其之壱百獅拾傘『3年5組ななうみの夏日記』の巻



 モケモケ草を探しに山へ行った。
 モケモケ草とは、水の綺麗な山のどこかに生えていて、雨が降ると「モケ〜モケ〜」と叫ぶ植物である。(もしくはお母さんが恋しくなった時に叫ぶ、という説もある。)
 足にはビーサン、頭に麦わら帽子、念のためポッケにチョコを入れておく。
 山の入り口には何故か真っ白頭の婆さんが座っていて、「こ〜ぉのぉ〜山にぃ〜足を踏み入れちゃ〜ぁいかん!」などと云ってるが、とりあえず無視して先に進むとしよう。
 婆さんが左足にくっついててちょっと歩きづらいが仕方あるまい。
 噂によるとモケモケ草は、水辺に生えているらしい。
 しかも日の届かない場所にひっそりと生えているから、ちょっとやそっとじゃ見つからないぞ、と煙草屋のオッサンが云っていた。
 オッサンはなんでも昔、一度だけモケモケ草を見たことがあるのだそうだ。
 煙草屋になる前は冒険野郎だったと云ってはばからぬオッサンは、ある日山で道に迷い、その際に偶然水辺の洞窟で幻のモケモケ草を発見した。
 何故、それがモケモケ草だと解ったのか・・・、何故か知らぬがその名が頭の中に浮かんできたのだとオッサンは云う。
 しかしそれを手にしようとした瞬間、モケモケ草は激しい叫び声をあげ、それを聞いたオッサンは気を失った。
 きっとモケモケ草がどうしてだかオイラっちにむしられるのを拒んだんだろうなあ、とオッサンは語った。
 僕はオッサンがトイレに行った際に手を洗っていなかったからだと思ったが、そこは大人のアレなので黙っていた。
 そんなこんなでモケモケ草だ。
 今日の夕飯はスキヤキだと云うから、それまでにはなんとしてでも帰らねばならない。
 左足にくっついている婆さんが、「おおおお〜、山の主が来るぞ〜」と叫ぶので、アレっと思ったら先の茂みのほうから爺さんが出てきた。
 「オマエ、モケモケ探しておるのか?」と聞くので、そうだと答えると、爺さんはウンウンと頷きカゴの中に入っていた山菜をくれた。
 「いつか役立つからもってけ。あと、この婆さんはウチの婆さんだからもらってく」と、僕の左足から婆さんをひっぺがしてまた山の中に入っていった。
 僕は一人になった。
 さてどっちに行けばモケモケ草を見つけられるのかと考えていたら、手に握っていた山菜がショボショボと動き出した。
 オマエの指す方向に行けばいいのか、と問えば、「ソウダ。ソノカワリ、俺ノコト天ぷらニシテクレ」と云うので、山菜の天ぷらは嫌いだと答えて山菜を捨てた。
 山菜はしばらく「おひたしカ!?おひたしナライイノカ!?」と叫んでいたが、やがてそれも遠く消え去った。
 とりあえず山菜の示したほうに行ってみよう。
 すると枝振りのいい木の枝にロープを引っかけている学生に出会った。
 とりあえず山で会った者のたしなみとして「コンニチハ」と声をかけ、通り過ぎる。
 しかし行けども行けども水辺は現れない。
 あのヤロウやはりガセだったかと、憤りつつ先に進めば、小さな祠が姿を現す。
 ボロボロと崩れかけの木の扉を開けると、そこにランニング姿のちっさいオッサンが体育座りで座っており、僕と目が合うとニヤァと笑った。
 「あんたモケモケ草探しに来たんかね」と云うので、そうだと云うとケケケと笑った。
 「いいかねあんた、そんな考え甘いよ。簡単にモケモケ見つかるわけネエダろ。だいたいそのビーサンって何だよ?いいか?本当はモケモケ草なんてこの世にはないんだよ。だけどロマンとか夢とかないと人は生きていけないから、こうやってオレッチが話題を提供してあげてんだよ。まぁ云うなればモケモケ草ってえのは、一人一人の心の中に生えているのかも知れないなぁ・・・」。
 僕はランニングオッサンの首の骨をゴリっとやってひっ掴み、途中で自殺途中の学生と、弱って死にそうな山菜と、ついでにジジイとババアも回収して、山を下りた。
 さあ、忙しくなってきたぞ。
 まずジジイとババアを鬼嫁の待つ家に放り込み、うどん屋に山菜を売っ払い、自殺途中の学生にグラビアを買い与え、ランニングオッサンを見せ物にして金を稼ぐ。
 明日の小遣いを稼いだ僕は、オッサンをドブに捨て、家に帰ってお母さんの作ったスキヤキ食って寝た。
 今日も暑かった。


(ナイナイ結成15年記念デートを楽しみにしていた僕は、開始10分前からテレビ前30pのところにスタンバイ。ひたすら大盛り上がりの1時間を過ごしました。(笑)しかも最後にはホロリとさせやがって・・・チクショウめ!手をつないで歩くって可愛いなあ〜と思いつつも、僕が最も好きなシーンはお姫様抱っこから地面に降ろす際の、お互いの気の使い方でした。マニアックで申し訳ない・・・!)



A Theatrical Campany yakoudou