其之壱百四『試練!山下達郎の壁!!』の巻



 クゥウ・・・・!
 『クレヨンしんちゃん』の映画は良い・・・!人々がアテネオリンピックに興じている最中、僕は手にしていた焼きうどんを喰らうことも忘れ、ただただホロホロと涙を流すのであった・・・。今は亡き塩沢兼人さん演じるブリブリザエモンがサラサラと夕日に消え、しんちゃんがマスク越しに人知れずダクダクと涙を流すあのシーンのしんみり度合いと云ったら・・・!クゥウ、こりゃもう泣かずにはいられますまい!!
 しんちゃんたちを助け、炎に消えていくブリブリザエモンの姿・・・。
 オリンピックもいいが、しんちゃんも良いぞ!!
 人よ、大人よ、心が疲れたら『映画・クレヨンしんちゃん』を見よ!
 僕のお薦めは『大人帝国の逆襲』と『電撃!ブタのヒヅメ大作戦』だ。
 ブリブリザエモンの勇姿は『ブタのヒヅメ〜』で見られるので、是非とも疲れた心を癒やしてくれ。
 泣けるぞ!!
 クゥウッ!
                  ***
 そんな僕は、最近山下達郎のCDを購入した。
 七海と山下達郎・・・・。
 僕の音楽の趣味を御存知の方なら「グハァ!」と思わず沖田総司ばりに血を吐いてしまうに違いあるまい。
 音楽はすべからくドカドカしてネエと気が済まない僕と、飄々としていて滑るような爽やかさの山下達郎。
 その組み合わせは一言で云えば、『似合わない!』に尽きる。
 さながら「マグロの寿司にケチャップをつけて喰らえ」と云われた時のような衝撃がある。「そりゃアンタ、合わネエだろう!!」と誰もがツッコンでしまうに違いない。
 それほどまでに僕と山下達郎は縁がないものだったのだ。
 では、何故そんな僕が震える手で山下達郎のCDをレジカウンターに置いたのか・・・?
 それにはとある女性の存在が大きく関わっている。
 ある日、電話がピルルと鳴った。
 嗚呼、それこそが始まり。
 「あのネエ〜、CD買ってちょうだ〜い」
 かっ・・・・母さん・・・・!!(←噛み締めた古川登志雄風にお読み下さい)
 「NHKでやってるホームズのマンガの最後に流れる山下達郎のCDが欲しいの〜。」
 母さん、それは多分、エルキュール・ポワロのアニメだ・・・!!
 以前にもたしかこんなことがあった。
 NHK紅白で流れた長渕剛の『幸せになろうよ』のCDを買ってくれと頼まれたことが・・・!!自分で買ったらエエやろがい、とお思いになるだろうが、僕のハハはこの歳までCDなどというものに縁がなく、本人曰く「買い方がわからな〜い」のだ。僕もそう思う。未だにCD屋を『レコード店』と呼ぶハハを買いに出させたりしたら、それこそ右往左往で結局何も買わずに帰ってくるに違いないのだ。
 いっそ『はじめてのおつかい』で取り上げていただきたいほどのハプニングに発展する可能性すらある。
 「山下達郎を買いに出たところ、吉田拓郎を買ってきてしまう。」
 それくらいならまだいい。
 「山下達郎を買いに出たところ、ブリトニー・スピアーズを買ってきてしまう。」
 嗚呼、もう目も当てられない。
 「山下達郎を買いに出たところ、山下清の貼り絵を買ってきてしまう。」
 ぬう!オニギリが大好きにも程がある!!
 ならばと、ハハが山下清に生活費をつぎ込む前に、僕はCDを買いに出掛けた。
 こうして僕が生きていく過程で縁がないであろうCDに、僕は触れることになったのだ。
 なんちゅうか、大変に気恥ずかしい気がする。
 思わずレジのおネイちゃんに「ち、違う!違うんです・・・!!」と言い訳をしたくなる。
 決して山下達郎や長渕剛が悪いと云っているのではない。お二方とも大変素晴らしい音楽性の持ち主であると思う。
 グァ、しかスィ!!
 なんちゅうか、自分のテリトリー範囲外の音楽を買うっちゅうのは、つまりアイデンティティに反する出来事であり、こう・・・得も知れぬ緊張を伴うものなのだ。
 山下達郎ファンの諸君よ。
 君は僕の代わりに『チョンマゲ天国』が買えるか!?
 『グループ魂』のアルバム(発売おめでとう!!)を嬉々として買うことが出来るか!?
 アニメ・特撮コーナーから『仮面ライダー龍騎』のCDを持ち出し、レジに叩きつけることが出来るというのか!?
 思わずワケもなくオドオドして「いやあ、妹に頼まれちゃってサー」などとカタコトの日本語で弁明しましまうだろう?
 しかし、僕なら出来る!!
 何故ならそれらが僕の愛するものだからだ!!
 君も山下達郎の音楽を本当に愛しているのなら、例え山下が『赤ちゃんパムパムオムツでゴ〜で御座る』なる題名の曲を発売したとしても、なんの躊躇無く購入するだろう?
 ・・・・・・つまりはそういうことなのだ・・・・!!
 僕はカァアと赤くなる耳を押さえ、山達のCDをカバンに仕舞い込んだ。
 最近よくやくCDプレイヤーの必要性を感じ見事購入をはかったハハに、今度はCDそのものの購入方法を教えてやらねばなるまい。
 もう僕が、CD店のレジでブルブルと震えないために・・・。


(以前購入した長渕剛のCDは『幸せになろうよ』。そして今回の山達が『忘れないで』だ・・・!な、なんて僕に似合わない題名なんだ!!カ〜。『赤ちゃんパムパム』のほうがまだ買いやすいぞ、僕にとっては・・・。) 



A Theatrical Campany yakoudou