之壱百七拾肋『子どもの名前に・・・』の巻



 月曜日。
 オネイチャンが子どもを生んだ。
 「七って漢字可愛いわよねっ。アタシ、子ども生まれたら絶対七美ちゃん(僕の呼び名。彼女だけは何故か僕をこう呼ぶ。)みたいな名前付けるからっ!!」
 そう云っていたオネイチャンの生んだ赤子は股にとあるモノが付いていた。
 「男子の場合はどうするんです!?」
 「大丈夫よ七美ちゃんっ!!アタシ、負けないんだから!!」
 「まさか『七美』を貫く気では・・・!?それはいくらなんでも無茶ッス!!小学校でイジメられるし、身体測定とかの時に間違って女子のほうに書類が混じってしまうッス!!」
 「フッフッフ。七美ちゃん、アタシが何も考えてないとお思い!?」
 「えっ?と云うと?」
 「男の子の場合は・・・『七男(ななお)』よ!!!!!(ババ〜ン)」
 趣味悪りぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
 ブラックジャックの本名クロオくらいセンスのない名前ッス!!
 気の優しいオネイチャンの旦那は「ははは。ねぇ。でも、いいんじゃない?」とあくまで鷹揚だったが、僕をはじめとして我が友人たちの猛反対を受け、彼の名前は文字違いの『奈々雄(ななお)』に落ち着いた。
 良かった。
 七人の男・・・・略して『七男』にならなくて。
 だいたい意味わかんないし、小学校で「自分の名前にどんな由来があるのか調べて来なさい」とかいう宿題が出たときに『七男』はどうすればいいと云うのか!?
 「お母さんが七って漢字が好きで、ほんとうは七美が良かったんですが、僕が間違ってマタにアレでソレをくっつけて生まれてきたので、やむを得ず『七男』になりました」
 お母さん・・・僕のことが嫌いなの!?
 七男の瞳には涙がいっぱい溜まっていたに違いあるまい!!
 そして世を儚んだ七男はそのままコケイン中毒となりピ〜ヒャララ。今ではリハビリをしつつ叔父の経営するヒジキ農園で静かに暮らしているとのこと・・・、最早意味も解らない。
 我々は、名前が原因で脳にお花が咲いたかも知れない青年の未来を救ったのだ。
 かく云う僕も、生まれ出た際に名前の候補が二つあり、結局は字数の良さで『明美』に決まったのだが、もしかしたら『舞子』になっていたかも知れなかったのだ。
 「お母さんは舞子が良かったのよ〜」
 と、僕のハハは云っていたが、なるほど僕も舞子が良かった。
 そしてみんなに『舞ちゃん』と呼ばれ、『カルラ舞う!』を読んで「実は双子の姉妹『しーちゃん』がいるのでは・・・!?」と翔子探しの旅に出る・・・と。
 名字『扇』じゃないのに!!
 駄目だ!!
 やはり明美で良かったんだ!!
 そう思おう。
 名字と合わせて韻を踏む。あ、そらそら。
 漢字は違えど、僕に由来のある名前をさずかった『奈々雄』よ。オマエは一体どんな人間へと成長して行くのだろう。
 そんな思いに胸弾ませれば、受話器の向こうから小さく聞こえるオーディエンスの声。
 「裸足で人を踏みつけるような人間じゃないか・・・?」
 「いや、足技で人の背中やお腹に蹴りを入れる人間じゃないか」
 「要は足蹴だな」
 「サッカー選手か格闘家に育てよう」
 貴様ら・・・・。
 聞こえネェと思って好きなこと抜かしやがって。
 S木A井U原O田ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
 全台詞名前割れてんだよコンニャロウがあああああああああああああああ!!!!
 お望みなら今すぐ正座させてグリグリ踏んでやってもいいんだぞ、アァ!?
 受話器に叫べば、遥か北の地で「わ〜!!わ〜・・・わ〜・・・・・」と逃げまどう者どもの悲鳴がどんどん遠ざかって行くのが聞こえる。
 「奴ら何処に行きやがりました?」
 と聞けば、
 「う〜ん、ちょっと待って。あ、いたいた。マンションから走って四方八方に散っとるわ。ありゃ捕まえられんね・・・」
 何故、そこまでやる北の民。
 その後彼らは色んなお店から焼き鳥だのビールだのを各々買って帰ってきたらしい。
 なにはともあれ、奈々雄に幸あれ!!


(しかしA井が買って帰って来たのは、マーブルチョコだった。何故・・・?)