其之弐拾充『つけ麺の館』の巻



 練習後にとあるラーメン屋でつけ麺を喰う。
 それがここ最近、僕とよちさん(夜光堂の吉田さん)の間でのちょっとしたブームだ。
 僕とつけ麺のつきあいは長い。
 あれは小学生の頃、まだ北で真っ赤なほっぺをしながらそこいらを走り回っていたあの頃・・・たまたま足を踏み入れたラーメン店『会津っ○』で、僕はそこで初めてつけ麺と出会った。
 『少々辛いのでお子様はご用心下さい』的な文字がかかれたソイツ・・・。
 なにィ!?冷たい麺をあったか辛い汁で喰うだとォ!?
 いまでこそメジャーなつけ麺だが、その頃の北では目から瓦のめずらしメニューであったことは間違いない。
 その文字を初めて見た僕のココロはときめいた。
 キラキラキラキラときめいた。
 何故なら、僕はざるうどんが好きだ。
 それと同じ形態でラーメンが楽しめるなんて・・・なんてすばらしいメニューなんだ!!
 これは喰うしかあるまい。
 「明美はなににするの〜?」
 と、ハハに問われ、幼子は答えた。
 「つけ麺で!!」
 ジェントルな感じで答えた。
 そして出てきたつけ麺に、僕はココロが震えた。
 こんもりともられた麺!麺!麺!そして・・・麺!!
 湯気の出る汁には、細かく刻んだチャーシューがちりばめられ、底のほうを箸でスッとすくえば、シナチクが浮き出てくる。
 なかなかほぐれない麺に苦戦しつつも、我はどうにか一口めの麺をスープにくぐらせた。
 むしゃり。
 「う、うめええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
 な、なんだ、この得もしれぬ味は!?
 そして唇がひりひりと腫れ上がるような感覚。
 オオ、これは・・・この辛みは、ラー油だな!?
 ラー油うまし!!
 餃子のタレに恐るべき量のラー油を投入する現在の僕の基礎が、今この時つくられたと云っても過言ではあるまい。
 うどんだろうがラーメンだろうが、暖かい汁の中に入った麺が苦手な僕だったが、このつけ麺スタイルならば飽きずに最後まで麺をおいしくいただける!!
 それどころか「ん〜、もう一杯!」とオーダーしてしまいそうだ。
 その後、どこのラーメン店へ行っても、メニューにつけ麺をさがすようになってしまった僕であるが、最初に食べたつけ麺の味を脳みそに刷り込んでしまったために、幾度とない悲劇に見舞われることとなった・・・。
 幼い頃食べたつけ麺の味→辛くてうまい→つけ麺は辛いもの。
 この図式が染みついていた僕には考えられなかったのだ。
 この世に辛くないつけ麺があると云うことを・・・。
 「なっ!?このつけ麺辛くないぞ!?」
 「う、うん。辛くないが?」
 「何故だ!?つけ麺はすべからく辛いものではないのか!?」
 「・・・どうしてそう思い込むにいたったんだ??」
 「エエイ、ラー油を貸せィ!!投入してやるウウウウウウウウウ!!!」
 「ヤメロー!!ラーメン屋の職人さんに怒りの鉄拳を喰らうぞオオオオ!!!」
  世の中は広かった。
 そうだ、この世には様々な味のラーメンがあるのであって・・・つけ麺だって例外ではないのだ。
 さっぱり和風ダシのものだって・・・そりゃああるアル。
 今回、よちさんち周辺で見つけたつけ麺の店(いや、つけ麺メインではないのだが。)は、醤油味・塩味・辛味と三種類のスープがあり、大変重宝している。
 僕はむろん辛味しか食していないが・・・。
 これからも僕は辛いつけ麺を探して生きていくだろう。
 しかし時々思う。
 僕を感動の渦に巻き込んだあの北のつけ麺をもう一度食べてみたい、と。
 今でも僕はアレをおいしいと思えるだろうか。
 きっと思える。
 アレは、僕のつけ麺ルーツの原点であるのだから・・・。


(しかしそれを食べるには福島県までいかねばなりません。そしてそのメニューが未だにあるかどうかもわかりません。しかしいつかそのラーメンだけを喰いに北へ行ってみたいと思うのです。)