其之弐百御拾市『七海家湯むけり旅〜雪景色篇〜』の巻



チーム健診からの手紙が来た。
十月真っ直中に受けた会社健康診断の結果である。(その時の悲惨な有様は、小部屋で語っております)
読まずに食べるわけにもいかないので、取りあえず封筒をビリビリ破いて中身を見て見る。
『今回の健診で特に異常は見られませんでした』
…見たまえ!!(爆)
あの健診内容で引っ掛かる者がいたら見てみたいものだ。
家に帰れば、去年初めて受けた人間ドック健診チームより『前回の健診から一年経ちました』のハガキ。
経ちました、と言われても困る。
何故なら会社健保のステキ料金でなければ、人間ドックなど到底受けられはせぬからだ!
会社からの沙汰を待て!とハガキを捨てた日の翌日に、「人間ドック受けるヒトー」のお知らせ。
沙汰が思ったより早く来てしまった…!ババーン!
仕方ないのでシヨシヨと「受けまつー…」と手を上げる僕。
今年も人間ドックを受けることと相成った…。

温泉である。
実家に帰省した際、県をまたぎ某温泉地へ行った。
東北の各地温泉を巡る我が親父殿でも、訪れたことのない地である。
今年は珍しく11月に東北に初雪が降り、実家のある太平洋側宮城県でもこんもりと積っていたのだが、今回目指す温泉のある日本海側はこんもりどころの騒ぎではなく。
12月も末かと思われるほどの分厚い雪の層が、一面に広がっているのだった…。
雪が無いのは車道ぐらいのもので、歩道に積った雪なんかは除雪されずに残っているもんで、ガラガラを引いたおバアやらランドセル姿のガキんちょなんかが、ほへーっと車道の路肩を歩いている。
ね、年末…か?
この光景、まさに年末。
叫ばれる温暖化は一体何処へ消え去ったのか…。
そんな中での温泉地訪問である。
今回訪れた宿は、建物が小綺麗でありなおかつレトロな雰囲気を醸し出す宿であった。
「まずはりんごジュースどうぞー」と、ロビーでジュースを振る舞われる。うーむ、ウェルカム。
「ではお部屋にご案内しますー。お荷物お持ちしますよ」
毎度思うが、僕は宿で必ず発生する、この「お荷物お持ちします」イベントが苦手である。我が家族は皆、「テメェの荷物はテメェで持つから放っといてくれ」タイプなので丁重にお断りするのだが、今回はふとしたスキに宿の方が荷物をひょいと…!クッ…敗北!(そういう問題ではない)
部屋に通されれば、「では後に係りの者が参りますので」と案内係退出。
いくら待てども現れないので、取りあえず自分で茶をいれ勝手にリラックス。
しかしこの部屋寒いなー!暖房の温度を上げたいが、壁に「弱・中・強」の風力調節があるのみだ。隣にある黒いカバーがついた部分が気になるが…下手にいじって壊しても何なので、フロントに電話して聞いてみる。
「さ…寒いんすけど、もっと温度あがんないっすかね!?」
「あー、そうしましたら黒いカバーを開けていただきまして、そこで摘みを回して設定温度をあげてください。その温度になると自然と止まるようになってますんで!」
か…書いとけよ!!
わかんねぇよ!番頭さんよぉ!他県の者にゃあよぉー!
絶叫しながらカバーを開ければ、小さな温度目盛と小さな摘みがそこにあったのだった…。22度設定だと!?思い切って28度設定にしてくれるわ!キリキリキリキリ←地味。
そんな最中、お部屋係り参上!
「遠いところお越しいただきましてありがとうございます。…お茶もいれていただいてありがとうございます…」
ハッ!勝手にいれました!すんません!
そんなこんなで温泉だ。
下駄をはいて絨毯サクサクふみながら大浴場へ。もとより15室ほどしか客室がないのでそんなに大きな浴室ではないが、他のお客さんと鉢合わせる確率も少なくのんびり出来る。
予約さえ入れれば、一時間小さな樽風呂を貸し切れる。早速予約。
お湯は残念ながら僕の愛する硫黄泉ではなく、ナトリウム泉という少しばかり緑がかったお湯だ。水で調節しているので僕には温くガッカリだが、お湯を出た後に汗ばむほどにポカポカ具合が持続する辺りが流石は温泉である。
六時になれば「お食事の準備が整ったぜ!」とのことなので、一階の食事をする部屋へ…。
お肉が有名なところでもあるので「明美ーお肉でるわよー。お母さんのもあげるわよー←ハハ肉だめ」「いやーすんませんニヘニヘー」などと一部浮かれる七海家。
食事部屋は各々個室になっているため、のんびり出来る上に静かでよい。
しかし…まさかこの個室制度があの切なき事件へ発展することになろうとは…!
テーブルの上には既にたくさんの料理が並んでいる。
おおぅ!
あったぜお肉様の豆乳しゃぶしゃぶ鍋!お言葉に甘えてハハの分までおいしくいただくこととする。
先程のお部屋係りの人が、鍋に火を入れたりして去った後、しばし食事を楽しむ我々。
かなり時間が経ってから、お部屋係りが持って来た料理に一同騒然。
「牛のステーキでございますー」
なっ!!肉ゥ!?(驚)
わたくしたちこの時点で既にそこそこ腹いっぱい!僕に至ってはハハの豆乳鍋まで完食済であります!(爆)十代の頃ならともかく、三十代のこのわたくし、ダブルお肉はさすがに厳しく思います!ビシッ!
「腹いっぱいだなーハハハ」と笑う親父殿に「がんばって食べてくださいー」と返したお部屋係りが去ってから、七海家緊急討論開始!
「肉はないな!このタイミングで!我々の年代には無理だな!」
「父さん僕も無理ッス!せめてステーキが先だったらイケたかも知れませんが…。ハッ!お母さん食べるのある!?」
「大丈夫ー。でも煮物食べたいわー」
お肉様には大変申し訳ないが、コテコテのステーキを前に七海家撃沈…!
次こそはちょいとサッパリしたものが食べたいなー…と思っていたら、登場したのは「はい、天ぷらですー」…。
板長おおおおおおおおおおおおおおおおお!!
揚げたて天ぷらは確かにうまい!!うまいがちょいとばかり構成っちゅうのを考えてはくださいませんか板長ォ!いい加減お豆腐とか、酢の物とか食べさせてくれやしませんか板長ォ!!
そしてもう一つ。
我々を悩ませたのが、料理の出て来るスピードの遅さである。
最初の料理から十分で一品…さらに次の料理まで三十分…という「どんだけ客がのんびりすりゃあ気が済むんだあんたたちゃあ」なペース。
気がつけば、ご飯と汁モノが出終わった時点で既に開始から二時間が経過していた…!うむー!近年稀に見る家族団欒だ!
そりゃ飲み物も尽きて、自分らで番茶もいれるぜ!(二度目)
さて、ここで問題となるのはデザートの有無である。
実は僕とハハは八時半から貸し切り風呂を予約している。食後すぐに風呂に入るのもよくないだろうし、取りあえず部屋でくつろいでから風呂へ突入したい!
おそらくこれからデザートがやってくるだろう。がしかし!それを待っていられる七海家ではない!
俺は帰る!ババーン!(部屋へ)
取りあえず近くにいた仲居さんに「ごちそーさまですー」と声を掛け部屋へ。
しばらくすると「すいませんー…デザートまだあったんですけどー」とお部屋係りが、マンゴープリンを持ってやって来たぜ!
遅ェよ!!
デザートがあるなんざ長年の経験から知ってるぜ!だけど遅ェから戻って来ちまったんだよ!(爆)
「あーすいませんねー」と大人の対応を見せる親父の横から、「風呂の時間あったもんでー」とトーン低くチャチャる大人げない三十代。
ゆっくり時間が流れる宿を実感する我々でありまし…
ププププププ。
ん?電話?
「七海様、貸し切り風呂のほうですが、もう準備のほう出来てますのでフロントまでお越しください」
時計を見れば八時十五分。(予約は八時半)
ゆっくりさせてぇのか、せかしてぇのかどっちなんだコンチクショウ!!
…人情染みる心優しき宿でありました、エエ。


(先日、夜光堂ヲナゴ衆と某街を歩いているのを我が会社の方に目撃されていたようです。(笑)その時の我々と来たら、「なにがマックスくんだコンニャロウ」などとガラ悪度100パーだったので、「巨大コアラに悪態をついているのは見ましたでしょうか…?」と恐る恐る尋ねたところ、どうやら目撃場面はそこではなかったようで…いやよかった。地元近くでは「オホホ」とか笑うか、皆の衆よ)