其之壱百壱拾碌『きょうの犬っこ(←東北弁)』の巻



 僕の通勤路は様々な犬っこたちのお散歩ロードになっている。
 今日は僕が出会った様々な犬っこたちの巻き起こした珍事を矢継ぎ早にご紹介しよう。
 リードとスコップを持ってついてきやがれ!わんわん!!

 @お尻の割れた犬
 犬のお尻が割れている・・・。
 僕は驚愕した。
 地面に両足を開く形でシャ〜コシャ〜コオシッコしていたコーギーのお尻は、背後から見ると二つにモコっと割れていた!その様、最早人尻の如し!!
 僕は笑った。
 おお、お尻の割れた犬よ・・・、キミは人を幸せにする。

 A自転車を覚えない犬
 僕の通勤路に、二匹のコーギーが現れる。
 僕のチャリンコを確認した飼い主さんが、二匹のリードを引き寄せる。
 だが!
 そのうちの一匹は、「あふあふ〜!あふあふ〜!」という顔をして僕のチャリンコに向かってくるのだ。
 下をベロンと垂らしながらチャリンコを見つめるその瞳はキラキラと輝き、浮き上がった前足はヘコヘコと宙を掻く。
 彼は知らない。
 この高速で回る丸いものに触れたら、自分自身の体が「モギュ!」っとなることを・・・。
 ただでさえ地面に近い生き物なのに、チャリンコなんかに轢かれたらさらにアンヨが短くなってしまうに違いない。
 しかしハラハラしているのは人間ばかり。
 今日もまた彼は、輝く瞳と輝くヨダレで僕のチャリンコに向かってくるのだ。
 「あふあふ〜!!あふあふ〜!!」(スコ!スコッ!)
 いい加減、覚えやがれ。(笑)

 B坂の怖い犬
 向かいから黒と白のパピヨンがやってくる。
 ヨチヨチヨチヨチ走っている。
 意気揚々と足を進めていたパピヨンが、とあるところでピタっと止まった。
 それどころか飼い主がリードを引くチカラに逆らって、一生懸命お尻を地面に擦りつけ、「わしゃ何があってもここは進まないのじゃ!」のポーズ。
 その様はさながら「生涯固形石鹸派」の頑固ジジイの如し。
 目の前には人間にとってはどうってことない小さな下り坂が一つ。
 パピヨンはそこを下ることが出来ずに、頑張って地面に貼り付いているのだ。
 しかし悲しいことに、パピヨンは軽かった・・・。
 飼い主がリードを掴んだままズンズン進めば、それに引きずられてズズズズズ・・・!!
 「あ〜れ〜ぇ〜!!」
 みたいなまん丸い目で、「お座り」をした体勢のまま坂を滑り降りていくパピヨン。
 「パ〜ピヨ〜〜〜〜〜ンンン!!」
 僕も思わず心の中で叫ぶ。
 彼の肉球が薄くなっていないことを祈る。

 C気高い犬
 気高い犬がいる。
 妙に凛としたソイツは、いつもまっすぐ前だけを見て進んでいる。
 トットットット・・・と一定のリズムを保ち、横を通る人間やら電信柱やら草花やらにも見向きもせず、背筋を伸ばした正しい姿勢で優雅に走っていくのだ。
 「・・・・・・・・・・姫川亜弓・・・・・・・・・」
 あだ名、決定!

 D脱走犬
 どこかの家から脱走したらしい犬と出会った。
 草の茂みに鼻を突っ込んで、フンフンフンフン気ままに匂いを嗅いでいる。
 白くてやたらとモフモフした脱走犬が、僕に気付いた。
 「んあ!!」
 その時の彼に台詞を当てるとしたら、まさにこの二文字であろう。
 脱走犬は「ビックリしたあ!」という顔をしたと思ったら、僕にクルリと背を向け、ただ首を巡らして顔だけこちらに向けた変な格好でタッタッタッタと逃げていった。
 そのままの格好で器用に角を曲がる。
 僕がその曲がり角の前を通ると、脱走犬はまたしても「んあ!!」という顔をし、僕を振り返りながらタッタッタッタと走り去った。
 ・・・・・・・・・・何故だ。
 ソイツにとって僕は『もののけ姫』におけるタタリガミ的な存在なのか・・・・?
 怖いけどちょっと見たいのか・・・?
 怖いモノ見たさなのか・・・?
 え?僕は怖いモノだったのか・・・!!!
 それはいいけどご飯までにはちゃんと家に帰れよ、脱走犬。ニヤリ。

 Eポールを見逃した犬。
 自転車にひかれて柴犬がやってきた。
 堅太りした体、茶色い毛、円らな瞳に、ハフハフと垂らした舌。
 ああ、今日もキミは完璧だ・・・。
 柴犬はきっと散歩が嬉しかったのだと思う。
 嬉しくて嬉しくてつい、自転車と自分の間に出現した三角ポールに気付かなかったのだ。
 案の定リードがポールに引っかかり、スコーン!と倒れる。
 「はぅ!」
 柴犬の目が丸くなった。
 軽いとは云え、一瞬首がグエっとなったのだろう。
 そして突然狼狽し始める。
 「なに?なにが起きたの?怖いよ〜ん、あうあう〜ん!」
 クルクル回り始める。
 飼い主が倒れたポールを直している間、彼はずっと足をパタパタと踏みならして右往左往していた。
 ん?あのステップはもしや・・・!?
 彼のステップと、とある音楽を合わせてみる。
 「オ〜レ〜!オ〜レ〜!マツケンサンバ〜!」
 ・・・・・・・・・・・合っている・・・・・・・・・・!!!
 柴犬界のマツケンに出会ったとある夕暮れであった。


(一戸建てに住んだら犬を飼いたいものです)



A Theatrical Campany yakoudou