其之八拾煮『家政婦はいわなのたたりを見届けたか?』の巻



 小さい頃、僕は『まんが日本昔ばなし』に傾倒していた・・・。
 眠る時にはいつも『まんが日本昔ばなし』のレコードを流し、市原悦子の声を脳髄に染み込ませながら眠りについていたのだ。
 だからと云って子どもの頃の夢が「家政婦になって金持ちの家の秘密を覗き見ること」であったわけでは決して、ない。しかし悦子ときたら、自分の働き場所の家庭を引っかき回し、自らの稼ぎ口を再起不能にたたき込んでいるが、果たして本当に稼ぐ気があるのだろうか。僕が思うに、あれはライフワークだ。本当は悦子にとって金などどうでもいいのだ。なんせ住んでいるところは、大沢家政婦紹介所である。きっと家賃も格安だ。悦子と云えば家政婦の仕事そっちのけで、上流家庭の裏の顔を覗き見、荒し、没落させることだ。 しかし何故・・・?
 なんの目的で・・・?
 ただの趣味か?没落が好きなのか!?
 は、そうか!悦子が本当に雇われているのは、大沢家政婦紹介所ではないのだ!きっとその家と敵対する所から依頼を受けているに違いない。○○代議士の家に悦子が働いていると云ったら、それを操っているのは○○代議士の敵対議員××代議士。茶道の家元○○流宗家に悦子が働いているとしたら、それを送り込んだのは新流派××流の家元なのである・・・。
 凄い、凄いぞ悦子!
 きっとそのうち日本政府の要請で、北朝鮮に送り込まれる日が来るに違いない。
 「こんにちわァ〜。大沢家政婦紹介所から参りましたァ〜。おお、怖い、怖い。」
 話が逸れた。
 『まんが日本昔ばなし』の話であった。
 日本昔ばなしは奥が深い。
 「桃太郎」「金太郎」「かちかち山」などの誰もが頷くメジャーどころから、「ふるやのもり」「おおとしのひ」「いわなのたたり」などの、今となってはどこがどんな漢字なのかすらも解らない難解どころまで、様々な物語を奏でてくれたものだった。
 ものによっては、当時幼稚園児だった僕ですら「嗚呼・・・嗚呼ゥ」と思わず震えるほどのディープな内容のものもあり、夜に思い出して眠れなくなることもあった。
 日本昔ばなしは、僕に人生の、主に裏面をたっぷりと教えてくれたのだった。

 その中でも、特に幼稚園児七海が震えた「いわなのたたり」(うろ覚えの部分もありますけど、想像で補うので大目に見てねヴァージョン)をおおくりしたいと思います・・・。

 『いわなのたたり』
 むか〜し、むかしのことだったァ。
 川に泳ぐいわなを穫る為に、とある男が毒を流したハァ。
 苦しみ藻掻くいわなたち・・・。
 やがて川には、無数のいわなの死体がぷかありぷかりと浮いたのだった。
 男はそれを袋に詰め、そのまま里に降りようとしたが、すぐに日はとっぷりと暮れ、仕方なしに火を焚いて山の中で野宿をすることにした。
 ぱちぱちと薪のはぜる音がする。
 どれくらい経った頃だろう。
 そこにのそりと、一人の僧侶が現れた。
 笠を目深に被った僧は、一緒に火にあたらせて欲しいと名乗り出る。
 僧が「その代わり・・・」と差し出した団子を口にする男・・・。
 いつしか僧の顔は、男が殺したいわなの顔に・・・・・!!
 男の運命やいかに!?(SEババ〜ン)
                                   【続く】

 「続くんかあああああああああぁああああい!!!」
 と、ツッコンで下さった方、ありがとうで御座る。
 いや、確かにこの話、ちゃんと終わっているハズなのだ。だが、幼稚園児が堪能するにはあまりにもショッキングなこの話・・・僕は、この後男がどうなったのか覚えていないのだ。ヲヲヲ・・・男は一体どうなってしまったのだ。
 僕がぼんやり思い出すのは、その僧の差し出した団子が毒入りだったと云うことだ。
 いや、しかし夜七時の番組だ。
 まさか男が大量虐殺したいわなの怨念にそのまま殺されてしまった、ということはあるまいて・・・。
 いやいやしかし、この『まんが日本昔ばなし』というヤツはなにげに怖ろしいことをヒョイヒョイとやってのける番組でもあるのだ。

 例:一晩死体と共に過ごす。
 例:獣にあっさり両親を殺される。
 例:ヤマンバの子どものベビーシッターを引き受ける。(本当にあるんだ、この話)

 有り得る・・・。
 僕には見えてきた。
 男がいわなからの毒だんごを喰って、口からブクブクと赤い泡を吐く様が・・・・!
 ヲヲヲ〜!
 ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ〜ゥ!!
 昔話怖るべし!!
 そんな『まんが日本昔ばなし』により幼少期のアイデンティティを確立したことが、果たして僕にとって良かったのか悪かったのか・・・。
 それは、家政婦だけが知っている。


(4月に松田くんが出演するドラマの題名はズバリ『ヴァンパイアホスト〜夜型愛人専門店〜』である。ど、どんなだ。どんななななんだ・・・。←動揺)