其之壱百参拾蜂『一休み、一休み〜湯の浜温泉旅行記〜』の巻



 温泉が・・・。
 温泉が僕を呼んでいるのだ。
 『ドッドドドドドどっどおおおおおおおおおおおいいいイイイイイいっっっ!!!!』
 そこまで呼ばれては仕方あるまい。
 七海家は今年も家族揃ってのほほんと温泉旅行に旅だったのであった。
 山形県は湯の浜温泉。
 目の前にドドドコド〜ンと日本海の広がる絶景のお宿への一泊旅行だ。
 太平洋側育ちの僕にとって日本海は滅多に目にするものではなく、思わず海が一望出来るロビーに仁王立ちし「穫ったど〜!!」と(濱口)まさるさん化。仲居、苦笑。
 「ではお部屋に御案内いたします」
 「・・・・え?」
 玄関で履き物を脱いで、云われるがままに裸足で廊下を歩かされる僕。
 (ええっ!?これってイジメ?七海家に対する恐るべき陰謀の一種なのかっ!?)
 しかし、仲居さんの足下を見れば、また当然のようにこの人も足袋一丁だったのだ。
 この宿、驚くことに旅館では当たり前の『スリッパ制度』というものが存在しない。
 温泉までの道のり、エレベーターの中、ロビーも勿論、裸足でぺたぺた歩行可能なのだ。足袋なども用意されているのだが、もとより裸足好きの僕は、何時でも何処でも自らの足の裏でカーペットをホショホショ踏みしめておった。うう〜ん、極楽ゥ。
 お湯は無色透明無臭の温泉。
 がしかし、海の近くらしく、口に含めばしょっぱ〜い味がするのだった。(温泉を飲む場所があるのだ!)
 んんん〜。硫黄泉大好き!腐った卵の匂い大好きな僕にはいまいちウケの悪いお湯だが・・・それでもしばらく沈めばドドドド〜っと汗の吹き出す温泉効果!発汗作用万歳!母さん、僕もう汗だくッス!!
 ぬ!?アレはなんだ!?
 浅く張った温泉の中に、木で出来たビーチチェアーのようなものが入っている。
 んな〜ぁる。
 あの出っ張ったところに頭をのっけて、そこに仰向けに寝ころび寝湯を堪能するわけであるな。
 幸いにも大浴場はハハと僕の貸し切り状態。
 さっそく寝ころんでみる。
 「え〜、ここに頭をのせ・・・ふごごごごご・・とぷん・・(しばし無言)・・・・グハァ!!」
 殺す気くぁ!!!(激!!)
 身長が足りず沈む俺!!一人で溺れ一人で藻掻くその姿は、まさに一人殺人事件!!温泉だけに出動するのは古谷か木の実か!?
 僕が「グハァ」などと叫んでいる間も、ハハはのほほんとお湯に浸かり「あら〜?何してるの〜?」などと腰も砕ける一言を投げかけるのであった。いや、母さん、僕、今ちょっと死にかけましたから・・・。(爆)
 その後も僕は二度この風呂に挑戦し、二度湯船に沈んだのであった。
 懲りろ、俺!!
 そしてこの宿の宿泊中、最も我々の度肝を抜いたのは食事であったのだ・・・!!
 一言で云えば「んっ!んま〜〜〜〜〜いい!!」。
 海辺の旅館とのことで『刺身ボ〜ン!!頭ゴ〜ン!!』みたいな料理だろうと半ば諦めていた生魚嫌いな僕であったが、目の前に並んだのは、上品で薄味、あちこちに工夫の凝らされた体に優しい料理たちだった・・・!
 中でも面白かったのは『豆乳鍋』。
 豆乳をグツグツ煮て、最初に膜をすくい上げ湯葉をいただく。その後、サーモンとお野菜を投入!!さらに味噌を溶いて、フタをしさらにグツグツ煮込む。
 豆乳を飲めば三歩で腹を下すと評判の僕であるが、味噌豆乳汁のまろやかさにすっかり魂を抜かれ、「ああ〜。お腹クダしちゃうよ〜。参ったな〜。うまいな〜。も〜。クダしちゃうよ〜ぉ」とかなんとか云いながら、すっかり完食てしまった。
 その他にも、アボカドとイクラをのせて焼いた白味の魚にパンプキンソースをあしらったものや、新鮮なアイナメの刺身などが、次々に我々を魅了し、最後に出てきたのはお味噌汁。
 しかしこの味噌汁もただ者ではなかった・・・!!
 このさっぱりとした味わい・・・底を掬えば微かにひっかかるこの透明なシャリシャリは・・・!?
 「だっ!!ダイコンオロシ!?」
 味噌汁にダイコンオロシが入っておるだよ、おっかさん!!
 これがまた腹一杯の胃に、すうっと染み込む優しい味だ・・・。仕上げにさくらんぼプリンを喰らって夕食終了。いや、食事がうまいと人の腹はクラインの壺になるものだ。この夜の僕は、さながら竜堂終くんと云えよう。
 「明日の朝なんですが・・・」
 と、仲居さんが切り出す。
 「元気卵という地元の卵を使った料理をお選びいただけます」
 な、何ぃ!?元気卵とな!?ソイツはさぞかし元気なのだろうな!?
 「生卵、茶碗蒸し、目玉焼き、だし巻玉子からお選び下さい」
 ハイッ!!(旅館の朝と云えば)「だし巻玉子でッ!!」
 そう答えた僕の顔は、誰よりも凛々しかったと人は語る・・・。
 そして翌日の朝食時に出てきただし巻玉子のうまかったことと云えば!!ビバ!!ビバ、だし巻!!万歳!!ばっ、んざ〜い!!
 仲居「卵、いかがですか?」
 僕 「いやあ、だし巻で良かったッス!!」
 仲居、苦笑。
 湯の浜温泉。
 ロビーでも部屋でもお風呂でも、果てはエレベーターの中からも海が見える徹底した造り。海も優しく穏やかで、いい時期の日本海を堪能することが出来た。
 お湯に沈み、豆乳に下し、それでもまた来たいと思う場所となった・・・。
 ビバ!!湯の浜!!
 仕事に疲れたらまた来よう・・・。


(湯の浜温泉の近くにある加茂水族館にはクラゲばかりのコーナーが存在する!!様々なクラゲを連続して見続けた僕は、そのクラゲの持つ魅力に癒やされ・・・・・るかコノヤロォオオオオオオオ!!!!浮遊感溢れるその動きに三半規管をやられ、すっかり気持ち悪くなってしまったのだった。オマケに餌の小魚とか腹の中に透けて見えてるしぃ・・・。あああっ!!気持ち悪いっ!!クラゲマニアの方にはオススメのスポットです。ちゃんと他の魚や可愛いアザラシの赤ちゃんなんかもいるので、是非とも近くに行った際にはお立ち寄り下さい。僕は・・・やっぱし毛のある生き物のほうがいいなぁ・・・)



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