其之七拾酸『怪怪怪@』の巻 |
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怪@新幹線に響く赤子の声の怪。 第一の怪は、新幹線という走る密室の中で起きた。 正月の帰省客によって、新幹線の指定席は満席となっていた。勿論、その中には子どもを連れた家族連れの姿も多い。 長旅であるので、私は三津田信三の『百蛇堂』を開き、首の後ろ側がブツブツと粟立つような世界に浸ることとする。『百蛇堂』は、京都にある旧家『百巳家』にまつわる不思議な葬礼儀式の話に始まる。百巳家において人が死ぬと、多くの呪いめいた儀式をこなさねばならない。その家の血を引き、葬礼儀式に二度関わった者が書いた原稿がここにある。筆者である三津田信三始め、それに関わった人々の周囲で怪奇めいた現象が起こり始める。その中心にあるものを探るべく、三津田は『百巳家』のある因縁の地へと足を運ぶのだが・・・・。 この物語の元ともなっている原稿となっているのが『蛇棺葬』である。是非とも合わせて読むべし!『百蛇堂』だけを一見した場合、「○○に関わった者に怪事が起きる」という展開から、ジャパネスクホラーの先駆『リング』や『呪怨』を思いおこさせるが、しかし、僕個人としてはその二作品よりも『百蛇堂』のほうが「怖い」と断言しよう。それというのも、この物語の裏には、民俗学的な儀式やまじないやわらべうたや・・・・子どもの頃に誰しも経験したような事柄が絡んでくるからのだ。例えば「誰かさんの後ろに蛇がいる」という遊びを小学校の頃にした者はいないだろうか。なにが祀られているかもわからないお堂があったのを覚えている者はいないだろうか。昔の日本が持っていたねっとりとした逃げ場所のない肌の粟立つような雰囲気が、僕にこの物語をおもしろいと思わせるのだ。 物語も半ばにさしかかった時であったろうか。 ふいに、後ろで赤子が泣き始めた。 うぎゃあうぎゃあうぎゃあうぎゃあうぎゃあうぎゃあ・・・・。 ビクリ、と肩が震える。 思いの外物語に没頭していたようだ。 振り返ればお父さんらしき人の腕の中で、赤ちゃんが真っ赤な顔をして泣いている。 なるほど、赤子にこの長旅は辛かろう。 そう思って私は再び本に目を落とした。 うみゃあうみゃあうみゃあうみゃあうみゃあうみゃあ・・・・。 今度は前方遥か遠くから赤子の泣き声が聞こえた。 うぎゃ、うぎゃ、うぎゃ、うぎゃ、うぎゃ!! 今度は二列ほど前の赤子が・・・・。 そうこしているうちに車両のあちこちから赤子の泣き声が響き始めた。 まるで夏の世の虫のように、あっちで「うぎゃうぎゃ」こっちで「んな〜」。気付けば今まで静かだった我が8号車は、一気に24時間託児所『まるっとおまかせ』無認可保育所と化しているではないか。 何故だ!?何故一人泣くと全員泣くんだ赤子たち・・・!? 「ん?泣いてんな〜。じゃあオイラも泣いていいのかにゃ〜。退屈だっし〜」とでも思っているのか赤子!それとも遠吠え中の犬のように、泣き声で会話しているのか赤子!朝まで生討論なのか赤子よ!? 「おしめはやっぱしむぃにぃでしゅ!」 「いいや、ぱんぱぁしゅでしゅ!」 ・・・どっちでもいいよ。 どっちでもいいんだよそんなことぁ!おむつをとうに卒業し、おまけに乳児時代は布おむつ愛用者であった僕には「むぅにぃ」も「ぱんぱぁしゅ」も関係ないんだよ!!静かに本を読ませてくれたまえよ、君たちィ! 不思議なことに赤子たちは八分ほどウギャーと泣くとピタっと泣きやみ、再び誰か一人が泣き出すと全員がそれに呼応するというパターンを延々繰り返した。 僕はと云えば、再び本の世界に浸ることも出来ず、ただ虚しくお茶を啜るのであった。 JR東日本様。 お願いですから、新幹線ラッシュ時期には『子ども連れ専用車両』を設けて下さい。 次週『怪怪怪A』に続く。 (初売りに行った際、婦人洋服売場で殺し屋の目をした子どもを見つけた。その視線の先には、自分の服を選ぶ母親の姿が・・・。彼の将来が心配です。) |