其之参百伍『師走中盤日記』の巻



12月○日
門の下の狭い隙間に挟まっている猫を見た。
ちょいとデブったそいつは、一生懸命通り抜けようと頑張っている途中のようだ。
長い毛からにょっきり出た短い足をジタジタと動かして、ジリジリと体を門の向こう側へ押し出して行く。
お腹を地面にスリスリ擦りながら、ズルリと向こう側に抜けたデブっち。
僕の視線に気づいて、ハッと振り返る。
「…ナニ?」
「…別に」
「…見た?」
「…見た」
「…別に何もなかったもん」
「……」
後にこの事を動物マスターよち師に話せば、
「門に引っかかってる時に、むにってお尻掴まなかったの?」
この猫初心者に何を申すか。
さすが師ともなると発想が違う。
今度門に挟まっている猫を見たら試してみようかと思う。


12月▽日
会社帰りに、白いデブ猫・白デブさんに出会う。
白デブさんはどこかの家の飼い猫さんで、僕に撫でられてくれる人懐っこい猫である。
今日もどっかりと座って、
「おなでなされ」
と背中を向けた白デブさん。
仰せの通り背中をずりーと撫でていると、白デブさんがゴロンと横に。
「ふにゃ〜あ」
と鳴いたかと思うと、我が腕をガッチリホールドし、後ろ足でケリケリケリケリー!
オオゥ…この猫初心者にそんな高度な技を繰り出すとは。
突然のケリケリアタックに、この僕なすすべなし…と思ったその時。
我が脳内で何かが閃いた。
今白デブさんにガッチリホールドされている我が上着は…ダウンジャケットじゃあー!!(爆)
このまま白デブさんと遊び続けたら…我がジャケットの至るところから白い羽毛がもっさり飛び出て、鳥と戦ってきた人みたいになってしまう…!
はなしてくだされーと腕を振りほどけば、
「あっそぶのかーい!ていてーい!!」
白デブさん、さらにヒートアップ…しまったァ!!
生まれて初めて食らう激しき猫アタックをどうにかかわし、なんとか立ち上がれば、白デブさん我がスニーカーにでぇーいと絡みつく。
「今日はもうダメじゃあー…ばいばいー」
と一方的な別れを告げれば、
「なんで遊ばないの?」
と不思議顔。
すまない白デブさん…あなた様の巨体アタックは、猫初心者である僕にはあまりにハードルが高かった…。
今度うちの師匠よち師にたっぷりに遊んでもらってくだされ。


12月☆日
どうにもお腹が減ったので、某ファーストフード店で飯を食って帰る事とした。
セットを頼んで、お金をカウンターに置きしばし待つ。
ザシュウ!!
まずはポテトが遠いところからぶんなげられてきた。
ポテト、トレイの上を滑りながらも、そのぶっとい重さでどうにかストップ…ふー危ない。
続いて店員さん、トレイを見ずにストローとおしぼりを投げ込む!
おっとおしぼりは軽いぞ…どんどんどんどんトレイ上を滑って…はみ出したァー!!
悲しきかなおしぼりは、トレイから半身はみ出た哀れな姿に。
その間にもバーガーがデスンと置かれ、飲み物がダスンと置かれ、揃え方に重量感溢れるセットが完成した。
はみ出しおしぼりに気づいた店員さん、さりげなくちょいちょいと直すが、おしぼりが客側のため全ては目撃されているのだ。
と、そこで店員さん一瞬沈黙。
のち、
「お客様…640円になりますが…?」
カウンター上のお金を見失う。
ポテトが投げ込まれたくらいからずっと650円が置いてあるのだが…。
お金を見つけた店員さん、お会計をすませお釣りの10円とレシート・クリスマス抽選補助券を差し出した僕の手にぽんとざっくり置く。
既に片手にトレイを持っていた僕、レシートとクリスマス抽選補助券の上を10円玉がスルスルと滑っていくというピンチに直面!
指の端に引っ掛けて、10円玉コロコロにはならなかったが、店員さんの来年の目標には『ざっくりモノを置かない』を掲げてはどうかと思う僕なのであった。
ああ…混んでいてもモスにすればよかった…!


12月◎日
よちさんからいただいたかりん蜂蜜を、毎晩原液でベロベロ舐めている。
ふと目が覚めた夜中、なんだか甘いものが飲みたくなって冷蔵庫へ…。
しまった、ミネラルウォーターしかないじゃないか。
そこで思いついたのが、よちさんのかりん蜂蜜だ。
冷蔵庫の明かりの前までずりずりと引きずって来て、蓋をあけ…手にしたカレー用プーさんスプーンでたーっぷりすくい取り…。
ずぞぞぞぞぞー…!!
一人暮らしで良かった。
端から見たらその姿は、間違いなく妖怪油舐めである。
スプーンを洗ってもう一口。
ずぞぞぞぞぞー…!!
ヒヒヒヒヒヒ。
その後満足して眠りについた僕であるが、翌朝冷蔵庫の前にドドンと置いてあったかりん蜂蜜瓶を見て足の指をコーンとぶつけたのであった。
しかしうまいぞかりん蜂蜜!
先日プレーンヨーグルトに混ぜてみたらベストマッチであった。
蜂蜜たっぷりなので、明日はパンを浸して食べてみようと思う。


12月×日
我が愛するゲルマ塩がきれてしまった。
風呂場で腹にゴリゴリ塗り込み、その後さっと洗い流せば寝るまでほくほく温かい優れもののマッサージソルト。
硫黄のにほひが大好きな僕は、腹に塗り込む前に、手のひらにこんもりのせたゲルマ塩をくんかくんか嗅ぐのが風呂場での日課である。
嗅げば遥か我が故郷、北の地の温泉街を思い出す…ステキな硫黄臭…。
明日の購入を近いながら、ふと空容器を見つめれば、
「イオウの香りが気になる場合はボディーソープ等で再度体を洗ってください」
の文字が…。
な、ナニィ!?
その硫黄臭がいいのではないか!!
その硫黄臭こそが幸せの証ではないのか人よ!?
ああ、ウチの蛇口から硫黄泉が出ればいいのに…とすら思っているのだ僕は。
どこかの温泉地でどこかのガキンチョが言った。
「オナラの臭いがするー」
と…。
そんなことを思い出してちょっとアンニュイになるとある日の僕なのであった。


(先日、ショウガと唐辛子のサプリメントを飲もうと口に放り込んだら、舌にカァー!!と刺激が走りビックリしました。水は初めから右手にスタンバイしていなければ…)