其之壱百弐拾質『このひとなんなにょ?』の巻



 ふっくァ〜つッ!!
 そう。僕は不死鳥の如く復活したのだ。
 バサバサバサバサァ〜!!バン!ケ〜ン!!シュウウ・・・・。ふふ、雉も鳴かずば撃たれまいってね・・・。
 ともかく復活なのである。
 長く辛くジワジワと僕を苦しめてきたあの風邪から、見事回復したのである。
 人よ。キミよ。気をつけよ!
 今年の風邪は長いぜ・・・。ホクロからぴよっと生えてくるあの毛ぐらい長いぜ。卒業式における校長先生の一人エキサイティング演説よりも長いぜ。爺さんの眉毛くらい長いんだぜ!
 僕も常に額がホコホコ、関節ガキガキ、鼻は湯水のように垂れ、喉は二倍太くなっているのではないかと思うほどに腫れあがるという状態に陥り、泣く泣く病院へと足を運ぶこととなったのだ。
 月末の忙しい時であったので、薬をもらったら会社に行く心積もりで、家と会社のちょうど真ん中に位置する個人病院へ行くこととする。
 しかし。
 一つだけひっかかることがあった。
 その病院の掲げる看板というのが『小児科・内科』なのである。
 小児科・・・。これはどう見てもガキンチョメインの病院だ。
 一方こちらは熱でフラフラの29歳・・・。
 クウ・・・、一体どうすればいいのだ・・・。
 自動ドアの前で『病気の辛さ』と『29歳が小児科医に診て貰う恥ずかしさ』を秤にかければ、鼻水がビヨンと垂れて僕を病院内へと導く。
 一歩足を踏み入れて・・・・・僕はアッという間に後悔した。
 床に置かれた箱にはぬいぐるみ!
 受付には可愛いイラストが貼られ!
 看護士さんは皆若い!
 そして待合室にギッシリひしめく子どもたち・・・!
 勿論、テレビで流れるのはNHK教育サ!!
 おにいさんと一緒に「あ・い・うー!」サ!!
 嗚呼、29歳、無数のガキの中に一人29さァ〜い!!
 ば、んざ〜〜〜いっ!!
 僕、取り乱す。
 「んぎゃ〜!!無理ィ〜!!もう無理ィ〜!!」
 診察室から響くガキの声。
 安心しろ、ガキよ。無理なのはむしろ俺のほうだ。一人、この病院の患者の平均年齢を上げている俺のほうなんだ。
 ガキには勿論お母さんお父さんが付き添いでやってきている為、ただでさえ狭い待合い室はギュウギュウである。
 クソウ。
 僕だってそこの本棚にある『たのしいようちえん』みたいな本を読みたいのに・・・。いや、駄目だ。さっきから目のまん丸いガキが「このひとなんなにょ?」みたいな顔で僕の周りをウロチョロしている。うるせえ!喰っちまうぞ!
 普段ならガブリといくところだが、今の僕は熱にうなされている。
 ただグッタリとソファに横たわるのみ。
 「あ〜。まいこちゃ〜ん、だいじょうぶだったかな〜?」
 ふと開いた診察室のドアから先生の声。
 ああ、やはり小児科の先生は子どもの患者を「ちゃん・くん」付けで呼ぶのか。僕もうっかり「あけみちゃ〜ん、どうしたのかな〜?」とか云われたらどうしたらよいのだろう。とりあえず満面の笑みを浮かべた先生(想像)の頭を両手でガッっと掴んで、そのまま顔面膝蹴りィ!!あとはヒジを締めて・・・打つべし!打つべし!打つべしィ!!
 ふ。看護士さん、コイツに救急車呼んでやんな・・・。
 「七海さ〜ん。七海明美さ〜ん」
 は!
 僕が妄想の世界で遊んでいる間に、看護士さんが僕を呼ぶ。
 「んふ〜」と診察室の扉を開ければ・・・・。
 そこにはニコニコ笑顔の先生が居た。
 んぎゃああああああああああああああああああああああ!!!

(僕は無事診察を終え、大量の薬を手に入れた。だけど魂のどこかが抜け落ちた。怖るべし小児科!!)



A Theatrical Campany yakoudou