其之弐百拾質『新エアコンへの長き道のり』の巻



エアコンが新しくなった。
本当は1月の末辺りに、我が家以外の交換工事は行われていたのだが、「公演直前の土曜なんか立ち会えるわけネィだろスカポンぐぁー」と、駄々をこねた結果、3月も末の交換となった。
無論「芝居の練習で…」などと云えば、事が面倒になるので、社会人の魔法的一言「土日も仕事」で押し切った1月。
「ご両親やお友達の立ち会いでもいいんですけど…」
仲介業者の気弱な兄ちゃんが云う。
「親は北の民だし、友人は仕事が一緒だから駄目だす」
「どうしてもダメだすか…」
「だめだす」
我が激しき拒否を受け、兄ちゃんは切なげに一言こう云った。
「困っちゃったなぁ…」
知るかこの青二才がああああああああああああああああああああああああ!貴様は何だ?!一昔前の歌謡曲か!デートに誘われているわけでもないのに、勝手に困っちゃうんじゃネェ!
予定を合わせられない僕も申し訳ないことこの上ないが、寄りによって契約者に対してダチのような口の聞き方をするたぁいい度胸だ。
かつて営業としてアチコチの会社を回っていた、ニャー七海の心に火がついた。
「テメェが困ろうがどうしようが俺にゃあ関係ネェんだよ!(いや、あるが…)エアコンが古くても俺ぁ痛くも痒くもネェから、そのままにしておきやがれ!(ほんとは替えてもらったら嬉しいけども…)」という意味合いの話を、極めて社会人的口調でさせていただく。
「あうっあうっ…またかけます」
そう云って一度電話を切った坊ちゃんから、その後二度と電話はなかった。
クビになっていなければいいが…。
随分経ってから、別のおねぃさんから、「3月でどうよ?」と聞かれ、あっさり「いいよー」と承諾。今に至る。
しかし実は困っちゃっていたのは彼だけではなかったようで、交換業者さんから「3月末までに終わんネェと、金がもらえにゃいんだよー」と泣かれた。
すまん!おいちゃん!
交換日は練習日だったため、「4時時半に帰るよーん」と伝えてあったのだが、焦るおいちゃんより4時過ぎに電話が入る。
「4時半に帰るって入居者が云ったなら、その前に電話なんぞ入れてはなりませんねぇ…カチャリ」と、別の用事で同行していた吉田氏が冷たい瞳で言い切る。そう、吉田氏はその道のプロ…!その時のヤツの目は、とても怖かった…!かけていないはずの銀縁メガネすら見えたぜ…!
そんな長い道のりを経て、我が家のエアコンは新品になった。
雨の中、中と外を行き来して、黙々とエアコンを替えてくれた兄さんは、その傍らで今公演の舞台設置について、図を用いてまで熱く語る我々をどう思ったであろうか…。
こんな生き物に振り回され、さぞゲンナリとしたことであろう。
翌日、明るくなってから家の前を見たら、旧エアコンを壁に固定する金具が、ゴロンと落ちていた。
それは、僕のわがままのせいで、困ってしまった人たちの思いが詰まった嫌がらせに違いない…。

(ほぼ毎朝、オハスタを見ていた僕は、3月で番組を卒業する番長とオハガールたちのオハスタ卒業式を見て号泣しました。しまったァ!出勤前なのにィ!)