其之壱百弐拾蜂『ケンシロウとワカメ』の巻



 「僕はカトリックの幼稚園に通っていたので、慈愛の心に溢れているだろう?」
 と、云ったら、延髄蹴りを喰らった挙げ句、
 「マツケンサンバUを踊れ!!貴様の迷いも消えるであろう」
 と、ありがた〜いお言葉を戴いた。
 とりあえず踊ってみる。
 「オレ〜、オレ〜、チャチャチャッ、マツケンサンバ〜♪」
 おお、我が心の迷いが消えて飛んでいく・・・・ワケあるくぅあ!!!
 マツケンが脳味噌に貼り付いて、逆に惑うわい!!
 「悩み無用!」と和田アキ子が歌っているあのCMソングが、仕事中唐突に頭の中に流れ出して逆に悩みを増やしているのと同じ原理である。
 ホラ見ろ・・・放っといたら、カツケンまで出てきてマジック始めちゃったじゃねぇか・・・。
 ああっ。
 脳味噌の逆サイドからマツケンの元嫁・大地がキンキラの衣装を纏ってやってくる。
 「チャチャチャチャチャッ、チャチャッチャチャチャチャチャ、チャチャッチャチャッ、チャチャッチャチャチャチャチャチャ、しゃんはぁ〜いいれいちゃあ〜ぁあ〜♪」
 マツケン、大地、入り乱れての大乱戦に、さりげなく、えなりかずきになりすましたホリが混じっていて「そんなこと云ったって仕方ないじゃないか」とか云っている。
 もう僕の脳はこれ以上ないくらい飽和しているのである。
 なんせ春だ。
 去年の30倍とも云われる恐るべき悪魔たちが群をなしてやって来たのだ。
 事務所と外界を結ぶ扉を誰かが開ければ、入り口に近い順の花粉症患者から次々とクシャミを発していく。
 おお、それはまるでクシャミのビッグウエ〜ブ。
 コンサートのアンコール等でファンが魅せるあの波のように、人から人へとクシャミが伝わっていく・・・。
 「あれ?あなたもですか?」
 春、不用意に扉及び窓を開けるべからず。
 会社は大枚をはたいて、入り口に花粉除去装置を設置すべきだ。
 ・・・・そんな機械があるかどうかは知らないが。
 春の花粉症患者は気が荒い。
 絶えず目の痒みに襲われ、クシャミにチカラを使い、鼻水で鼻が荒れ、以上の症状のためにロクロク夜も眠れない・・・。
 こうして3ヶ月近くもイライラし続けて生きている花粉症患者は、なにかと云うと戦いを仕掛け始める。
 ではここで、花粉症患者N海がよく吐く台詞を例にあげてみよう。

 @「ああ〜・・・飛んでるよ」
 A「ふぇ〜くしょい!!ぬああ〜、チクショウめ!!」
 B「ぜっってえ負けねえ」
 C「っていうか、マジしばく!マジしばく!」
 D「花粉症休暇よこしやがれコンチクショウ!」

 もう花粉症を発症している時点で、あの悪魔に敗北をしているのだが、花粉症患者N海はそれを認めない。
 むしろ戦いを仕掛けている。
 実際に空気中に向けてパンチを放っている。
 花粉をやっつけるためならば、北斗神拳の継承者になってもいいとすら思っている。
 ケンシロウならば、きっと空気中の花粉を全て「ア〜タタタタタタタタタァ!!」でやっつけることが出来るに違いない。
 そうだ、僕はケンシロウになるべきなのだ。
 まずは神谷明氏のところに弟子入りすべきだろう。
 それが駄目なら代々木アニメーション学院に入学だ。
 そしてある時、花粉症患者は戦うことを諦める。
 手に持ったボールペンを書類の上に放り出し、「あ〜こりゃ、駄目だぁ。仕事になりゃあせんよ〜」と云い出す。
 こうなったら、もう誰も花粉患者の無力化を止めることは出来ない。
 ただニョキニョキと生えている押し入れの中のマジックマッシュルームの如く、虚ろな瞳でゆらゆら揺れている他何一つ能力のない無力者と成り果てるのだ。
 ああ〜。
 僕はワカメ〜。
 カツオの妹ワカメ〜。
 などと云いつつ、春を漂うしかないのだ。
 今年も僕は春を戦い、春に破れ、春に漂う。
 後に残るは大量のティッシュの残骸。
 ああ・・・春よ、マツケンよ。
 サンバで花粉症が治らないか、と、今日も一人マツケンサンバを踊るのであった。


(先日、初めて花粉症の薬というヤツを飲んで見ましたが、あっと云う間に意識を失いました。まるで眠気に負けた修羅場の漫画家のようでした。怖るべし!!) 



A Theatrical Campany yakoudou