其之弐百弐『イルミネーションをつくる者たち』の巻



 11月ともなると街のあちこちでイルミネーションが光り出す。
 クリスマスが近くなれば、街や店だけではなく一般のご家庭でも素敵なイルミネーションを見ることが出来る。
 いつの頃だったであろうか、僕もイルミネーション作りに参加しかけたことがある。
 「そんなイルミネーションを俺も作ってみようと思う」
 何故か急に呼び出されワケもわからず正座させられた我々に、呼びだした張本人が云ったのはそんな一言であった。
 「・・・は?」
 「・・・どゆこと?」
 我々は困惑した。
 「え〜っと・・・それはアレかな?A井くんちのマンションのベランダんとこに、ちょっとしたイルミネーションを作ろう、と、そういうことかな?」
 一足先に困惑から抜け出したS木がA井に問いかける。
 「阿呆ッ!!(バシィ!)」
 「ハウッ!!(ドシィ!)」
 いきなりの張り手!怯える我々!A井は本気だ・・・!!
 「誰がベランダに、などと云った!?」
 「え?じゃ・・・いったい何処に?!」
 A井はニヤリと笑ってこう云った。
 「部屋の中、だ!!」
 この時、我らの心は一つになった。
 誰もが口をきかなかったが、その心にあるものはたった一つのツッコミだった。

 『阿呆は貴様だあああああああああああああああああ!!!』

 「え?A井くん、何云ってんの??部屋ん中を飾り付けるってこと?」
 「いや、飾り付けはせん」
 「は?」
 「なんのために君たちに集まってもらったと思っているんだ」
 「な、なんのためですか・・・?」
 「何も云わずにコレを持て」
 ペンライトを配られる我々。
 「さ、それを右手に持って窓に向かってタテ一列に並べ!!小さい子順だぞ!!」
 ワケもわからず一列に並ぶ我々。
 「そのまま右手を真っ直ぐ上に!左手は腰に当てよ!!」
 ビシッ!ピタッ!
 「では、これより!人間イルミネーションの練習を行う!!偶数の者は右からペンライトを!奇数の者は左からペンライトを出せ!!右斜め45度からだ!!」
 エエ〜・・・ッ!!め、めんどくセェエエエエエエエエエエエエ!!!
 無論、室内はブーイングの嵐。
 「なんのためにそんな面倒臭ェことをしなきゃいけネェんだ〜!!」
 「俺たちは断固、反対するぞ〜!!」
 「飯喰わせろ〜!!」
 様々な声が飛ぶ。
 しかしそんな者達をA井は一喝した。

 「うるセェ!!『なんのために』だと?そんなの・・・俺が見たいからに決まってるじゃろがああああああああああああああああああああああいいいいいい!!!」

 ・・・・・・・・。
 「さ、帰るか」
 「そうだな・・・」
 「帰りに飯喰ってくヤツ〜」
 「あ、は〜い!は〜い!」
 ペンライトを捨てた者達は、コートを着てゾロゾロと部屋を出ていく。
 「ま、待て!オマエたちはまだこの企画の壮大さに気付いていないんだ!!俺たちはもしかしたら歴史の1ページに名を刻むことになるかも知れないんだぞ!?」
 叫び虚しくA井を残して扉は閉まった・・・。
 我々は一階までエレベーターで降り、そのままゾロゾロと飯会場へ向かうべく歩き出した。
 ふと気になってA井の部屋を見上げると・・・。
 「あ、あれは・・・!!」
 真っ暗に電気が消されたA井の部屋より、両手にペンライトを握り、ペカペカと光る電飾を巻き付けたイルミネーション人間がベランダに飛び出して来たのだ!!
 「オマエたち!!俺の人間イルミネーションに感銘を受けた者は、今からでも遅くはない!戻ってこい!!」
 そう叫んだかと思うと、イルミネーション人間は、こともあろうか全身をペカペカさせたまま不思議なロボットダンスめいたものを踊り始めたではないか!?
 カキコキ!ペカペカ!カキコキ!ペカペカ!
 ・・・しかも音楽も何もない吹きさらしのベランダで・・・。
 それは最早イルミネーションダンスマンではなく、ただの変な人。
 なんなの?宇宙に信号でも送ってんの!?
 それを目にした途端、我々は「わ〜」と叫びながら一目散に逃げ出した。
 その後、彼がいつまでイルミネーションマンと化していたのか・・・誰も知らない。


(良い子も悪い子も真似しないでください。ただの阿呆です。ちなみにその際に彼が来ていた服は全身黒タイツだったそうです。しかも全員分用意していたらしいという話を聞いて、本当にあの時逃げ帰って正解だったと、語り合いました。)