其之九拾酸『旅ゆけば・第三章〜牛を喰らえ大作戦〜』の巻



 山形県米沢市。
 そう、そこは牛の街。
 米沢牛だらけの牛の街。
 三歩進めば米沢牛。
 ヲヲ、牛の街が我を呼ぶ。
 「牛を喰らえ」と僕を呼ぶ〜ゥ。
 米沢は凄い。
 米沢牛を扱う食事処が多いのは勿論のこと、居酒屋のメニューにすら「米沢牛のすき焼き」だの「米沢牛のしゃぶしゃぶ」だの「米沢牛の焼き肉」だのクソありがた〜い名前が所狭しと並んでいる。
 石焼きビビンバに乗っているユッケも米沢牛。
 ちゅうか、どんだけ観光客に牛を消費させようとしとるんだ、この街〜ぁ(←まちゃ〜ぁとお読み下さい)。
 さすが米沢、米沢牛消費量は全国bPに違いあるまい。
 お土産物屋さんに隣接してるレストランのメニューには、牛を扱った料理しかありません。ONLY牛。牛のみ!
 僕は踊った。
 らったらったらったった。
 うえ〜い、牛だ〜牛だ〜ぁ。牛持ってこ〜い。呑むぜ、牛を。呑み喰いしちゃうぜ。
 街一色『米沢に来て牛喰わん奴はホウレンソウだ!』と云わんばかりのラインナップの中、肉と肉全て食べられない僕のハハは、食事処のガラスケースを前にポカンと口を開けるのであった。
 「大変よ〜ぉ。お母さん、食べるモノがないわ〜ぁ」
 おお、そうだろうとも。
 だってココは牛の街。誰もがお肉を食べる街。
 これを機に肉を喰えるようになればいいじゃないか、なあ、父さんや。
 「じゃあ蕎麦屋でも探すか」
 なっ!?

 んんぬあああああああああああああああああああああああああああ!!!(絶叫)

 確かに山形は蕎麦ドコロ。
 きっとこの米沢にもうまい蕎麦屋は存在するだろう。
 七海より緊急指令。七海より緊急指令。
 至急米沢市内の蕎麦屋の札をあくまでコッソリ『閉店』にひっくり返すのだ!!
 散れぃ、黒服たちよ!!
 ・・・・・・・・・・・。(しばし静寂)
 ちゅうかいねえっつうの!!黒服って誰だよ!!
 誰を操ってんだよ、わしゃぁ!!
 「あわわわわわわ・・・・わわわわわわウ〜ン・・・・・」
 宙を見上げて桃色の泡を吹く僕に、ハハは哀れむようにこう云うのであった。
 「お肉買ってあげるから。夜に食べましょうね」
 ウウ・・・・。
 最早抜け殻となった僕は、「夜にはお肉・・・夜にはお肉・・・」と呟きながら、ヨチヨチと街を歩くのであった。
 そしてその夜。
 僕のお皿の上には確かに米沢牛が乗っていた。
 シュウシュウと湯気たつ茶色の外壁、ナイフを入れると赤く柔らかい面が現れる。
 ヲヲ、これぞ至高の幸せ・・・ッ!!
 ポン酢を少しだけつけて戴く。
 甘い。
 そして柔らかい。
 米沢牛はまろやかで優しい甘みを持った最高のお肉であった。
 思わずジンと目を閉じた。
 視覚が遮断され、お肉の甘みとジューシーさと柔らかさのみが、僕の感覚の全てになる。
 お肉の神よ、今夜も素敵なお肉をどうもありがとう。
 そして牛、君はまさに最高の食材だ。
 自信を持って「モー」と鳴くが良い。
 しかし僕は考えた。
 あの街に住んでいたら、僕はきっと今の気持ちを忘れてしまうだろう。
 普段は食べることの出来ない場所に位置してこそ、いざ食した時に至高の幸せを得ることが出来るのではないだろうか。
 米沢牛よ、君は僕からほんの少し遠い場所に居ておくれ。
 手が届きそうで届かない。
 それこそが米沢生まれの君の価値であると、僕は信じているぞ・・・!!
 口の中のお肉は、ほんの少しの甘みを残して、ゆっくりと、消えた。


(他に米沢牛の半生干し肉みたいなものも購入したのだが、これもまた大変美味でありました。牛って素晴らしい。次回は誰もがジンと胸が熱くなる懐かしの場所へ御案内。旅の最終章をお楽しみに。追伸:今更『アークサラット』。中古屋で290円で購入したものですが、ツボにガツンとはまって楽しんでいます。ああ〜いいな〜。ゲーム時代初期の匂いがする〜。)