| 其之八拾死『長さんへ/春キャベツの逆襲』の巻 |
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いかりやの長さんが亡くなった。
僕らの年代はまさに『全員集合』直撃世代。 長さんが一声「オイッス〜!!」と笑顔を見せれば、 「ヲ〜!!」と臆することなく叫ぶ年代だ。 『八時だヨ!全員集合』に集合するべく、八時前には必ずお風呂に入れられていた幼き日の僕は、頭にはバスタオル・パジャマにどんぶくという出で立ちで、「エンヤーコーラヤ、ドッコイセのコーラヤ」とTVの前で踊っていたものだった。 時に悪ガキどものお母ちゃん、時に刑務所の看守、時に探検隊の隊長、時に剣術道場の道場主として、真っ先に舞台に登場してきた長さん。どんな役柄でも必ず、手にツッコミ用の黄色いメガホンを持っていたのを覚えている。 年代の若い人は長さんがコントをやっていたことを知らないのだという。我々の世代はと云えば、『全員集合』時代にはなんの躊躇いもなくウヘヘと笑える子どもであり、役者時代には長さんの演技が解る大人になっている、とコメディアンとしての長さんも役者としての長さんも味わうことの出来た幸せな世代であったと云えよう。 ここのところ、長さんの死を悼む番組にて、『全員集合』時代の映像を久々に目にした。 舞台の真ん中で、期待に胸膨らます子どもたちの顔を見わましながら、 「オイッス〜!!」 と、笑顔の長さんを見て、思わず涙がこぼれた。 役者の長さんも好きだった。でも、僕にとっては黄色いメガホンを手にいたずらっ子のようなドリフメンバーを舞台狭しと追いかけていた長さんの姿が一番だ。小学生の頃、一番の楽しみだった『全員集合』。ありがとう、長さん。 2004年3月 七海
地球の話である。 僕は急激な地球の温度変化に耐えきれず、HP(生命力)・MP(精神力)共に大変朦朧とした状況で暮らしていた。ウウ、回る〜回るよ地球は回る〜ゥ。 外出することも叶わず、ヨボヨボとベッドに横たわる僕の元に友人が駆けつけた。 A村「しっかりしろゥ!!なんだ!?何が喰いたいんだ!?」 かつて熱にうなされる度に「ピザ屋のピザ」だの「ケンタッキーフライドチキン」だのと、「だからどうする気なんだ」的なコッテリリクエストを繰り出してきた僕だが、今回ばかりはひと味違った。 七海「・・・・キャベツ・・・・」 A村「は?なにそれ?最近発見された肉の新しい部位?」 七海「春、キャベツを・・・・」 A村「キャベツ?キャベツってトンカツとかの横に刻んで置いてあるあのキャベツ?」 七海「丸い」 A村「丸い?」 七海「キャベツ・・・・」 ヨボヨボとなりながら譫言のように「キャベツ」繰り返す僕。 そう、僕はキャベツが食べたかった。 パリパリモシモシとキャベツが食べたかったのだ。 何故かは解らぬ。 きっと、キャベツを食べられずに無念の中で死んだ戦国武将の霊がとり憑いていたのであろう。むう、怖るべし戦国武将。 数十分後、キャベツがやってきた。 新しく発見されたお肉の部位でもなく、ピザ屋さんの新しい商品名でもない、ただただ丸い黄緑色の野菜がゴロンと皿の上に乗っていた。 目の前に並べれらた醤油皿には、僕に大きな衝撃を与えたポン酢、チュウチュウ舐めても美味しいおでん味噌、ほんのりサッパリ柚子味噌がそれぞれ盛られている。 僕は丸い野菜に手を掛けると、一番外側の葉っぱをもぎった。 メシメシ・・・とキャベツが軋む音がする。 「ああ、これはきっと地球の叫びだ・・・・」と思ったかどうかは解らないが、僕は緑色のヌペっとした葉っぱをポン酢にくぐらすと、モシャモシャと食べはじめた。 僕を知っている人間ならば、天変地異の前触れと、思わず裸足で逃げ出す光景であろう。 「焼き肉屋にはサラダメニュー及び野菜焼きはいらぬ!」 と豪語し、サンチェに肉をくるんで喰っている人に念を送り続けているこの僕が。 「しゃぶしゃぶに野菜は必要なし!」 と、涙ながらに肉をしゃぶしゃぶするこの僕が。 キャベツをムキムキムキながら一枚ずつ確実に咀嚼しておる。 その目はどこか虚ろで、無表情であったが、僕はお口に広がるキャベツの甘みに大変満足していた。 春だ。 お口の中に春がやってきたのだ。 気がつくと、一面のキャベツ畑に僕は立っていたのだ。 キャベツ調達班・班長A村が呆然と見守る中、アッという間にキャベツ一玉完食。 もしも僕が立っている場所が崖っぷちだったなら、僕は間違いなくこう叫んでいただろう。 「春キャベツが好きだ〜〜〜〜!!!」 ザパ〜ン! ニャー!(ウミネコ) 崖の下の波打ち際から白い手がンギャー!(自殺の名所) キャベツ一玉をお腹の中に引きずり込んだ僕は、口元をグッと拭うと、人喰い原住民が食事を終えた時のようにニヤリと笑い、再びヨボヨボと布団の中に戻っていったのであった・・・・・・。 と、これは翌日幾ばくか体調が良くなってから、恐怖におののくA村に聞いた話である。 「ここ数日で世界のどこかが朽ちるであろう」と、予言者のような言葉を残してA村は去っていった。 完璧に復帰した後、僕は再度この緑の丸い生き物と向き合ってみた。 醤油皿にポン酢とおでん味噌、柚子味噌をスタンバイし、いざキャベツをもぐ。 メシメシメシ・・・・。 ポン酢にくぐらせ、いざお口の中に・・・・。 シャリ、シャリ、ポリ・・・・モハモハ、ゴクン。 三枚ばかり口に入れた所で土下座した。 「申し訳御座いませんでした!!僕、キャベツそんなに好きじゃありませんでした!!好きじゃありませんでしたハァ!!」 謝った。 目の前でゴロンとしたままのキャベツにも、それを汗水垂らして栽培した農家の人々にも。とにかく謝り倒した。 「僕、肉食でしたァ!!すいませんシタ!!」 謝った。 学歴を詐称した国会議員よりも謝ったよ、僕ァ。万引きをしてお店の人に「じゃあご主人呼ぶから」と云われた時の主婦よりも謝り倒した。 嗚呼、やはりアレは幻影、いや幻味だったのだ・・・・。 よかった。 これできっと世界のどこかが朽ちることはないであろう。 僕がホッと胸をなで下ろしたその時であった。 ぷるると電話が鳴る。 相手はハハであった。 「お父さんがね、大変だったのよぉ。胃が痛い、胃が痛いって云っちゃってサァ〜」。 世界は確かに朽ちなかった。 が、しかし、僕のオヤジ殿の胃は確実にやられていた。 侮りがたし春キャベツ!! 明日からはお漬け物で美味しくいただくこととしよう・・・・。 (久々にドラマ『Antique(アンティーク)』を見直し、椎名桔平演じるオーナーの愛らしさに床を平手で叩いた深夜二時。朝起きたら弱っていた。ヨボヨボ。) |