其之壱百糾『玉コンの罠〜人は何故玉コンニャクを喰らうのか?〜』の巻



 山へドライブに行った時のことである。
 直売店のリンゴに気をとられるハハを後目に、僕は自分の財布をムンズと握って、とある店へ向かった。
 『玉こんにゃく 100円』
 嗚呼、巨大鍋の中でクツクツと茶色に染まる玉こんにゃくよ・・・。オマエは何故、東北の山々の観光店で売られているんだい・・・?そして何故、人は玉コンニャク略して玉コンにこんなに惹かれるのだろうか・・・?
 もうこれは一種の魔力である。
 (いやしかし七海よ。オマエはそんなにコンニャクが好きか?本当に食べたいのか?あのホクホクと湯気の立つ丸い物体に騙されてるんじゃないのか?コンニャクを喰らう人々の「ハフハフ」という顔が羨ましいだけじゃないのか!?)禅問答の如く、僕の心の中の老師様が厳しく問いただす。
 そうだ・・・。僕は普段「ぬほほ〜い!コンニャクじゃ〜い!」と小躍りするほどのコンニャク好きでは決してない。おでんでは断然餅巾着派であるし、田楽ならば豆腐のほうが好みだ。無論、刺身コンニャクにも興味がない。
 しかし何故だ。
 丸い。
 茶色い。
 三連。
 これだけの条件で売られているだけで、コンニャクがこんなに愛おしい存在と化すのは。
 寒い雨降る中、湯気がほわっと立ち上る鍋。嗚呼、もうそれを見てしまったら、人は玉コンの罠にはまっていくのだ。
 そして僕もまた、財布を握りしめたままフラフラと、気付けば鍋の前に居る。
 台の上に「好きなだけつけやがれ」と置かれた芥子のタッパーも、こんな雨の日にはこれまた情緒深く感じるではないか。
 全てが仕組まれている。
 そして、僕はもう、この丸い物体の罠真っ直中に捕らわれているのだ。
 (もう逃げられない・・・)
 そう感じた僕は、気で出来た台に気持ちよく百円玉を叩きつけた。
 「玉コン一丁ッ!」
 「あ。ワッシは芥子付きで」
 ってオヤジィ!!
 いつの間にオヤジィ!!!
 悩む僕の背後にいつの間にかオヤジィイイイイイイイイイイ(実父)!!!
 僕は静かにもう一枚百円を置き、
 「スマン、オバチャン、もう一本追加してくれ・・・」
 と微笑んだのであった。
 オヤジ、俺のオゴリだぜ・・・。
 バーであるところの「あちらのお客様からです」的な不敵な笑みで、僕はオヤジと共にハフハフと玉コンを喰らったのであった。
 「う、うめ〜ェ(はふはふ)」
 観光地で売られている食べ物は何故、こんなにも人を惹きつけるのであろうか。
 海辺の店で売られている焼きホタテ貝・・・・。
 山頂の店で売られている焼きトウモロコシ・・・。
 湖付近の店で売られている焼きダンゴ・・・。
 寺付近に多い甘酒・・・。
 中には「この価格は明らかにぼったくっているだろう!?」みたいな店もあるに関わらず、何故か人はフラフラと気付けばそのノボリの前に突っ立っているのだ。
 立ち上る煙や湯気、そして匂い。
 気付けば既に手には醤油で香ばしく焼かれたホタテ串を持っていたりするのだ。もうすぐ昼でご飯も食べるっちゅうのに、「まあ、みんなでわけて食べれば大丈夫だから」とかワケのわからんことを呟きつつイカの焼いたヤツ購入。
 嗚呼、怖るべし観光地の食べ物屋・・・!!
 僕の友人は貝殻についたまま焼かれたホタテ(580円)を購入。醤油とバターで味付けされたホタテにジュルリと唾をのみつつ箸で貝を剥がしにかかったトコロ、見事にフッ飛んで道路に落下。近所の野良犬にそのままくわえて持っていかれる、という荒技を繰り出していた。(その後彼は道に突っ伏し「ウヲ〜!」とドラマの如く号泣したが、我々はただただ爆笑しながらその周りをグルグル踊り回っていた。)
 屋外で景色を見ながらホクホクと立ち食い、なんていうシチュエーションもまた、人を惹きつけるチカラの一つなのかも知れない。
 人よ。
 玉コンには気をつけろ。
 あの丸い物体は人を惹きつける魔力を持っている。
 そしてカラ付きホタテにも気をつけろ。
 食べる際には周囲50Mに野良犬がいないことを確認してから食べるがよろしかろう。
 飛ぶぞ。
 ポ〜ン。

 ハグ。ムシャムシャ。ワン。

 ・・・・あ。


(今、『怪奇大家族』が面白い!!日曜深夜テレ東で放映されているこの番組は、その胡散臭さと絶妙の面白さですっかり僕を虜にしている・・・!!た、堪らん!!是非ご覧アレ!怪奇大家族ゥ〜♪←OP)



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