其之弐百四『花火玉と売店』の巻



 先日、大変怖い夢を見た。
 怖い夢と云っても、巨大蛾にぶわっさぶわっさと追いかけられたとか、謎のオッサンにフラメンコを踊ることを強要されたとか、そういう夢ではない。
 是非とも聞いておののいていただこう。

 夢の中、僕は暗い闇の中、一歩の白い道の上にいた。
 僕の夢は全てがカラーであるので、これもつまりは白と黒の色がついた夢である。
 夜道、というよりはディズニーランドのアトラクションの中の暗闇に近い。
 僕の前にはたくさんの人が並んでいた。
 僕の後ろにもたくさんの人が並んでいる。
 何故かみんなセーラー服だの詰め襟だのの制服を身につけていた。
 「ああ、だから暗いんだな」となんとなく思う。
 この行列は一体何なのか・・・。
 目の前に広がる夜空いっぱいに、突如大きな花火があがった。
 色鮮やかな赤や、黄色や、青や、緑や・・・いくつもいくつも大きな花が咲いては散って消えていく。
 行列が、その花火の打ち上げ場所に向かってゆっくりと進み始めた。
 僕の前にいる人は誰だろう。
 現実では見たこともない人だが、何故かこの世界では友達ように僕に話しかけてくる。
 「外れるといいね」
 と、彼女は云った。
 「なにが?」と聞く。
 「これから僕たちは空からパラシュートで落とされるんだよ。腕に花火の玉を抱いてね。大抵はみんな一緒に爆発するけど、100人に4人くらいは爆発しないで生き残れるから。でも一体どの玉が爆発しないかはわからないんだ・・・」
 そうか。
 あの夜空に無数にあげる花火はそういうことだったのか。
 そして僕もいずれはこの行列の先端に辿り着き、大きな花火玉を持って空から落とされるのだ。
 なんの柵もないくせに、僕は行列から抜け出すことは出来ない。
 なんのくくりもしていないくせに、花火玉は決して手から離れない。
 抱えた腕にぴたりとくっついて離れず、そして時が来たらその花火玉が閃光を放って爆発し夜空に花を咲かせてから、僕ごと消えるのだ。
 これは死の行列だ。
 100人に4人くらいは爆発しない、というわずかな希望はあるものの、僕に抱かされるのは必ず爆発する花火玉なんだと何故か確信している。
 もうすぐ僕は消えるのだ。
 そろそろ花火の打ち上げ場所にほど近い場所だ。
 見上げると、空からパラシュートがゆっくりと振ってきた。
 回した両手がぎりぎり触れ合うくらいの大きな花火玉を抱えた女の子が、水辺に辿り着くところだった。
 セーラー服を着た女の子。
 彼女は100人に4人の生き残り組だ。
 喜んでいるのかと思えば・・・そうでもなかった。
 彼女は呆然とした顔で、夜空に浮かんでは消える花火を見つめていた。
 「なんでわたしだけ生き残ってしまったんだろう・・・」
 彼女の唇がそんな風に動いた。
 友達がみな爆発して死んでいく中、行列を外れ真っ黒な水辺に降り立った彼女は、一体これからどうするのだろう・・・。
 行列の先端が見えてきた。
 不思議な建物の中に行列の先端にいる人々が吸い込まれていく。
 僕も建物の中へと足を踏み入れる。
 行列はまだ続いていた。
 が、しかし・・・何なのだこの建物の中は・・・。
 「ば、売店がある・・・!!(土産物屋の)」

 ・・・・・・そこで目が醒めた。


(売店では目玉のプリントが施された黒のTシャツを売っていました。っていうか、これから死にに行くのに何故売店なのか!?・・・謎です。)