| 其之壱百参拾『なまはげ、実演中』の巻 |
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なまはげを見たのだ。 それはとある休日。 ふらりと出掛けたデパートの出入り口に、とある看板を発見した。 『なまはげ、実演中』 なまはげ・・・・・実演中? なまはげとは勿論、あの「なぐごはいねがぁ〜!」でお馴染みの鬼であろう。 秋田県出身のあのなまはげが何故に関東圏に・・・? よくよく看板を見てみれば、小さく『秋田フェア開催中』の文字。 なるほど。 稲庭うどん・南部煎餅などの物産展を盛り上げる為に、わざわざなまはげ様がやってきて下さったと云うわけか・・・!! 東北生まれとは云え太平洋側で生まれ育った僕は、秋田を訪れたのも数回しかなく、なまはげを生で見たことも勿論ない。 生なまはげ様だ。 こんな関東圏でよもや生なまはげ様に出会うことがあろうとは・・・。 既にいい大人ではあるが、僕も是非ともそのイベント的なものに参加し、なまはげ様に「なぐごはいねがぁ〜」と詰め寄られなければなるまいて!! ああ〜、なるまいて! 僕は想像した。 きっと秋田フェアの会場に、秋田の昔ながらの民家が再現されており、イベント参加者はその囲炉裏端で生なまはげ様の登場を待つのだ。 程なく、木戸がぶわわわわわわあああああ〜〜んん!!と開け放たれ、真っ赤な鬼の面・真っ青な鬼の面をかぶった村の気のいい青年団の人が、「なぁ〜ぐう〜ごぉ〜わ〜い〜ね〜がああ〜!!」と野太い声を出しながら飛び込んでくる。 背中にはミノ。 片手に出刃包丁。 片手には桶。 目を爛々と輝かせた鬼が子どもに詰め寄る!! 地元秋田の子どもですら大号泣であるというのに、関東の子どもなんかさらに大泣きだ。 なまはげ様の発する言葉は秋田の方言なので、関東の子どもには最早意味のわからない呪文に聞こえるに違いない・・・。 しかし子らよ。 なまはげ様は、子どもたちを守ってくれるのだ。 強い子どもにしてくれるのだ。 大人になったらきっと、そのことが解るハズだ・・・。 僕はうんうんと頷きながら、その生なまはげイベントに参加するために歩を進めた。 『なまはげ、実演中』の文字が段々と近づいてくる。 そしてその看板の真向かいに・・・・・。 なまはげ。 なまはげが・・・・立っている。 ミノを背に、包丁片手に、桶を持ち、そこに・・・・立っている。 ん? これが・・・・? 『なまはげ、実演中』・・・・・??? ほかほかの日の当たる場所に、鬼、佇む。 な。 なまはげ様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!! いかがなすった、そのお姿!!? 「なぐごはいねが〜!」と叫ぶでもなく、ただそこに立ちすくんでいるなまはげ様!! なまはげ様もどうしていいか解らないご様子で、その間を通っていく人々をカッ!とした目で見つめておられる・・・。 出来れば駆け寄りたかった。 一緒に写真を撮ってもらいたかった!! しかし・・・。 関東の人々・なまはげ様、双方なんのリアクションもないこの状況で、僕は勇気を出すことが出来なかった・・・!! 「なまはげ様!!お会いしとうございました!!」 とは、とても云えなかったのだ・・・!! ああッ。 僕の意気地なしッ!! せめて目にそのお姿を焼き付けておこう・・・と、なまはげ様を見つめる。 すると。 なまはげ様が「クアッ!!!」と、振り返った!! なまはげ様と目が合う・・・!! 『な、なまはげ様・・・!!』(七海、心の声) 『あ、明美さん・・・!!』(なまはげ様、心の声) と、そんなやりとりがあったかどうかはともかくとし、気がつくと我々は、お互い目を外すタイミングを完全に逃してしまっていた・・・。 僕はなまはげ様と見つめ合ったまま歩を進め、やがてなまはげ様の前を通り過ぎた。 見知らぬ地にやってきてしまって、勝手の違いに戸惑っているなまはげ様の姿が愛らしく、僕はちょっとだけ笑ってしまった・・・。 『なまはげ、実演中』か・・・。 物産展で餃子焼いてんじゃねぇんだから。 (しかし、なまはげ様に対してキャラクターショー並みのあの扱いは酷いものだ。仮にも鬼なのに!!せめて「なくごはいねが〜!」と叫ぶことの出来る環境を、整えて欲しいものです。ええ、切に・・・。子どもぽかーんとしてましたからね・・・。) |