其之弐百弐拾煮『嗚呼…幻のビリーたち』の巻 |
|
一枚のDVDが送られてきた。 送り主は北の民たちである。 …特に頼んでおいたものでもなし、どことなく怪しい雰囲気が漂うソイツを、とりあえずそっと冷蔵庫にしまう。 そうしてDVDがヒンヤリ冷やされはじめてから数日後…北より一本電話が入った。 「例のモノは届いたのか?」 貴様はスパイか何かか…? 届いたがどうした? 「…見たのか?」 だから貴様はホラー映画の出演者か! ゴクリと唾をのむな! あんな怪しげなもの、見ずに保管してあるわ!…冷蔵庫に…。 「んなっ…!貴様…俺たちの熱い想いを…そんな冷暗所に!!」 あまりに泣き叫ぶので冷蔵庫より救出、何分あるのだと問えば、50分ほどあると云うので、とりあえず見終わったらまたかけると言い残し、電話を切る。 …さて、DVDだ。 見ると云ったからには、見なければなるまい。 気合いを入れるため、お菓子と飲み物を用意し、万全の状態を作る。さぁ、「楽しい遠足〜三十代篇〜」でも、「オカマの誕生会」でもドンと来い! DVDが動き出した。 …チャチャチャ♪チャチャチャー♪ うーん…なんだろうなこの聞き慣れた音楽は…。 アレだな、こりゃ今夜光堂でも取り入れてる「ビリーズブートキャンプ(巷で噂の筋トレエクササイズ。ひたすらガッチリ行うと、やがて筋肉がむきむきになる。)」の音楽だな…あははは…なんかイヤな予感がするな…。 パッと映像が映りこんでくる。 見覚えのある部屋の中でサイドステップをしている変なタンクトップ姿の日本人たちは……北の民たちだああああああああああああ…!!(絶望) なにしとんねんオマエラ!! なんで自宅でビリーズブートキャンプ再現しとんねん!! 中央で頑張っているA井さんはビリー役ですね…異様に生白いですけど…。 よく見ればジュリアンとシェリーもいるじゃないですか…既にいい歳のオッサンでうっすらヒゲ生えてますけど…。 皆一様に顔が真剣なのが怖い。 ニセビリーが云った。 「ヘイ、アケーミ!今からビリーズブートキャンプを始めるぞ!あきらめずにしっかりついてくるんだ!いいな?」 …もうアンタ、ビリーっつよりはなだぎって感じですが…。 勢いよく始まったブートキャンプだったが、まず当のニセビリーが開始10分ほどでげっそりして人相が変わり、青ヒゲジュリアンがスクワットに耐えきれず後ろに転がり、太ったシェリーの足がプルプルふるえだす…。 怖い…! 大の大人たちがリアルにブートキャンプメニューにやられていく様が怖い! あっ…ジュリアン倒れた…。 ビリー息も絶え絶え…。 シェリー白目…。 フッ…所詮は運動不足最高潮のパソコン関係会社員どもめ!貴様らなんぞがいきなりビリーをはじめたところで、じわじわ弱っていくが関の山よ! しかしあきらめずに続けていけば、きっと体力がついて最後までついていくことが出来るようになるぜ!…ってなんでオレがテメェらを励ましてんだよコンチクショウ!! っていうかすげー後ろにいるヤツ、ものすげぇついてきてるんですけど!?よく見たらムキムキでプロっぽいんですけど!?なんでアイツをビリー役にせんかったんじゃ!? 最終的にDVDはヨレヨレなオッサンたちが「びびび…(声が震えている)ビクトリーひひひぃ…」と万歳をしたまま砕け落ちる姿のスローモーションで終わりを告げた…。 「どうだった?(笑顔)」 そう聞かれた僕は一体なんと答えればよかったのだろうか…。 「ユウがビリーやってるって聞いて、俺たちもビリーになりきってみたぜ!」 …何故なりきろうと思ってしまったんだ…? 「一人さ、ジムでエアロビ教えてるヤツいてなー!すげーうまいの!」 だからソイツにビリーをやらせろよ! 「オレ、ビリーっぽかったろ?かなり研究したんだよ…しゃべり方を!」 エクササイズを研究せえ!!(爆) もうこの人たち駄目です。 その後DVDは再び冷蔵庫深くに収納されることとなったのだが…間もなく『ビリーズブートキャンプ応用編〜北の民バージョン〜』が送られてくる…らしい。 だからそれを見てわしゃどうすりゃあいいんですか…。 (先日、サロンパスを足裏に貼ったまま会社に出向いて、自ら度肝を抜かれました。しかしバンテリンは効きますな…。) |