其之壱百勒『体育祭・応援合戦のアンニュイ』の巻



 日々空が遠くなっていく。
 朝夕などはすっかり秋の空気である。
 僕はと云えば、プレステのコントローラーを握り、わざとステアリングを重くした四駆でデコボコ道を暴走中である。狭い山道を横滑りなんかした日にゃあ、後続車がドコドコ横っ腹に突っ込んできて、ボディボコボコの団子状態だ。画面が容赦なくガウンガウン揺れるので、自宅に居ながら車酔い。オエっとなりつつも、坂道から堂々ジャンプをかまし、前方を走行中の桃色四駆の屋根をギュムと踏みつけるのであった。
 んん〜、秋だにェ。
 僕の通っていた高校では、秋にさしかかる時期にとある練習が始まる。
 その名もズバリ『体育祭応戦合戦の為の練習』だ!(SE:シャンシャン)
 我が高校の体育祭におけるチーム分けは、下級生にとっては最悪としか言い様のない縦割りチーム制である。(つまり「3年1組・2年1組・1年1組」等の組み合わせ)
 休み時間、我々下級生の教室に上級生が現れる。
 ガラリ。
 「ちょっと聞いてくれるぅ?」
 何事ぞ!?と我々の間に緊張感が走る。
 大抵こういうもんの指揮をとっているのは、体育会系の短髪・色黒系先輩であるからして、見た目からして威圧感満載である。なんちゅうか、騒ごうものなら足首のない象足で蹴り殺されかねんような気すらする。
 「え〜、今日、放課後3年1組の教室に集合ね〜!」
 え?なんで?
 上級生はそれだけを言い残すと、教室の扉をぴしゃりと閉めた。
 用件を云え用件を!!そして人の都合を聞け上級生よ!!我々は突然の呼び出しに動揺するも、中には情報通が必ずいるもので、「そろそろ体育祭の応援合戦の練習するって先輩云ってたらから、それじゃな〜い?」等と云って人々を安心させるのであった。
 僕のような、ある日の放課後は芝居の練習を、そしてある日の放課後は化学室で自家製花火を暴発、なんちゅう毎日を暮らしている者にとっては、上級生の威信を懸けた応援合戦(練習)なんちゅうもんは「めんどくせえ」事でしかなく、上履きをズルペッタンと引きずって密かに「めんどくせえ」空気を漂わせながら、放課後の教室に向かうのであった。
 「体育祭の応援合戦の練習を、これから毎日放課後残ってやっかんね〜!」
 って、聞いてネエよ!!
 毎日って何だ、毎日って!そんなに俺たちゃあ暇じゃネエぜ!放課後、本屋とかに行かなあかんし!!(笑)CDとか見にいかなあかんしぃ!!
 などという心の叫びが炎と燃える諸先輩方に届くわけなどなく、次の日から3年生監修のもと、恐怖の応援合戦練習が始まるのであった。
 まずは準備ッ!
 固い台紙に色紙を張り付けよ!!
 「ヘイ!」
 黒のゴミ袋の三カ所に穴を開けよ!!
 「ヘヘイ!!」
 ゴミ袋をかぶり、手に白い軍手をせよ!!
 「あ、暑ィ!!暑ぃっす先輩!!」
 (バキイ!!←象足)
 「すいませんッス!!ダ〜ラダラ(←流血)」
 教室の机を雛壇状に組み上げ、いざ練習開始ィ!!
 音楽に合わせてボードを替える!!
 「サッ!ササッ!!」
 ホラぁ!!そこ遅れてんぞ、コラァ!!
 「は!すいませんッス!!」
 目の前にはズラリと並ぶ上級生。腕組みをしつつ厳しい目で我々を監督する。(女子校なので大変怖いッス)ちゅうか、もうホント、そろそろ暗くなってきましたんで・・・、エエ、出来ればバイト代とか出してもらえネエっすか?
 エエ、もうホント、見たいテレビとかありますし、ボードを膝の上に置いて軍手をはめた手を胸の前でヒラヒラ〜、ってやってる暇もないっついますかね・・・エエ。
 そんな下級生軍団パネル隊の前で踊り狂う特権を持った最上級生たちは、腰ミノつけてフラダンスを披露中。
 かっ、勘弁してくれッ・・・!!
 練習終了後、踊り場の壁をゲシゲシ蹴る我々の目は一様に鯰のように濁っていた。
 しかし!
 そんな苦難を乗り越え、ついに演目を披露する場『体育祭』がやってきたのだ。
 聞けば他のクラスも皆、血の滲むような練習をし、良い出来に仕上がっているとの事。んん〜、これはなかなか楽しみではないか!!
 しかし我々のチームだってなかなかに素晴らしいぜ・・・、出来上がり図見たことネエけどな、僕たちパネル隊。いや、きっと素晴らしいハズだ!!
 『エエ〜、それではぁ〜、応援合戦を開始しま〜す!』
 よし!壇上に登れ!隊列を組め!胸に半ばボロボロになったパネルを抱いて・・・、パネル隊いざ出陣であります!!お父さん、お母さん、行って参ります!!
 「めんどくせえ」という思いは変わらぬが、これで最後と思えばなんだか妙に胸が高鳴るものである。
 『では全チーム一斉に・・・・スタートォ!!』
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は??
 各々の組の上級生たちが一斉に足下に置かれたラジカセのスイッチをONにする。
 なっ、なにをゥヲヲヲッヲッヲヲヲヲヲヲヲヲヲ〜ン!!!!
 あちこちから多種多様な音楽が混じり合って、ついでにかけ声なんかも混じり合って、もうワケがわからん状態である。まさに応援のチャンポン。自らのチームの音楽も集中して聴いていなければ、アッという間にさらわれてしまう。
 ちゅうか、1チームずつやるんちゃうんかいッッ!!
 いや、合戦だから当たり前なのかも知れないが、せっかく必死こいて練習してきた成果をジックリ披露させてくれよ!!
 コラ、四組、隣で「ヘイヘイ」うるせーんだよ!!(怒り)
 六組は野太い声で「ソイヤソイヤ」云ってるし・・・!!!(戸惑い)
 こりゃもうパネル一枚くらい間違えたって別にどうってことネエな・・・、ハハ。(そして諦め)
 見れば三年生担当フリーダンス隊がズンズンと校庭中央に集まっていく。そして他のチームのフリーダンス隊と・・・だ、ダンス対決ゥ!!?
 オマエたちゃ、ウエストサイドストーリーかっ!!
 しかし、フラダンスやら、一世風靡風ダンスやら、フラメンコやらが節操なく混在するダンス対決は、「一体誰がどういう基準で審査するのだろう?」という疑問を抱かせるに充分な異種格闘戦であり、身動きのとれぬパネル隊は、ただただ音楽に合わせて無表情にパネルをめくるのであった。
 こうして我々下級生の秋は、制限時間を示す「ドドン!」という太鼓の音と共に終わりを告げたのである・・・。
 嗚呼、秋よ。
 君はどこまで人をアンニュイな気持ちにさせるのだい?
 そして我がチームに待ち受けていた、6組中4位という微妙な成績もまた、秋風と共に我々をアンニュイにさせるのであった。
 懐かしき縦社会の思い出である・・・。


(『木更津キャッツアイ〜日本シリーズ〜』DVD購入。きさら〜づゥ〜、ニャーニャーニャーニャーニャーニャーニャー!!そのワケはズバリ、内村さんが見たかったから・・・・って、ぶっさんじゃネエのかよ!!OP、袖口からチラリと覗く指先のカットを見て瞬時に内村さんと判断した僕は偉い。偉い、というかむしろこれはもうマニアックの部類だ。内Pバリの黒サングラス、黒スーツに身を包み、自分に出来うる限りの精一杯の悪いことをする内村さんの姿に幸せを噛み締める僕でありました。素敵です・・・。)



A Theatrical Campany yakoudou