其之壱百弐拾酸『姉さん!事件です!〜ひったくり篇〜』の巻



 僕の友達にひったくりに遭った者がいる。
 しかし彼女は自らのチカラをもってひったくられたカバンを丸々取り戻したのである。
 全国の婦女子必見!!
 『荷物をひったくられたらこう対処せよ!』。
 是非ともご参考に・・・。

 その日。
 彼女は暗い夜道を一人、比較的に陽気に歩いていた・・・。
 そう、彼女は今夜のご飯のことを考えていたのだ・・・。
 そんな彼女に忍び寄る黒い人影。
 キコキコキコキコキコキコキコキコ・・・・・・!!!
 油切れした自転車の乾いたペダルの音が、彼女目がけて真っ直ぐに近づいてくる。
 (ああ、自転車だわ)
 彼女は気を使って少しだけ塀に身を寄せた。
 しかし・・・!!
 自転車はそのまま壁際を歩く彼女の元へ向かってきたのだ。
 (あっ・・・)
 そう思った時には、既に肩に軽くかけていた彼女のカバンはアッという間にひったくられていたのだ。
 「ああ〜っ!!!」
 叫んだものの、相手は見向きもせずに自転車を漕いでいく。
 「その時にネ、ユウちゃん(←七海)に貸してもらってた小説のことを思い出したのよぉ!!」
 後に彼女は嬉しそうな顔でこう語った。
 ひったくり犯をも屈服させた驚きの彼女の行動とは・・・!!
 「ニャンタラ カンタラ ニャンタラ カンタラァ・・・・」
 何を思ったか彼女は大声で滅茶苦茶な呪文を唱え始めたのだ!!
 勿論、それぐらいではひったくり犯は止まらない。
 呪文を唱え終わった彼女は、ひったくり犯に向けて叫んだ!!
 「オマエ、呪うぞ!!オマエ、14日後に死ぬぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!もの凄い不幸に遭って泣き死ぬぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 ・・・・・・・・・・怖い。
 怖すぎるッス、姉さぁ〜はぁん!!
 それ完璧に電波系の発言ッスぅ!!!!
 そう。
 僕が彼女に貸したのは何をかくそうオーケンこと大槻ケンヂ氏の電波系小説であったのだ!!(オーケンの小説やエッセイはもんの凄く面白いです。是非、読まれたし!)
 おお、こんなときにオーケンの小説が役に立つとは!!本を貸した僕ですら思いもよらないお役立ち方法だ・・・!!
 しかも彼女は元・コスプレクイーン。(爆)
 瞬間ナリキリ度は120パーセントをゆうに越える!!(笑)
 あっと云う間に電波系少女になりきってしまった彼女の迫真の「死ぬ死ぬ」コールに、ひったくり犯は思わずカバンをぶん投げたのだと云う・・・。
 そしてそのまま恐怖におののきこけつまろびつ、自転車をヨロけさせながら走り去ったのだ。
 彼女はひったくり犯に勝利した・・・・!!
 彼女はふふふと笑いながら、ひったくり犯が放ったカバンを拾い上げた。
 そこに今度は滑らかな音をたてて一台の自転車が走り寄る。
 見ると、自転車に跨っていたのはキリリと眩しい若い警察官が・・・。
 彼女はポッと頬を赤らめながら(っていうかアンタ、旦那持ちじゃねえか・・・)か弱い声で「もうだいじょうぶですぅ」と云おうとしたその瞬間。
 「君か!?死ぬぞ死ぬぞとか叫んでいたのは!?」
 「・・・・・えっ?」
 彼女が叫んでいたのは夜中の住宅街。
 たまたま近くをパトロールしていた警察官が、この異様な叫び声を耳にして飛んできたというわけなのだ!!
 「あ!あの、違うんです!これは、その・・・」
 さすがに「ひったくり犯に呪いをかけていました」とも云えず、さらに今更「私じゃありません」とも云えず、彼女はただただうつむいてイケメン警官の説教を喰らい続けたと云う・・・。

 お財布とカバンが大事で、なおかつ自らのキャラクターイメージにあまりこだわりのない方は、ひったくり犯に遭った際、是非ともお試しあれ。
 しかしカバンを取り戻した後には、俊足でその場を離れることをオススメする。


(実話です。っていうか、もしひったくり犯が呪いを気にしないヤツで、そのまま走り去ったら彼女は一体どうしていたんでしょう・・・。先生、君の突発的な行動がものすごく心配ですよ?)



A Theatrical Campany yakoudou