其之壱百壱拾迩『半目様』の巻



 ふごあああああああああああああああああああああああ!!!
 僕は見た。
 半目で熟睡しておる人間の様をッ!
 おお、人体の神秘よ・・・!!人は白目を剥いた状態でかくも深く眠れるものなのか!?
 怖い・・・!!怖いぞ半目!!
 椅子の上で眠りこけてしまったらしい友人は、瞼を目の半分のところまで下げた状態でピクリともしない。開いた部分から覗いている白目には、所々、赤い筋のようなものが走っていて人々の恐怖を煽る。
 ついでに口も半開きである為、遠くから見ればもう丸々『沙粧妙子』の死体だ。
 片平なぎさと船越栄一郎を第一発見者にしたてあげれば、2時間サスペンスの始まりである。山村紅葉も連れてこい。温泉に置けば木の実ナナが見つけてくれる。
 僕はと云えば。
 話には聞いていたが本物を実際に見たのが初めてだったため、すっかり浮かれてしまっていた。
 (と、とりあえず写真を・・・!)
 急いでケイタイを取り出し、ふと考える。
 (いやいや待てよ。もしかしたら本当は起きているのに、眠ったフリをしているだけかも知れない。だって目ェ開いてるもの!ここは一つ、本当に眠っているのか確かめなければなるまい・・・)
 とりあえず眠り者の前を「いやあ、なんちゅうか、もうホント偶然に通りかかっただけなんス!」みたいな顔で横切ってみる。
 (・・・・・・・)
 動かない。
 それどころか小さく「コッ!」とか云ってる。
 どうやら本当に眠っているらしい。
 (しかし念には念をという有り難〜い言葉もあることだしな・・・)
 今度は少し躍動感をつけて「うひょひょひょひょ〜イ!僕ぁ浮かれてまっせ〜」をテーマに横切ってみるとしよう。
 (ヒラヒラ、ウケウケ、ヒラヒラ、ウケウケ。←浮かれた調子で横切り中)
 「・・・・コッ!」
 うむ、寝ておる!!(決定!)
 ならばさっそく記念写真だ!!
 (カシャ!)
 よし、ツーショットだ!!
 (カシャ!)
 ナナメだ!!
 (カシャ!)
 アップだ!!
 (カシャ!)
 次は引きだ!!
 (カシャ!)
 目線ください!!ネエけど!黒目!
 (カシャ!!)
 頭にみかんだ!!
 (カシャ!!)
 駄目だ!!駄目だあ!!こんなことじゃ、幕の内先生は納得せんぞ!うりゃうりゃ、もう一枚ぃ!!
 (カシャカシャ!!)
 う〜ん、いいよいいよぉ、すっごいセクシーだよ〜ぉ。じゃあ、次は水着になってみよう〜かあ。え?出来ない?カマトトぶってんじゃないわよこの酔いどれウサギがあ!!
 (カシャリ!)
 君よ、解るだろうか。
 この孤独な眠り人撮影会の盛り上がりは今や最高潮を迎えていた。
 僕の心の中では村中の人間が集まり、櫓を組んでの大イベントだ。やがてどこからともなく「眠りコール」が・・・!!
 「ソレ、ねっむっり!!ハイ、ねっむっり!!ねっむっり!!ねっむっりぃ!!眠り様あ〜!居眠り様あ〜!半目の眠り様あ〜!!」
 おお、隣村の者達もこの「眠りコール」に呼ばれるように集まってきたではないか!そして祭の最後には眠り様による餅まきが・・・!!
 眠り様が眠りながらまく餅を拾う子どもたち。
 これを食べれば人は不眠症に悩まされることなく、スヤスヤ「コッ」と眠れるのだと云う・・・。
 その姿をみながら長老が小さく呟く。
 「眠り様こそが我が村を救う救世主である・・・。我らの村が危ない時、眠り様が眠りの森にあるという眠りの実を食べビームでビビビ・・・・くぉりゃああああああああああ!!!眠り様の額に三角の布つけんでネエ、このこわっぱがああああああああああああああああああ!!!」
 村の子どもの悪戯に、長老キレる。
 「ううむ、素晴らしいな、眠り祭・・・・」
 しまいには眠りロボまで現れた一大祭に、おもわず深く頷くわたくし。
 ことのほか充実したひとときを送ってしまったようだ。
 僕は、今一度半目開きっぱなしの眠り者を見た。
 「・・・・コッ!」
 眠っておる。
 僕は満足そうに微笑み、そのまま部屋を後にした。
 眠り者の頭の上にみかんをひとつ載せたまま・・・。
 いい夢をありがとよ・・・・。みかんはその礼だ、とっといてくれ。僕かい?ああ、僕はこれから君の写真を、ちょっと、友達の人々に見せびらかしに行こうと思っているだけ、だからさ・・・・・ウフフフフ、あ〜っはっはっはっはあ!!
 お似合いよ!!
 そのみかん色がとてもお似合いよ!!
 半目の寝顔は人を恐怖に陥れ、そしてまた、その心に「眠り祭」すらも巻き起こす。
 人のいるところで眠る際には、皆様、くれぐれも気をつけるが宜しかろう。
 「コッ!」


(後日、もの凄く怒られました。(笑)しかし「そのみかんの写真くれ」とか云っていたので、本当はなかなかお気に入りだったのかも知れません。)



A Theatrical Campany yakoudou