其之弐百弐拾駈『笑いたいぜ』の巻



よちさんが云った。
「家帰れた?」
僕は答えた。
「うん。癒された」
…。
…。
「なにが!?」
聞きまつがえた。
僕の耳には間違なく「癒された?」と聞こえたのだ。
どうしたんだ僕よ。なぜそんなに癒されたがっているのだ。どんな辛いことがあったんだ。飼っていたハムスターが、起きたらまあるい大福になっていた…というような事件に直面したりしたりしたのだろうか。
気になるところだ。

会社の昼休みに『ピューと吹く!ジャガー』の13巻を読む。
皆がスーパーのチラシに載ってたお買い得食材のことや、うまい食べ物屋のことや、旦那や子どもの話で楽しげに笑っている中、僕は隅っこで独りジャガーさんを読み、小刻みに震えているのだ。
僕ぁクラスに友達がいない文学部所属の学生か…。
本日ジャガーさんの新刊発売日。朝イチのコンビニで昼メシと共に購入し、ジャガーさんはそのまま僕と同伴出勤とあいなった。
一句。手に入れたら、すぐに読みたいジャガーさん。
こうして僕は、ざばざばははははんんんと激しく押し寄せる笑いの波に、ひたすら耐える目に遭っているのだ。
くそぅ…!
笑いたい。
笑いてぇよおっかさーーーん!(絶叫)
このまま我慢し続けたら、捩れる!捩れ切れるよ、おっかさーーーん!(絶叫)
こんな思いは、学生時代に書店で『お父さんは心配症』を立ち読みして以来だよ。…っていうか当時の僕よ。何故敢えてそこで『お父さんは心配症』をチョイスするよ…。
そういえば、僕はブルブル震えながら立ち読みを終えた後、『スラムダンク』を購入して颯爽と帰宅したのだった。
我が生まれ育った北の国では、僕らが子どもの頃、本屋さんは立ち読みフリーだった。
ビニールなんかかかっていなかったから、限られた小遣いで生きているガキどもは、皆熟考に熟考を重ねて、本当に欲しいコミックスを買って帰ったものだった。
その素晴らしきシステムのおかげで、僕は大好きなべジータが出ている巻の『ドラゴンボール』だけを揃えるという荒技を可能にした。
(その後、さらに服部平次が出ている巻のみの『名探偵コナン』を並べあげる。)
小遣いを握り締めて生きているガキんちょならではの、コミックス購入術である。
そんなことを思いながら、僕は腹筋と顔筋をヒクヒクと震わせながら、どうにかジャガーさんを完読。
凄いぞオレ!
早く家に帰って転げて笑いたいものだ。
こうなったら玄関から笑い転げはじめて、部屋奥のベッドまで転げ続けて転げ上って落ち着くしかあるまい。
休み時間にジャガーさんを読む。
ふと学生時代、教科書の影に隠れて『ロードス島戦記』を読んでいたのを思い出した。

(みるくおばあちゃんのキャラが好きです)