其之壱百八拾七『16号車』の巻



 「○時◎分の新幹線の禁煙車の自由席切符を下さい・・・!!」
 そう云って自由席特急券の切符を買った伝説の女・吉田が新幹線に乗ってやってくる。
 北の地へやってくる。
 僕が実家へ帰っている最中、たまたま吉田も北へ家族旅行の予定があるのだと云う。
 僕の地元の駅に、吉田の乗った新幹線が止まるというので、笹かまを持って見に行った。
 ハハに「吉田見る〜?」と聞いたら、「見る〜」というのでハハも連れていく。
 『何号車に乗ったのだ?』
 と、メールすれば、
 『16号車の16番B席だよゥ』
 とのこと。
 ぬ?
 果たして吉田の乗る新幹線には16号車などあったろうか・・・?
 オヤジに問えば、不審な顔をしておる。
 何はともあれ駅に行ってみる。
 新幹線の停車時間はわずかに1分。その間にこの笹かまぼこを手渡さねばなるまい。
 おお。
 まさに吉田に聞いていた新幹線の表示が電光掲示板に・・・!!
 ん??
 じゅ・・・十両編成??
 電光掲示板には堂々と十両編成の文字が・・・!?
 十両編成と云うことは、10号車までしか無いと云うこと。
 10号車までしか無いと云うことはつまり・・・16号車が無ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!
 「な、何ィ!?」
 新幹線到着までわずかに4分!!
 早く正しい号車を確認しなければ・・・!!
 『auお留守番サービスです・・・』
 電波が届かなあああああああああああああああああいいいいいいい!!!!
 高速でメールを打つ!!ガツ!ガツ!ガツ!!
 『十両編成だよね!?』
 ハハがのほほんと「きっと6号車と間違えたのよぉ〜。6号車のとこにいましょ〜」とテクテク歩き出す。
 な、成る程・・・。その可能性は極めて高い。
 なんせ自由席特急券を買うために身分証明書を見せようとした女・・・!!
 新幹線のデッキをテラスのようなものだと思っていた女だ・・・!!
 まさに伝説だ。
 ピピピ!!
 おお、返信が!!
 『そうだよぅ〜』
 そうだよぅ〜じゃネェんだよオオオオオオオオオ!!!何処に乗ってるかが知りたいんだっつうの!!
 電話を掛けてみる。
 『もしもし〜』
 は!!つながった!!
 「16号車って何だ、コンニャロウ!!」
 『あ。あれ?16号車って書いた??』
 「本当は何号車なんだ!?」
 『あ〜、あのね〜6号車だよ〜ゥ』
 ハハ、ビンゴ!!
 『座ってるとこが16番なんだよ〜』
 んなこたどうだっていいんだよ!!無駄にのほほんとしやがって!!時間に間に合えと店員のオバチャンに鋭い眼光を投げつけつつ笹かまを買った僕の立場を考えろ!!デッキに正座してよく考えやがれ!!
 無事に我が街の駅に滑り込んで来た新幹線の扉が開くと、またしても新幹線伝説を作ってしまった吉田がウヘヘと笑いながら立っていた。
 すかさず笹かまを差し出せば、お返しにお菓子の入った包みをくれた。
 「あらあらみっち〜ちゃん、久しぶりねぇ〜」
 常にのほほんとしているハハが、今までのハプニングがウソだったかのようにのほほんと話しかける。
 くそぅ、無駄に焦った僕だけが汗だくだ・・・!!
 僕のハハと「ウヘヘ〜」と話していた吉田が去ったホームで、吉田が残した包みを見れば、家族の数の水あんみつともうひとつ。
 何故か・・・。
 「・・・・芋けんぴ・・・・」
 何故、こんな北の地まで来て吉田が僕に芋けんぴを手渡そうとしたのか・・・。
 謎だ。


(吉田はそのままさらに北へと向かいました。さ〜らば〜。)