| 其之八拾碁『ザ・新年会〜題して「うなぎの館」〜』の巻 |
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「そういえば、新年会はどうだったの?」 などと、夜光堂の人々が聞くものだから、脳髄深くに封印していた怖るべき宴を思い出してしまった。 そう・・・あれは、2004年明けて間もなくのどんよりと曇った日であった。 こんちゃァと新年会会場である友人宅のドアを開ける。 そこで我々を待ち受けていたものは・・・・・!! 「ヲヲウ!!ウッ・・・・ウナギハァ!!」 皿からニーンとはみ出るという画期的なお姿で、うなぎ様は我々を出迎えて下さった。 勿論真ん中から腹を真っ二つに割られ、こんがり焼かれた蒲焼き姿で、である。 テーブルの上に所狭しと並べられた皿から、はみ出るうなぎウナギうなぎウサギうなぎ・・・・・。(間違いがあります。) さながら、テーブルの上は『もりっと食べよう!うなぎフェスタ2004・冬!』的な様相だ。 これほどのうなぎを一体どうするというのか・・・。 勿論食べるのだ。 誰が? 俺が!!(SEババ〜ン) 呆然とする僕に、この大量のうなぎを用意した者が声をかける。 「おう、七海、飯炊いてくれぃ!」 炊いてへんのかーーーーーーーーーーーーーーーーい!! 「この阿呆が!!うなぎだけ用意してどうするんじゃあ!飯を炊いておけ!飯ヲ!!」 一同大ブーイング。 大量のうなぎに度肝を抜かれつつも、目の前でほくほくと湯気を立てている蒲焼きを前に、思わず喰う気満々になっている愚かな我々なのであった。 そこでうなぎ人間が吠えた。 「バカヤロウ!オレは・・・・うなぎを焼いていたんだあああああああああああああ!!!」 「オマエが焼いたんかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいいい!!!」 見れば換気扇の下に七輪ありけり。 阿呆だ、ホンモンの阿呆だ・・・・。 「本当に食べられるのか?コイツは・・・」 にわかに騒然とする我々。 テーブルにのったうなぎをひっくり返したり、匂いを嗅いだりしてみる。 なんせ会社員(入社5年目営業マン)が焼いたうなぎだ。どうしてこの道ン十年とかのおやっさんが焼いたうなぎを買ってこなかったんだ・・・。どうして人を信じようとしないんだ、A井!!人格改造セミナーへ行け、A井!! 我々の大いなる不安を乗せて、ザ・新年会は幕を開けた。 怖る怖るうなぎに口をつける人々。 合い言葉は「死ぬときは死ね!」。 ンア〜。なんて、なんて侠気溢れておるんだ!! 箸を持つ手をブルブルと震わせながら、皆が口にうなぎを放り込んでいく。その様はさながら転校生の初日のような面持ちである。 僕も、箸でほぐしたうなぎの身をヨチヨチと口に運ぶ。 と、皆の目が丸く見開かれた。 「ン、ンマーイ!!」 おお、神は我々に奇跡を与えた!与えまくった!大バーゲンだ!! 外はこんがり、中はほくほく・・・柔らかい身に絡んだ甘いタレがなんとも云えない。 「スゲエ、スゲエよ、A井・・・・!!」 我々は感動した。 巻起こる「A井」コール!! 「A井!A井!A井!!・・・・・」 「祝福を」と、箸であちこちを摘まれるA井。凄いぞA井!! (しかし後にコレがうなぎ屋に勤める友人の仕込みであることが判明。かつてないほどにボコられる運命となる。「オレの感動を返せA井」事件より・・・。) ご飯も無事炊き上がり、お吸い物のチカラも相まって、テーブルの上に所狭しと並べられたうなぎは、見る見るうちに人々のお腹の中に吸い込まれていった。 「ふあ〜、喰った喰った」 元来うなぎの苦手な僕ではあるが、A井の最高傑作を前にそんなことも云っていられない。嫌いな皮を残し、綺麗に完食だ!! 素晴らしい・・・。 適度に満たされたお腹。美味しい食事。ゆったりとした時間・・・・。 こんなに幸せでいいのだろうか。 クリスマスに手をブルブル震わせながらケーキをまるっと一個、全員涙ながらに喰ったあの日々が嘘のようだ。 嗚呼、お母さん、幸せはこんなとこにありました。 明美はこれから一年、頑張ってやっていけそうです。 皆が、細い目をして微笑み合った瞬間であった。 A井の一言が、我々を凍り付かせることとなる・・・・。 「おう、うなぎ、まだまだあんぞ!」 え? いやいやいや、うなぎはもういいよ。 「んなこと云うなって!すっげえいっぱい焼いたんだから!」 いやいやいや、いらねえって。 「遠慮すんなって!!ほら、喰え!喰えって!!」 遠慮してねえって!!いらねえって!!え?っていうかなんでそんなゾロゾロ出てくんの、うなぎ? 「頑張って焼いたんだぞ〜!うまいだろ〜?!もっと喰えよ〜!」 いらねえっつってんだろうがああああっ!!! A井の素早い行動により、テーブルの上はアッという間に訪問時の状態に・・・・。 いや、もうホント、うなぎは・・・・うなぎだけは・・・・。 何故だ、A井。 何故、オマエは「モノの適量」がわからないヤツなんだ・・・。 僕らが確かにあの時感じていた「幸せ」は、やはり幻だった。儚き夢だったのだ。 息を大きく吸い込んで、叫ぶ。 「テメエは『腹八分目』っつうありがてえ言葉を知らんのかボケ〜ィ!!どんなにうまいもんでも食べ過ぎたらうまくネエんだよ!!アア!?」 A井は冷静だった。 「まあまあ、よく見たまえ、君たち。」 「(カチーン)」 「ほら、ね?色が違うだろ?タレの味だけじゃ飽きるかな〜と思ってさ、おかわりの分は素焼きにしてあるんだ。好きな調味料をつけて食べたまえ!!」 冷蔵庫から飛び出す、マヨネーズ・ポン酢・醤油・レモン・ネリウメ(食い合わせ)・七味唐辛子・・・・。 「て・・・」 「ん?どうした?好きな味で食べていいんだぞ?」 「てめえで喰えええええええええええええええええええええいいいいいいっっっ!!」 ドカバキグシャ。 A井の「ニャー!」という悲鳴を残し、我々はうなぎの館から抜け出した。 帰る際に横たわったA井の背中を踏んづけることも忘れない。 おお、怖るべしザ・新年会。危うくうなぎ漬けの一日を送るところであった。 翌日。 クール便で荷物が届いた。 中には一通の手紙が入っていた。 『温めて食べてね!☆A井』 ウッ。 ・・・・・・・・・・・・うなぎ。 呪いだ。 (おかあさんからデコポンが届きました) |