政考えるもクソもあるか!!みたいな・・・。午後に考えろよそんなもんは!!みたいな・・・。もうすっげえショックでした。もう二度と日曜日に山形に泊まりになんかいかない・・・。) |