其之弐百拾士『煙探知機設置』の巻



 本日はよちさんち(夜光堂の吉田さん宅)で趣味小部を書く。
 家主は「我が帰るまでにドラクエのレベルをあげておくように」と云い残し、先程どこかへ出かけていってしまった。
 先だって「トルネコイヌが全滅した・・・」と語っていたよちさんは、一体いまどこまでドラクエを進めているのだろうか。そして僕は一体どれくらいキャラをレベルアップしておけばいいのだろうか・・・?ミッションを一切クリアせず、ただただフィールドでレベルをあげ続け、よちさんがミッションをクリアする際に、
 「もう大ボスすらも俺の相手にあらず!ふぉ〜ふぉふぉふぉふぉ〜!」
 と、高笑いの一撃でボスキャラを倒せるようにしておけばいいのだろうか・・・?
 それは楽しいのか・・・?吉田よ?
 レベル上げもほどほどにしておくとしよう。

 そう云えば最近、我が家に大家の意向により、煙の探知機が設置された。
 部屋内に設置するとのことで、必死の大掃除が連日繰り広げられる。
 一度始めたら、どこまでも推し進めたくなるのが大掃除。
 普段放置しておる場所も、それこそ姑のチェックを怖れる嫁の如く、塗れぞうきんで磨き上げる。
 おおっと、電気の傘も綺麗に拭かねばなるまい。
 一人年末の如く推し進められた大掃除は、一週間にも及んだ。
 煙探知機設置日前日。
 「ふぅ・・・。これでよし。見て驚け、工事の人よ!!」
 と、一人部屋の真ん中で高笑いだ。
 そしてその日はやってきた。
 稽古日だったため、一旦外出。指定された時間に家に帰られるよう、稽古時間を調整させてもらい、いざ、テコテコと駅から家に向かう。
 我が家が見え始めてきた時だった。家の玄関の前に、脚立を抱えた作業着姿の者が立っており、ピンポンに手を伸ばさんとしている・・・!おお、あれぞ工事の人ではあるまいか?おいちゃんよ、そのピンポンを押しても中からは誰も出てこないそ。何故なら、その家の人は、今、屋外を歩いているこの俺だからだ!!ババ〜ン!!
 などと、ほくそ笑んでいても可哀相なので、「あっ。すいません、そこウチで〜す」と駆け寄る。
 「ああ、ギリギリ間に合ってよかった〜」と云えば、
 「ありがとうございます」と何故かお礼を返される。
 よいのだよ、工事の人。
 後は食器棚の縁すらも綺麗になった我が家を見るがいい!そして、煙探知機を速やかに設置するがいい!!(偉そうだ・・・)
 「じゃ、早速はじめちゃいますね〜」
 と、脚立を持って作業員さんが家に入ってから三分後・・・。
 「はい、じゃコレで終わりですので!サインだけいただけますか?」
 ・・・終わった。
 わずか三分で・・・。
 おそらくこの作業員さんは我が家の天井しか見ていないに違いない。
 速やかすぎるだろコンチクショウ!!(叫び)
 いや、いいんだ。作業員の人はコレを付けにやってきて、そして驚くべき早さで設置を終了し、去っていっただけなんだ。本日のイベントは本来それだけなんだ。
 勝手に部屋を綺麗にし、「どうだ、作業員!!我が家はスッキリと綺麗であろう!?」と鼻をフンカフンカしていて対抗意識を燃やしていたのは・・・僕の勝手なのだ!!(ババ〜ン!!)・・・解っているんだ。
 しかし思う。
 「ここ一週間の血のにじむような大掃除は一体なんだったのだろうか・・・」と。
 勝手に掃除して、勝手にそう思う。人とはなんと哀しい生き物なのだろうか。
 その事を、仕事柄そういう工事に詳しいよちさんに泣いて語ったところ、
 「あのねぇ、そういう室内工事の人は、人の家に入るのなんか慣れてるんだから、ちょっと汚れていようが関係ないんだよ。あんまり気にしてないよ。」
 と、半笑いで云っていた。
 ・・・そういうものなのか・・・!大変勉強になり申した。
 天井のすす払いまで行った僕の姿が、今は滑稽にすら思える。
 我が家は大仏殿でも何でもないのにな・・・。
 そういうわけで現在、すっかり綺麗になった我が家の天井に、煙探知機がキラリと光り輝いている。


(その探知機は、作業員の方の話によると、殺虫剤や煙草の煙にも反応して「ピーピーピー」と音を鳴らしてしまうようだ。夏場になって、もし我が家にG様(黒光りにしたアンチクショウ)が出現した場合、僕は探知機近くでも躊躇なく殺虫剤を吹き付け、探知機をピーピー云わせてやろうではないか・・・!出なきゃそれが一番いいのだが・・・G様。)