其の六拾『田舎へ帰ろう〜方言・七海語語録〜』の巻



 ケケケケケケケケケケ・・・!!!
 コンビニの中で虫が鳴いている。
 虫は確かにこのコンビニの中にいるのだが、その姿を見つけることは出来ない。
 おそらくは、お粥だのカレーだのリゾットだのの並んでいるその棚の奥深くに潜んでいるのだろう。その証拠にその棚の前を通ると、もの凄いボリュームで虫の鳴き声が聞こえているのだ。
 ケケケケケケケケケ・・・!!!ケケケケケケケ・・・!!!
 しかしそれが虫であるかどうかは、やっぱり解らないのである。
 こんばんわ。
 しゃくれた犬を塀に描く仕事をしています、七海です。(どんな仕事だソレ!)
 今日は約500頭のしゃくれた犬を描きました。
 明日は約200頭のしゃくれたパンダを描く予定です。
 僕は宮城県生まれなので、時折関東の人に解らない言葉を話すらしい。

 @「おじゃんこしらい」=「座りなさい」
 これは方言なのか、それとも七海家語なのか定かではない。
 しかし僕は小さい頃からハハに「おじゃんこしなさい」と云われて育ってきた。どうやら大人になってからはとんと聞かないので、これは子どもに対する言葉であると思われる。
 僕は教育実習に行った際に、この言葉をもって子どもたちを座らせようとしたが、見事失敗に終わったのであった。あの時の子どもたちの「しぇんしぇい、なにゆってるの〜?」というまんまるい瞳を、僕は生涯忘れはしないだろう。

 A「めぐせえ」=「可愛くない」
 「めごい」「めんこい」等の言葉が「可愛い」という意味を持つことは、わりと東北以外の地域の方でも御存知であるかと思う。では、反対語である「可愛くない」は方言でなんと云うのか。ズバリ「めぐせえ」である。
 「めぐせえ」その言葉を口に出して云ってみればお分かりであろう。明らかによろしくない意味を持つ言葉ヅラであることが感じられる。ではイマドキの女子高生風にアレンジしてみよう。
 女子高生A「ねえねえ、このパンダめごくな〜い?(←可愛くな〜い?)」
 女子高生B「え〜?どっちかっていうと、めぐせくね〜?(可愛くなくな〜い?)」
 是非とも池袋近郊で流行らせてみたいものだ。

 B「おばんです」=「こんばんわ」
 この方言は一般的に有名な部類であると思われるが、宮城県で「OH!バンデス」という情報番組をやっていることは宮城県民しか知るまいて。
 しかもその番組に出る誰もが当然のように「おばんで〜す」と云いながら登場する。番組を仕切る佐藤宗之氏は勿論のこと、仙台駅前から生レポートをするキャスター、そして番組に登場する地元の子どもたちもすべからく「おばんで〜す」と口にするのだ。
 何故なら番組名が「OH!バンデス」だから!!(SEババ〜ン!)
 月〜金の夕方から(多分)やっているので、宮城県へ行かれた際には是非ともご覧あれ。
 (註:実際に「おばんです」と口にしていたのは我が祖父・祖母時代ぐらいまでです。現在70代以下ぐらいの人々は普通に「こんばんわ」と云うので、ハリキッて地元の人に「おばんで〜す!」などと話しかけると呆然とされることがあります。)
 
C「こ〜の、ほうれん草!」=「この、バカタレが!」
 七海家のハハ語録から一品ご紹介しよう。(方言ではありません。)
 元々は「ば〜か、あ〜ほ、ちんどん屋〜。すっとこどっこい、ほうれん草〜」という囃し歌から来ているらしい。(しかしこの囃し歌の歌詞からしてハハのオリジナルなのかも知れない。特に「ほうれん草」のあたり。)
 僕が幼い頃、ハハは僕が悪いことをすると「こ〜の、ほうれん草!!」と真顔で叱ったものだった。しかし何故「ほうれん草」が「バカタレ」に通じるのか。栄養満点「ほうれん草」がどんな悪さをしたというのか・・・!それは叱られていた僕にも解らない。しかし、腕にイカリマークのタトゥ〜をしたあのほうれん草大好き男には絶対に漏らしてはいけない言葉であることは間違いない。
 こうして幼い頃から叱られていたからだろうか。
 僕はほうれん草が嫌いだ。(ゴマ和えならやっと食べられる程度である)

 D「くわい」=「食べなさい」
 お正月に出てくるアイツ(クワイ)のことではない。
 「さあおたべ」を「くわい」というのだ。
 ジイ様が生きていた頃には、遊びに行くと「ちょいちょい」とハハたちのいない部屋に呼ばれたものだった。テーブルの上には、でっかいイチゴ1パック分の乗ったお皿とフォーク。ジイ様が満面の笑みで「明美、イチゴくわい」と云う。
 イチゴを喰えば僕もニコニコ。
 するとジイ様はさらにニコニコと笑って「明美、うまいか?」と聞くのだ。
 うんうんと口をいっぱいにして頷けば、
 「もっとくわい」と云う。
 僕にとって「くわい」はジイ様の思い出の言葉だ。

 E「うろからする」=「うろうろする」
 今、夜光堂で密かに流行らせようと思っているのがこの「うろからする」である。
 これは方言なのか、それとも例の如く七海ハハのオリジナル語なのかよく解らない。しかし僕のハハ以外にこの言葉を使っている人を見たことがないので、やっぱりハハの作った言葉なのかも知れない。
 デパートなどに行った時に、
 「ほら、あんまりうろからしないよ〜」
 と、声を掛けられれば、それは「あまりうろうろしてはいけない」と云う意味である。
 芝居で舞台を右往左往するシーンがあれば、僕は
 「はい、じゃあ次、舞台をうろからしてくれ」
 という指示を飛ばすため、みんなも面白がって「うろから」という言葉を使うようになってくれた。よしよし、夜光堂「うろから」化計画・・・順調に進行中だ。

 僕らの世代はもう既に標準語で育った年代だ。
 だから僕の知っている方言やら七海語は、僕のハハやジイ様やバア様たちが使っていたものを耳で覚えているものだ。懐かしい思い出の染み出す言葉だ。
 「くわい」と云えば瞼の裏でジイ様がニコリと笑い、「おばんです」と云えばバア様がスッとお辞儀をする姿が思い浮かばれる。
 そして「ほうれん草」の歌を歌えば、幼い頃の僕と若き日のハハが蘇ってくるのである。
 僕もきっと子どもにこう言うだろう。
 「ほら、ちゃんとおじゃんこしらい」
 そうしたらきっと、僕の子どももまた、その言葉で僕のことを思い出してくれるに違いない。
 ふと田舎に帰りたくなった。


(龍騎のDVDもいよいよ残すところあと2巻となった。ウオオオオオオオオ・・・!!もう吠えるしかない。ウオオオオオオオオ・・・!!)

A Theatrical Campany yakoudou