其の四拾八『試練の地!僕たちのバトルロワイアル』の巻



 夏が来〜れば思い出すぅ〜遙かな佐渡ぉ〜遠い空ぁ〜。
 小学生の頃、僕は佐渡へ旅立った。
 小学生たちが集い佐渡でキャンプを行う『少年の船』的な催しに参加したのである。僕としては家でシャクシャクとかき氷を食っていた方が幸せだったのだが、僕の友達が参加するということで半ば引きずられるように佐渡へと渡ることとなったのだ。
 ざんぶと波越え、船は行く。
 船上では既に船の揺れに耐えられなくなった児童が、船室で毛布を被りぐんなりとしている。・・・もうこの時点で駄目だ。油で汚れた茶色い海水が、沖に向かうにしたがって次第に真っ青に変わっていくのを眺めながら、僕はなんだか不安な気持ちを拭うことが出来なかった・・・。
 「チッ。なにかが起きそうな予感がするぜ・・・!」(カモメ「ニャー!」)
 そしてその予感はドカンと的中することとなる。
 佐渡に着いた我々を待っていたのは、『佐渡おけさ』であった。
 いきなり畳敷きの広い部屋に放り込まれた我々に、「ハァ〜さどぉエ〜〜」でお馴染みあの音楽が大音量で襲いかかる!
 いや、『佐渡おけさ』はいいのだ。他の地域の文化に触れるのは大切だと思う。
 問題は指導員の熱心さであった・・・。
 「ハイ!そこっ、もっと手を伸ばす!!」
 彼女はどこまでも本気だった・・・。
 「ハイそこ、ダラダラやらないっ!!」
 何故僕たちは佐渡に着きざまこんなにも必死に踊らなければならないというのか。というかむしろ僕たち余所者に『佐渡おけさ』を完璧にマスターさせてどうしようというんだ、指導員のオバサンよ!?到着1時間で早くも僕のココロの中に「嗚呼、お家に帰ってパピコ食べたい・・・」という想いが浮かび上がる・・・。
 指導終了後に一人一人手渡された『佐渡おけさ』の真っ赤なペラペラレコードを、僕は虚しい気持ちで見つめた。
 「家に帰ってもこれをかけて踊って、お父さんやお母さんに見せてやってね〜!」
 やるかっっつうの!!!(爆)
 そのレコードは現在でも我が家のレコードプレイヤーの棚にひっそりと保管されている・・・。
 いやしかし、ここで凹んでいる場合ない!
 後にはお待ちかねのキャンプが待っているのだ!みんなでカレーを作って食ったり、火を囲んで歌ったり、テントの中でグーグー寝たりするのだ!!
 キャンプだホイ、なのだ!!
 ・・・・しかし、そこでも悲劇は起こった。
 我々が眠るテントの中には、何かに誘われるように沢山のカマドウマが姿を現したのだ。いっそ何かしてくれればいいものを、進入してきたっきり何もせずにただそこにデンと居座るカマドウマ。怖いぞカマドウマ!どこまでも無表情だぞカマドウマ!ガードマンのつもりなのかカマドウマ!!
 「うぎゃあああああああああああ!!!カ、カ、カマドウマあああああああ〜!!」
 僕の顔の横にカマドウマ。
 嗚呼、カマドウマ。
 一瞬僕の頭の中でお父さんやお母さんと楽しく食後のメロンを食う姿が浮かんで消える・・・。いっけね、あまりのショックに幻覚見ちまった・・・。
 佐渡島、さてはカマドウマ天国か!?
 他のテントでもあちこちから悲鳴があがっている。カマドウマだけではない。他にも様々な虫たちが開けっぱなしのテントの中に大集合してくるのだ。
 それでもどうにか眠りについた我々を深夜叩き起こしたのは何を隠そう、リーダーと呼ばれる我々児童を束ねる役目の大人たちであった。
 彼らはすっかりイイ夢を見ていた僕らをテントの外に引きずり出し、シュウシュウと殺虫剤をテントの中に撒きはじめたのだ。
 ・・・っていうかなんでカマドウマが出て大騒ぎしてる時に撒いてくんなかったの?
 「5分経ったら戻って寝ていいぞ〜」
 ・・・・僕らは佐渡の大草原の中に5分間立ち続けた。
 そんなことが3日間続いた。次第に仲間たちから生気が失われ、サバイバーな顔になっていくのが解る。気分は『バトルロワイアル』である。あの時の僕らなら、間違いなく北朝鮮の誘拐犯をカレーをかき混ぜていたおたまでコテンパに出来たことだろう。
 いよいよ帰ることが出来る日。
 新潟からのバスの中で、我々は狂ったように『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を熱唱した。
 「我々は帰るのだ!地球へ!あの青い惑星へ!!(っていうかむしろ福島県へ)」
 そしてそれからまるで死んだかのようにグウグウと眠った。カマドウマに、蚊に、殺虫剤に、ろくろく眠ることの出来なかった我々の、まさに3日ぶりの安息だった。
 眠りは到着地である我々の地元まで続き、寝惚けていてなかなかバスから降りてこない僕を、迎えに来ていた父とハハはしこたま心配したと言う。
 「ウチの子、佐渡に置いてこられたんじゃないかしら・・・」
 もしもそんなことがあったら、僕は海を泳いででも佐渡を脱出する。
 僕らにとって佐渡はあまりにも過酷な地として脳に焼き付いてしまった。
 今度佐渡に行く時にはちゃんと観光スポットを見たいものだ。
 しかし僕には決めていることがある。
 『佐渡おけさ』はもう、踊らない・・・。

(ウチには『まんが日本昔話』のレコードがしこたまあります。50枚以上あるんちゃうかな?勿論、幼き日の僕のコレクションです。僕は眠る前に必ずこのレコードを聞いて眠っていました。だから今でも『まんが日本昔話』を再現することが出来ます。幼き頃より市原悦子の語り口調を真似していたら・・・こんな大人に育ってしまいました。(爆))

A Theatrical Campany yakoudou