其之七拾煮『手帳の封印を解け』の巻



 大学時代に使っていた手帳が出てきた。
 あの頃の僕は偉かった。
 スケジュール帳にはこれでもかってほどのレポート提出日がみっしりと書かれている。そしてその上からは、終了を思わせる真っ赤なバッテン印が・・・・。
 今思い返せばのほほんと過ごしていた印象の強い大学時代であるが、あの頃はあの頃でけっこ大変な思いをしていたのかも知れない。
 スマン、大学時代の僕よ!
 しかしなにぶんにも昔のことである。
 今見ると「?」とか「!」と思うような記述も少なくはない。

@11月19日
 『お休み。やったあ!お休みだあ!ボンバー!!』
 ボ、ボンバー・・・・・。(絶句)
 叫ぶほどに、ボンバーと叫ぶほどに当時の僕はお休みに飢えていたのだろうか。仕事人となった今となっては、「大学なんかいつでも休めるじゃネエか、甘えんじゃネエ、このボンクラウサギがぁ!!」と一喝してやりたい気持ちで一杯である。
 しかし『お休み』の三文字が嬉しいのは今も昔も変わらない。お休みに対してにじみ出てくる嬉しさを余すところなく表現した一文と云えよう。

A6月27日
 『ペープサート。やぎ。1匹。さいばしで。』
 暗号ではない。
 かといって殺人現場に残されていたダイイングメッセージでもない。山羊が一匹さいばしにてご主人様を殺したのではないのだ。(というか、山羊だったらツノを使え、ツノを!)
 これは僕が所属していた幼児教育学科で出された課題であると思われる。
 そうそうそう、山羊を一匹、さいばしでさばけ、と・・・・アホー!!!(←ノリツッコミでお読み下さい)さばけるか〜〜〜!!(そういう問題でもないような気がするが)
 ペープサートとは、棒の先端部分に絵を張り付けたモノである。人形劇の紙版とでも云おうか。お話に合わせて棒を操り、先端に張りついた絵を動かす見せ物である。
 どうやら「やぎ」というのは思い出す限り『三匹のやぎのガラガラドン』なる物語の登場人物・・・いや、登場山羊物であろう。
 つまりこの文章の内容を詳しく述べれば、『ペープサートでやぎを一匹作ってくること!棒部分にはさいばしを使ってネ!ベベン!』ということなのであろう。
 しかし僕は考えてしまう。
 もしかしたら僕が覚えていないだけで、本当はさいばし一本で山羊をさばく授業があったのだとしたら・・・・。
 さいばしを握りしめてにじり寄る我々・・・!そしてメエエと鳴く山羊!!
 それはさぞかし、かの『バトルロワイアル』をも凌ぐ地獄絵図となったことだろう。

B4月15日
 『SMAP×SMAP。フジ10:30〜。』
 1996年の手帳から。
 その日の一言メモを見ると『SMASMAおもしろいッ!I LOVE(SMAP)を犠牲にしたことはある!!』との記述がある。
 そうか・・・・、この日が記念すべきSMASMAの第一回目の放映日だったのか。
 小さなテレビに囓りついて中居くんの姿を追っていたあの頃から、もう7年近く経つ。
 未だにSMASMAを見て「クハァ」と云っている僕にとっては、なんとも感慨深い一文ではないか。
 その間に森くんが脱退してボロボロ泣いている中居くんと一緒にアガアガ泣いたり、お休みしたゴロちゃんの代わりに厨房に立つ姿を応援したり・・・・と、思えばいろんな事があった。
 僕の幸運は、SMAPと同じ時代を生きることが出来たことだ。
 これから先も、1996年のあの時と同じ気持ちでSMASMAを心待ちにしていられたら、それはとても幸せなことだと思う。

C10月28日
 『シャンゼリオン最終回!』
 我が愛する『仮面ライダー龍騎』では凶悪ライダーでお馴染み萩野崇さんの、特撮デビュー番組がまさにこの『シャンゼリオン』である。
 「地球を守るぜ!」みたいな主人公が王道だった特撮界に「え〜?っつうか面倒臭いから、今日は戦わな〜い」というスチャラカ主人公を送り込んだ永遠の迷作は、当時からかなりスチャラカだった僕のココロをガッチリキャッチしていた・・・・!!
 幼児教育科で「子ども番組を分析しなさい」という課題に対して、『子どもには理解出来ない特撮番組』と銘打ってレポートを作成したこともあるほど、この番組には楽しませてもらった。
 そして2002年。
 スチャラカ主人公は、戦いが大好きな凶悪ライダーとして再び僕の前へ現れた。ふとした偶然で目にした暁くん(←シャンゼの役名)。おそらく彼が出ていなかったら、僕が『龍騎』を見ることはなかっただろう。思えば不思議な話である。これを僕はココロ密かに「ハギーがとりもつ縁」と呼んでいる。

 段ボールの底から出てきた茶色い表紙の古い手帳。
 ふとページを捲ってみれば、今と変わらない特徴のある字でその時に感じた事や遭遇した出来事がみっしりと書き込まれている。
 携帯電話が普及してから手帳を持つことをやめてしまった僕だが、たまにはこうして自らの字で思い出を書き残すことも悪くないと、思う。
 いつかまた開く日を楽しみに、僕はその手帳をまた段ボールの中にしまい込んだ。
 3年先か、10年先か、それとも死ぬ間際なのかそれはわからないが、またいつかコイツが僕に大学時代を思い出させてくれるようにささやかな期待を込めて・・・・。

 最後に言っておくが、僕は手帳屋さんの回し者では、ありません。


(つ、ついに去年の暮れに、PHSからケータイに乗り換えてしまった〜!!料金形態が掴めない状況なので、ビクビクしながら使っているぜ!いやあ・・・凄ェな、ケータイ・・・・)