其の四拾六『夏が来たなら東北へ行け!!〜納涼篇〜』の巻



 夏だ!夏がやってきたんだ!!
 室内の冷房でキンキンに涼むぞぉっ!!
 ・・・・すまん。本当は夏が苦手なんだ。
 冷房なんか無縁の東北でホクホクと育った僕は、未だに関東の夏に弱い。まるで塩をかけられた死にかけのナメクジのように、ベロベロと床に這いずるしかないのだ。
 デンコちゃん、すまん。俺、電気使うよ!!エアコンガンガンにかけるよ!だって辛いんだもの!溶けてしまうんだもの!!(溶けネエっつうの)
 先日起きたショッキングな出来事をご紹介しよう。
 寝苦しさに耐えかね、うつらうつらしながらも枕元のリモコンを探し当てた僕は、指先に神経を集中させ、エアコンのスイッチを入れた。
 グオオオオオオ・・・・。
 エアコンが風を吹き出す音を聞いて安心した僕は、そのまま安らかに眠りに落ちる・・・・ハズだった。
 「う〜ん・・・う〜ん・・・グ?グアハアアアアッ!!」
 何故だ!?何故に頭上から熱風がそそがれているのだ〜〜!!おおう、まるでここは活火山の火口付近か、もしくはおすもうさんで一杯のサウナかのような熱気が、僕の体にウネウネとまとわりついている。
 僕は眠気もどこへやら慌ててエアコンのリモコンを手に取った。
 「・・・・だ、暖房になっちょるうううううううう!!!!」
 あぐわ〜!なんの弾みか、リモコンの表示が「冷房」ではなく、堂々の「暖房」になっていたのだ!!嗚呼ッ、悲劇。
 僕は・・・無駄に電力を消費し、わざわざこの暑い夜に熱風を体に浴びていたのか。
 これはもうこの夏最高の無駄遣いである。
 夏といえば海であるが、東北ッ子の僕は勿論違う。
 夏は神社だ!!
 そして寺だ!!
 神社仏閣はコレでもかってえくらいにヒンヤリしていてお気に入りの場所である。湿気のほとんどない東北は、日陰に入ればそれだけで十分に涼しい。たいていの神社や寺は、木々の生い茂った参道があり、自然の木々がこさえてくれる日陰を選びながらゆっくりと歩くのが、格別の贅沢となる。
 (たいてい有名な神社や寺には、入館料というものがあり、安くても4〜500円の金を巻き上げられるため、人々はこれでもかってえくらいにゆっくりと散歩するのだ。七海家のオススメは、岩手県の中尊寺・松島の瑞巌寺・塩釜の塩釜神社などである。近くを通った時は是非ともお立ち寄りをッ!)
 そしてなんといってもこの時期、神社や寺の宝物殿に出現する『幽霊画展』が僕のココロをウキウキとさせる。
 おお、ココロ弾む納涼の世界!
 僕の父やハハを筆頭に、僕の友達にはこういった類のモノが苦手な人が多いので、たいていは僕が一人で見て回ることとなる。
 まったく、この幽霊画だの妖怪画だのいうのは見ていて飽きることがないから不思議だ。
 真っ赤なTシャツを着て、黄色いリュックを背負った娘が、ひとり幽霊画の前で「ふ〜む・・・こ、これは・・・!」などと唸っている図は、ある意味幽霊画よりも人をゾ〜ッとさせることだろう。
 七海家夏の定番といえば、我が愛するイーハトーヴォにある『宮沢賢治記念館』である。
 宮沢賢治を幼いコロから愛してやまないある意味イヤな子どもだった僕は、勿論春に来ても秋に来ても冬に来ても(しかし冬は雪深いため滅多に行けるものではない)大好きな場所なのだが、なんとなくいつもブラリと立ち寄るのは夏である。
 屋内にある小さなドームの中に浮かび上がる賢治先生の愛した星たちが、夏にピッタリと合っているからかも知れない。
 嗚呼、僕も出来ることなら銀河鉄道に乗ったり、チェロの中でヘロヘロになってみたり、狐の幻灯会に呼ばれてみたり、象と一緒にグララアガアとオッベルに襲いかかってみたいもんだ・・・。
 (『宮沢賢治記念館』は敷地内の細かい細工などがとにかくよく出来ていて、宮沢賢治の世界が好きな人なら思わず『う〜ん』と唸ってしまう素敵な場所だ。あちこちにいるフクロウに注目!近くの土産物屋に売っている『注文の多い料理店』の看板『西洋料理店・山猫軒』は、七海家全員のお気に入りで、僕が一人暮らしをする前は僕の部屋の扉にかけられていたのだが、この前実家に帰ったら玄関に堂々と飾られていた・・・。)
 風と、緑と、水と、星と。
 そして素敵な幽霊画・・・。
 夏の暑さは嫌いだが、夏には夏の幸せがある。

(宝物殿に入るには入館料が別に必要なのだが、僕があまりに長時間幽霊画に魅入られていたため、外で待っていたハハが心配になってわざわざ入館料を払い、迎えに来たことがありました。しかしここで声を大にして言いたいのは、僕は幽霊画よりも妖怪画のほうが好きだ!という事です!!どこかで妖怪画展などやっていたら、是非とも七海にご一報を!!)

A Theatrical Campany yakoudou