其之八拾惨『戦え才蔵!〜ハードボイルド篇〜』の巻



 『趣味の小部屋』と云いつつも、ちっとも趣味のことを話していないことに気が付いた。
 ・・・・・遅すぎた・・・・・。
 夜空の星を見上げながら、ふと思う。
 「そうだ、趣味の話しよう」
 てーらら、てーらら、てーらーららー、てーららてーららてーららら、らァ〜・・・・「JR東海」。
 東海関係あらへん!!
 そうか、こうして毎回「趣味」とはかけ離れた「七海のちょっとこんな話ありました・夏」みたいな文章になっているのか・・・!
 よかれと思ってボケたのに。
 よかれと思ってバイクで隣の塀にツッコんだのに!!
 しかし隣の家に住んでいるお婆ちゃんには、ちょっと美味しいお饅頭を握らせておいたので、安心だ。お爺ちゃんが横っとびに飛んで、血を吐いていたのがちょっと気になるが、そんなことは僕のバイクとは関係ないのでさらに安心だ。
 そう、趣味の話であった。
 しかし、現在の僕の趣味と云えば、命を懸けて『龍騎』の世界を愛しているぐらいで、「ビルに小さな不発弾を仕掛けに行く」とか「囚われの何某かをしがらみや人間模様関係なしに勝手に救出に行く」などの、ちょっぴりドキドキ、時々ホロリ、みたいな趣味は持ち合わせていない。まことに残念だ。
 そこで、かなり勝手に自らの趣味をプロデュースしてみたいと思う。

 『囚われの何某かをしがらみや人間模様関係なしに勝手に救出に行く』をプロデュース!(←内P風に。しかし月曜日の深夜に内Pを見ると、笑いすぎてテンションが上がり、その後しばらく眠れなくなる。だからもういっそ月曜日は寝ない!そう決めたんだ・・・。)

 深夜。
 廃屋となって久しいこのビルに、一人の女が捕らわれていた。
 彼女の名は夏井岬(ナツイミサキ)。
 さすらいのヒットマン権田原才蔵(ゴンダワラサイゾウ)といい仲になってしまった為に、権田原に敵対する組織に捕らわれてしまった悲しい女だ・・・。
 そう、出会いは雨の銀座。
 夜の仕事をしている岬は、男たちを惑わす白の着物を纏い、いつものように店に向かって歩いていた。
 「ニィ〜」。
 ふと、耳に入った子猫の声に、いつもは見向きもしない路地裏に目をやる岬。
 「あ・・・」
 形の良い唇を歪ませて、岬は思わず息をのんだ。
 男だ。
 路地裏の細い隙間に身を隠すように、男が一人蹲っていた。片方の手で腹を押さえ、自嘲気味に微笑みながら雨粒舞い散る空を見上げている。その膝元には、先ほど岬が聞いた鳴き声の主、小さな茶色い野良猫がまるで男をなぐさめるように寄り添っている。
 一瞬の出来事だった。
 岬は持っていた真っ赤な傘を地面に落とし、純白の着物が汚れることも気にせず、男のもとへと駆け寄っていた。
 「だいじょうぶですか?」
 男が岬のほうに顔を向ける。
 (まあ、なんて淋しそうな瞳かしら・・・)
 ふと目をやると、男の押さえている腹の辺りから赤いものが染み出しているのがわかる。
 「怪我してるじゃありませんか!今、救急車を・・・!」
 電話を取り出そうとする岬の手を、そっと男が押さえる。
 「え?」
 男は岬に優しく微笑むと、小さな子どもをなだめるように首を横に振ってみせた。
 その表情と、傷の具合に、岬はこの男がただならぬ状況の中で生きているのだということを悟った。
 (俺なら大丈夫だから・・・・、もう行きな。)
 男の目がそう云う。
 しかし、今度は岬が首を横に振る番だった。
 「あたしのお店が近くだから、せめてそこに。だいじょうぶ、まだ誰も来ていないわ。」
 岬はささやくように云うと、男を立ち上がらせた。
 そして艶やかに笑ってこう続ける。
 「君も来る?」
 岬の足下で、子猫が嬉しそうにニィ〜と鳴いた・・・。

 (そう、あの時の君の微笑みに惹かれたんだって、彼、云ってた・・・)
 囚われの岬の目にじんわりと涙が浮かんだ。
 岬は、彼・権田腹才蔵が名うてのヒットマンであり、闇の仕事に身を置いていることを知りつつも、どこか淋しそうな才蔵を愛した。また才蔵も、どこか妖しげで、それでいて純真な心を持つ岬に惹かれていた。
 ふたりは束の間の幸せを分かち合った。
 しかし、才蔵にボスを殺された闇組織は、才蔵が初めて手に入れた弱みを放ってはおかなかったのだ。
 そんなこんなで、拉致監禁。
 岬はこぼれそうになる涙を必死で堪えながら、才蔵のことを想っていた。
 (いいの、いいのよ。あたしのことなんか助けにこなくって。だってこれは罠だもの。あなた、ここに来たら死んでしまうわ。そんなの、見たくない・・・。)
 そう思う一方で、岬の才蔵に逢いたいと思う心もまた、強くなっていくのだった。
 (でも、もし、そうね。あなたがあたしを助けてきてくれるなら・・・。それであなたが死ぬのなら・・・あたし、あなたと一緒に逝くわ。いいでしょ?ねえ、才蔵さん・・・。)
 岬の目から涙が一粒、こぼれ落ちた。

 その時だった。
 ドアがバンと開け放たれた。
 (さ、才蔵さん!?)
 思わず目を輝かせる岬。
 闇を抜けて岬に駆け寄ったのは、七海であった。
 七海は岬の猿ぐつわを外し、縄を解いた。
 「さ、お逃げなさい!」
 「は、はい・・・。っていうかあなたは誰ですか?才蔵さんは・・・?」
 「私は七海。才蔵とかいう人のことは知りません。っていうかアナタのことも知りません。」
 「あの、では何故・・・?」
 「趣味です。さ、早くお逃げなさい!」
 「いえ、あの、あたしは他の方に助けてもらいた・・・・」
 「早くゥ〜!!早く逃げなスァーイ!逃げな、ス、ア〜イ!」
 「ひ、ヒイイ!」
 逃げ出す岬。
 良かった。
 今日も一人、どこの誰とも知らない人を、勝手に助け出すことに成功した。
 ていうか、いるもんだなァ。廃屋に監禁されている人って。
 七海は満足した。
 そして帰りに大戸屋に寄って「かあさん煮定食」を食べて帰りましたとさ。

 めでたしめでたし。

 【オマケ】
 その頃の権田原才蔵。
 まだ戦ってた。「ヤー!」
 あ、あと猫も。「ニャー!」

 どうだ、こんな趣味!?
 僕はイヤだな・・・。


(ハードボイルドは書いていて爆笑でした。いやァ楽しかった!)