其之弐百旧拾傘『僕に撫でられてくれる三匹の猫』の巻



家近くの猫チャトラさん(仮名)。
チャトラさんはどうやら我が家近くに生息している。
夜七時頃に同じ場所に出没。
夜のパトロールの途中なのであろうが、僕がしゃがむとスルスルと膝元までやって来て「なでれー」と顔をグイグイ押し付けてくる。
チャトラさん、パトロール脱線。いや、むしろ敵状視察か。
「なでれーなでれー」
猫なで初心者の僕、気持ちは一生懸命であるがまだまだ技術が伴わないようで、チャトラさんはいつも体をぎゅうぎゅう押し付けてくる。
チャトラさん、すまぬ。今の自分にはこの猫なで具合が限界であります!!
「なでれーなでれー」
ハアアア…!!
自分以外の生物を楽しませるためには、ちゃんと技術力を磨かねばならぬという教訓か…。
「なでれーなでれー」
僕の技術限界猫なでに満足いかぬチャトラさんは、体を擦り付けるあまりズリズリ進んで我がケツ付近まで進行。
チャトラさん、自分この状態じゃうまく撫でられる自信がないであります。
ないであります上に、チャトラさんが見えない位置から歩行者がやって来たら、暗がりの中ウンコ座りでケツを掻いている変な人と思われるであります。
常になでれなでれ攻撃を仕掛けてくるチャトラさんであるが、一度ズリズリ中に僕が地面に置いておいたスーパーの袋に突っ込んだ上にザシャンと倒し、その音に驚いてビクゥ!!と驚くお茶目な面を見せていた。
チャトラさん…あなた様が倒したその袋には、僕の夕飯がパンパンに入っているのだがその辺りどうであろう?
「なでれーなでれー…ザシャン!ビクゥ!」
チャトラさんはその日、そのリアクションを計三回繰り返した…。
それでも日々撫でられることに貪欲なチャトラさんは流石である。


通勤路の猫、シロクロさん(仮名)。
シロクロさんは、時々とあるお店の出入り口マットの上に出没する。
猫の年齢のことはよくわからないが、その風貌やら落ち着き具合からいって、シロクロさんは相当お年であるように思われる。
いかにも怪しくニジニジ近寄り、撫でてもよかですか?と尋ねた僕に、そっと目を閉じて「お撫でなされ…」。
シロクロさんは穏やかだ。
失礼して撫でさせていただくこととする。
「…………」
シロクロさんは何も言わぬ。
撫でられながら、ゆっくりと流れて行く時に身を任せているようだ。
穏やかなシロクロさんの雰囲気に思わず時を忘れそうになるも、次第にとっぷりと暮れてくる空にそろそろ帰らねばなるまいと思う。
じゃあシロクロさん僕は行くよ、とニジニジ中腰で離れれば、シロクロさんは一声「ニャー」と鳴いた。
「もう撫でんのかいのぅ」
振り返ればシロクロさんは閉じていた目を開いて、僕を見ている。
すまないシロクロさん、僕はそろそろ飯を買って帰らねば。
「ニャー(そうかあー…またなー)」
シロクロさんは穏やかだ。
田舎のじいばあさんに会った時のような気持ちになる。
シロクロさんは出没率が低く、実は今までに二度ほどしか見掛けたことがない。
シロクロさんに次に会えるのは、一体いつになるだろうか。そして時折、お店の扉がぶあ〜んと開けっ放しになっていると、流石に撫でにくいので閉まっている時に出会いたいものだ。
遭遇を楽しみにしている。


駅前の猫、シロさん(仮名)。
シロさんは駅前の駐輪場付近に出没する。
全身真っ白な猫で、暗がりにポツンと座っていてもよくわかる。
シロさんと初めて会った時、シロさんは柵の内側に座って人通りを眺めていた。
例によってニジニジ近付き、撫でてもよかですか?と問うと、にっ…よーーーんと柵と地面の隙間を抜けてやって来てくれた。
おお、シロさん、気高き純白のボディながら、なかなか気さくなお方だ。
「うなあー」
シロさんの鳴き声はヤンキーチックだ。
頭周辺をにょろにょろ撫でると、「アンタ、なでー下手じゃねー」という感じでスルリ抜け出し、しゃがんでいる僕の周りを品定めするように一周。
「アタイを撫でるなんで十年早いにゃよ」と柵の内側へと戻って行った。
駅前女王的シロさんを満足させるには、やはり我が猫なで技術では遠く及ばないようだ。
くぅ…、今に見てろよシロさん!
猫なでよち師(師匠レベル)を召喚して、いつかメロメロにしてみせる…!!
他力本願にリベンジを誓う僕なのであった。


(僕がネコを触れるようになったのは、実によち師の指導の賜であります。よち師には『アナタも七日間でネコが撫でられるようになる!よち師のパーフェクトネコ撫でDVD』を製作、通販で売り上げていただきたい!!)