其之壱百壱拾壱『不思議週間』の巻



【ガツヨウビは心温まる噺】
 月曜日は市場に出掛け〜ェい、糸と凧を買ぁって来たぁ〜。つりゃつりゃつりゃつりゃつりゃりゃつりゃつりゃつりゃつ〜りゃ〜りゃ〜ぁ、ちょん、と。
 それで彼はどうしたかと云えばね、巨大タコを作って自分がそれに貼り付き、「ふはははははははは!!」って笑いながら飛ばされていったんだよ。忍者でもないのにねぇ。
 それっきり彼は行方知れずになってしまったんだ。
 だけど昨日彼から手紙が来たよ。
 花柄の便箋にたった一言「俺は、カリオストロを見つけたよ」と書いてあったよ。
 ああ、良かったなあ。
 だから僕も手紙を出そう。
 緑色のインクでこう書くんだ。
 「僕はいつもどおり暮らしているよ。元気でやれよ」。
 かつて水の底に沈んでいた遺跡でも眺めながら、何故巨大なタコを作ろうと思ったのかも、それで何処へ行こうとしたのかも忘れて、毎日のんびりと暮らせよ。
 そいつを飛行機折りにして窓の外に飛ばすんだ。
 外は台風だ。真っ黒に渦巻いたこの風が、きっと彼の人の居る空までこの手紙を届けてくれるだろう。
 そう思った。

【ケヨウビは気持ち悪い噺】
 池でモケモケ草を採っていたら、池の中から河童が現れて「お菓子をおくれ」と云う。
 ポッケを探ったら金平糖が一個入っていたので、それを河童の水掻きの上にのせてやった。
 河童はニヤリと笑ってそのままポチャンと池の中に潜って、それきり姿も現さない。
 「お礼も云わないなんて、なんて礼儀知らずの河童だ!」
 怒ったついでにモケモケ草を取り落としてしまった。ちくしょう、ついてない日だな。
 仕方ないからなんにも採らずに家に帰ると、畳の部屋の真ん中に直径50センチほどの池が湧いていた。
 底は暗くて知れないが、こぽこぽと湧く水は透きとおって良い香りがした。
 「ああ、桃の匂いだ」
 呑めばほんのりと甘い水をごぼごぼと気付けば狂ったように呑みあさっていた胃の中はもうなんだかゴポゴポで気持ち悪いのだが舌の上を転がっていく水の心地よさにうっとりしつつもやっぱりこれはなんだかやっぱり変なんじゃないかなと思って呑むのをやめようと思うのだけれどいつまで経っても喉はゴクゴクと動いているからきっと僕はまだ呑んで呑んで呑んで呑んデ呑んで呑んでいるんだろうなと考える。
 どれくらい経っただろうか。
 外はもうすっかり暗くなって、そして明るくなって、そしてまた暗くなって、そしてまた明るくなったけれど、僕はやっぱり水を呑んでいる。
 50センチの池に口をつけてズズズ、ズズズと啜っている。
 背後からヘタヘタと音がして、なんだか河童が近づいてきているようだった。
 「うまいかうまいか人間。この前のお礼だ人間」
 ゲロゲロゲゲゲ、と喉を鳴らして姿の見えない河童は云う。
 何がお礼だ、ヤメロ河童、こんなことはやめさせなければなラなイ、ヤメロヤメロ、ヤメナさイ。
 「何故ヤメようとする人間。オマエの本当のシヤワセは自分がジブンで在ることヲ忘れて、水色のお空でも眺めながらぼんやりと暮ラスことじゃないか、そんなことモわからないのか愚カナやつメ」
 ゲロゲゲゲ。
 「オマエはジブンを忘れるマでミズを呑まなけれバならない呑め呑め呑め呑めの目の芽のめのめのめののっめめめめmなおあぬえ;あまささjだl;cんzxl;cxz・・・・」
 さテ、僕はもう自分ガ誰だかワかラない。

 【ミズヨウビは美しい噺】
 あまりにも美しい顔を持ち、あまりにも大きな賛辞を受けて育った娘が、自分の顔に出来た小さなホクロを、ケーキを食べる為に用意された金色のフォークで穿り出し、血だらけになった顔を見てうっとりとしている。
 言い忘れていたが、金色のフォークには小さな鈴がついていて、動かす度にちりんちりんと涼やかな音色を奏でていた。
 今日のおやつはチョコレートケーキですよ。

 【キノヨウビは閉鎖的な噺】
 閉じこめられた。何重にも重なる湿った目をしたお婆ちゃんたちの輪の中に。
 やめて下さい!!ぎこちない足取りでマイムマイムを踊るのは!!
 ほらもうなんか・・・いかにもコケて大惨事になりますって感じじゃないですか・・・。
 やめて下さい!!なんかこう、微妙な感じでゆらゆら同じ方向に揺れるのは!!
 あの世に引っ張られてんのかな、って思っちゃうじゃないですか・・・。
 そしてもう勘弁して下さい。見ず知らずのわたくしにカゴメカゴメを仕掛けるのは。
 「後ろの正面だ〜あれ?」
 って、名前解りませんから!!
 適当に「トメさん?」って答えたら「ぶぶ〜っ。ぺにょっぱぽんぽり〜なで〜す」だって。もう、こりゃ大量虐殺だろう。
 足下に丁度良く転がってた金属バッドを握ってぶおんぶおん振り回したら、婆さんたちダッシュで逃げた。
 ありゃ多分、婆さんじゃないな・・・。
 だってもの凄く早かったもの。
 シャコシャコ走ってたもの。
 ねぇ・・・あんたもそう思うでしょ?
 ねぇ・・・。
 あれ?あんた、沈んだ目をした爺さんに囲まれてますね?
 ふふ。

【カネヨウビはマトモな噺】

 この度、学級委員に任命されました。明日からみんな僕の命令に従って下さい。とりあえず給食の牛乳のフタをコレクションすることをこのクラスの流行り遊びにします。それと、こぼした牛乳を拭いた雑巾は決して洗わないで下さい。尚、残したパンを机の中で保存していいのは給食後20日とします。それを破った者は、次の日から机の中のパンが十倍に増えていますので気をつけて下さい。ではこれで本日のHRを終わります。最後に「二組の歌」を歌ってお別れしましょう。「我ら二組ぃ〜。わんぱくクラスぅ〜。人並み外れた人気者ぉ〜。ババンバ、ババンバ、バン!ズズズン!とりあえず〜、生肉を揉ませるのだけはやめませんか先生?ヘイ!二組!二組!バンババン!ヒュ〜。」あれ?前学級委員長ジンノホリ君?君、泣いているのですか・・・?

【ツチヨウビは捜し物の噺】
 奥多摩でツチノコ探してたら、何故か北海道にいました。今から東京に帰るので遅れます。(会社員A子さんの遅刻理由)

【ヒノヨウビはサヨナラの噺】
 昨日夢を見たよ。
 君はカリオストロの空を見つめていたよ。
 手には緑色のペンで書かれた手紙を握って、透きとおった目で遠くを見つめていたよ。
 これから悪い魔法使いの天辺に閉じこめられたお姫様でも助けに行くのかい?
 ヒラヒラと手を振った、彼の背中はどんどんと小さくなっていった。
 でも本当はね。
 カリオストロを見つけたと手紙をくれた友人は、僕がその手紙を受け取った次の日、ドブの中に半身を突っ込んで死んでいたんだ。
 新聞の中の丸い円の中に見慣れた顔が笑っていたよ。
 でもそんなことは世の中のありふれた出来事だ。
 さあ、お茶にしよう。
 彼とそのお姫様の分も、角砂糖を用意しなけりゃね。


(金曜ロードショーにて『ルパンV世〜ルパン対複製人間〜』を放映!見よ、若者たちよ!これが元祖ルパンワールドだ!!っちゅう感じで、なんか嬉しかったなあ・・・!!やはり確実に面白い・・・!純度100パーセントのルパンだ!!)



A Theatrical Campany yakoudou