特別篇『コレで最後。『仮面ライダー龍騎』に愛を込めて』の巻



 最終回一歩手前で、城戸真司が死んだ。
 モンスターから子どもを庇って傷を受け、それでもなおライダーとして戦いに出向いていくという、「モンスターから人を守るためにライダーになる」と言っていた真司の、実に彼らしい最期だった。
 城戸真司は、口が軽くてお調子者でそしてとても真っ直ぐな気持ちの持ち主だった。それ故に、他のライダーたちの様々な『戦いの理由』を知った後には、「ミラーワールドを閉じたい」という自分の気持ちが本当に正しいことなのかどうか迷い続けていた。そしてその迷いに答えを見つけることが出来たのは、彼が息をひきとる間際のことだったのだ。
 真司は言う。
 「俺さ、昨日からずっと考えてて、それでもわかんなくて、でも、さっき思った。
  やっぱりミラーワールドなんか閉じたい。
  戦いを止めたい、って。
  きっとすげえ辛い思いしたり、させたりすると思うけど、それでも止めたい。
  それが正しいかどうかじゃなく、俺もライダーの一人として、叶えたい願いがそれな  んだ。」
 城戸真司くん、いつも元気で真っ直ぐで、笑顔がとても好きでした。

 北岡秀一の願いは『永遠の命』だった。
 スーパー弁護士と豪語していた彼は、地位も名誉もお金だって有り余るほどあったけれど、たったひとつ、命の期限だけは自分の思う通りにならなかった。
 彼は不治の病に侵されていたのだ。
 病状が悪化し、戦いが虚しくなったとライダーの戦いから脱落した北岡だったが、最後まで因縁の途切れなかった浅倉威との決着をつけることを決心する。
 だが、彼がその戦いに出向くことはなかった。
 そしてその後に待っていた令子との食事にも。
 ソファの上で彼は眠っていた。
 デートに行くためのジャケットを着て、手に真っ白な薔薇を持って・・・。
 その目が開くことは、二度とない。
 北岡秀一さん、気取ってて狡くてちょっと情けなくて、でもスマートでソフトでやわらかい、そんな雰囲気がとても好きでした。
                    *
 北岡の意志を継いで浅倉との決着に出向いていったのは、彼の優秀なパートナーであった由良吾郎だった。
 車の運転から、格闘術、「プロを越えた」とまで北岡に言わせた料理の腕など、多彩な才能を持っていた通称ゴロちゃんは、終始、北岡の影として彼を支え続けていた。一見軽くてちゃらんぽらんに見える北岡の、本当の心の中を知っていたのは彼だけだったかもしれない。
 彼もまた、北岡の代わりに出向いた浅倉との戦いで命を落とすこととなる。
 由良吾郎、いや、ゴロちゃん、センセイの前だけで見せるはにかんだような優しい微笑みが、とても好きでした。
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 「イライラするぜ。」
 という言葉通り、浅倉威は最後まで自分の中に渦巻くモヤモヤとしたモノを振り払うかのように戦い続けた。
 戦うことを楽しみ、多くの命を奪ってきた彼は、戦った相手が北岡ではないと気付いた後、銃をかまえた警官たちの群に向かっていくことによって自らの命に幕を引いた。
 最後まで、おそらく彼の心の中の靄は晴れることがなかったのだろう。
 「なあ、ホントに楽しいよな、ライダーってのは」
 そう言っていた浅倉だから、もうライダーとして戦うことの出来る相手がいなくなったことは、大きな痛手だったに違いない。彼は、無意識に死を選んだのかもしれない。
 浅倉威はきっと、この時代に人間として生まれてくるにはあまりにもチカラを持ちすぎた存在だったのだろう。だけど、その刹那的な生き方が、獣のような目が、時にせつなく見えて、とても好きでした。
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 「蓮、おまえはなるべく、生きろ。」
 真司は息を引き取る間際、蓮の手を強く握ってそう言った。
 自分はどんなに傷ついてもなんとも思わないくせに、人が死ぬことを誰よりも嫌った蓮。その目の前で真司が死んだとき、彼は真司の手を握り続けたままペタンと冷たいアスファルトの上に座り込んだ。
 そこに神崎士郎が現れてこう言う。
 「来い、オーディンと決着をつけさせてやる。最後の仮面ライダーとして」
 ミラーワールドを開き、デッキを作ってライダー同士を戦わせていた神崎士郎の目的は、妹の優衣に新しい命を与えることだった。
 幼い頃にすでに命を失っていた優衣は、ミラーワールドにいるもうひとりの自分の命を貰ってこの世に存在していたのだ。しかしその命も、20歳の誕生日には消えてしまう。神崎は、そんな優衣のためにより強く新しい魂を得ようとしていたのだ。
 しかし、全てを知った優衣は兄のやり方に大きく拒絶を示す。
 幼い頃、淋しかった自分の身を守ってくれるモンスターを描き続けていた優衣。そんな中たった一枚だけ優衣が描いた、兄と自分の絵を、なによりも大事にしていた神崎。
 優衣は消える間際に士郎にこう言い残す。
 「ねえお兄ちゃん、もし、もしもう一度絵が描けたら、モンスターがいる世界じゃなくて、二人だけの世界じゃなく、みんなが幸せに笑っている絵を、お兄ちゃんと、一緒に・・・・。」
 そして神崎は繰り返し続けてきたミラーワールドの呪縛を、断ち切ることを決めたのだ・・・・。
 優衣ちゃん、誰もが幸せになれるような優しい眼差しが、とても好きでした。
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 そして、秋山蓮。
 戦いの末生まれた新しい魂を手に入れた最後のライダー。
 いつもいつも、君は辛そうな顔をしていたね。
 自分の望むものを手に入れるために、戦って戦って・・・でも、人を簡単に殺せるくらいに冷酷にはなりきれなくて。それを自分の弱さだと思って、悩んで迷って。自分を傷つけることなんかなんとも思ってなくて。
 だから、最後になにもかも吹っ切れたような穏やかな寝顔見たときには、嬉しかった。本当に嬉しかった。恵里の中指に自分の分と、彼女の分、ふたつの指輪をはめて、まるで自分の消えていく命を託すように。
 風にひるがえる真っ黒なロングコートも、風を切るように走るバイクも、ぶっきらぼうでちょっと冷たい物言いも、ちょっとケチなところも、接客業がエキスパートなところも、隠れた優しさも、時折見せる微笑みも、それに意地悪なところも、何もかも好きだったけれど、ふとした時に真司に見せる一点の曇りもない強い意志を持った瞳が、秋山蓮に惹かれた最大の理由だと思うのです。
 とても、とても、好きでした。
 そう、こんな言葉なんかじゃ言い表せないくらいに・・・。
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 優衣と士郎は絵を描いている。
 だが、それは淋しいモンスターの絵ではない。みんながニコニコと笑っている色とりどりの世界の絵だ。
 その世界の中で、真司はOREジャーナルの一員として今日も『金色のカニ』なんていう胡散臭いネタを元気に追いかけている。
 スーパー弁護士北岡は、黒を白にひっくり返す凄腕。自分の載っている新聞記事を見て「右ナナメ45度!」なんて満足そうに笑っている。
 その傍らにはやっぱりゴロちゃんがいて、嬉しそうにセンセイの世話をやいているのだ。
 真司がバイクを引いて歩く街では、東條が自転車で駆け抜けていく。
 手塚がコイン占いの露店を開いている。
 浅倉が肩で風を切って歩いている。
 そして、蓮。
 花鶏の前で真司が出会った全身黒ずくめの男。
 彼らは他の世界で、お互い戦わなければならない運命の中に出会った。
 それはとても哀しくて、辛くて、せつなくて、そしてどこまでも純粋な願いの中にあった出会いだった。
 花鶏の中には優衣の姿はない。彼女のおばさんである沙奈子がひとりいるだけだ。その傍らには、大きくなる前に命を終えた優衣と士郎の幼い頃の写真が飾られている。
 優衣と士郎はこの世界にはいないけれど、不思議な運命を残してくれた。
 真司と、蓮。
 それに北岡、浅倉、手塚、東條・・・そして他のライダーたちも。
 前の世界で運命を共にした者達が、またこの世でも出会えますように。
 そして今度は、戦うことのない世界の中で運命を共にしていけますように。
 それはきっと優衣の願いだ。
 大好きな人たちが戦い合うことを最も嫌った優衣の。
 運命はつながっている。
 花鶏の前で、何か不思議な縁を感じながらも別れた真司と蓮。
 そこで物語は幕を閉じるが、僕たちはみんな、祈りにも似たような気持ちでこう確信している。
 『またきっと、ふたりは逢えるだろう。』と。

A Theatrical Campany yakoudou