夜光堂TOPそこ、零れてる!!僕んちのたんす



にちようび



ビックリするくらい大きな音で目覚ましが鳴り響き、慌てて飛び起きる。
「い、今何時ッ! は、8時ぃ!!!!!」
遅刻だ、完全に遅刻だ! 今週ってお茶当番じゃなかったっけ!? ひいいい〜!!
また怒られるぅぅ〜。お局の三上さんに、くそじじいの仲田課長、いいこぶりっこのマキ、はぁ、考えるだけで眩暈が・・・・。
そこまで、瞬時に考えて、ふと、足下の壁に掛かったカレンダーに目をやる。
「21日。・・・・赤丸。・・・・日曜じゃん、今日・・・・!! 何だよ、もぉ〜」
一気に力が抜けて、起きあがったばかりの布団に再び倒れ込みそうになるのを慌てて片手で支えて持ち直す。
「うぉっと。寝ちゃダメじゃん! 危ない、危ない・・・・」
そうだ、今日は、お出掛け。お出掛けの為に目覚ましかけといたんだった・・・・。
予定のある日曜日は久し振りだ。
大抵、土曜日の夜に飲んだくれて明け方に帰宅。お腹空いて目覚めたら、昼過ぎ。
あるものをテキトーに食べたら、また、布団に戻っておやすみ。起きたら、サザエさん。
早くて笑点。寝過ぎで痛む頭を抱えて、またあるものをテキトーに食べて、お風呂に入って、さっさと寝る。
これが、あたしのここ数年の日曜の過ごし方だ。
友達がいないわけではないけれど、そこは、それ、年頃の娘さんたちだ。
『日曜? 彼と約束があるからぁ・・・・。ゴメンネ』
ふはははは。何度聞かされたか、このコトバ。みんな判で押したように、このコトバ。
聞けば聞くほどあたしを惨めにしてくれる、このコトバ。
このコトバを聞く位なら、最初から独りぼっちでサザエさんとジャンケンして終える休日の方がよっぽど、マシなのだ。
だからもう、誰も誘わない。誘ってくれる人がいれば、出るときもあるけど、滅多にそんなことはない。
一人でも出かけることは出来る。実際、なるべく出かけるように努めたこともあった。
でも・・・・日曜日の街に溢れているのは・・・・おとーさんとおかーさんと小さな子供の三人連れ。不必要に身体を寄せ合って仲むつまじく歩く恋人同士。無論、そればかりではないんだろうけど、あたしの目に入るのはそんな光景ばかり。空しさが募るだけ。
目の毒だ。
そんなワケで、休日は何があろうと出歩かないことにした。食べるものが何もなくなったって、一食や二食抜いたところで死ぬわけでなし。むしろ、ダイエットになっていいくらいだ。
寝ているのが一番ラクなのだ。何も考えない、何も見えない。それが一番ラクなのだ。
冷水で顔を洗う。やっぱり昨日飲み過ぎてしまったか、目蓋が腫れぼったい。肌もかなり荒れてる。こりゃ、化粧をちょっと厚めにせねば。
・・・・日曜日に化粧をするなんて久し振り。
した方が・・・・いいのかな、お化粧。
「・・・・どうなんだろ、この場合」
一応、それも予定して目覚ましかけたんだけど。あと・・・・心の準備の時間も計算して。
『一度3人でお会いして、お話ししたいんですが』
彼の奥さんから電話が掛かってきたのは一昨日の夜。
まぁビックリはしたけど、今まで想像したことがないワケじゃないから、案外冷静に受け答えができた。
待ち合わせの場所と時間を事務的に決めて、電話を切った後に涙が出ることもなかった。
むしろ・・・・どこかでホッとしていた。
終わった。
日曜日は『家族』と過ごしてる彼。あたしは一人なのに。
あたしが一人でカップラーメンを啜っているとき、彼は奥さんの作った焼きそばを堪能しているかもしれず。あたしが磯野家の日常生活をぼんやりと眺めているとき、彼は5歳の息子をお風呂に入れているかもしれず。
なるべく何も考えないようにしようと思っても、それらの想像はふとした瞬間にあたしの頭をよぎり。その度に、絶望的な気持ちにさせた。
毎週、日曜日になる度に、思っていた。
こんな不愉快な関係はさっさと終わらすべきだ。終わらせたい。
世間体がどうとかじゃなく、あたしが惨めだから。
ちょっとだけ考えて、やっぱりお化粧は薄目にすることにした。
戦う気はない。綺麗じゃなくても別にいい。
さっさと白旗上げて帰ってこよう。
そして、以前雑誌で見て以来行ってみたかったあのカフェに一人で入ってみよう。
一人だって平気。
これで・・・・やっと、これで日曜日を憎まないで済む。
鏡に写る自分の顔が妙に晴れ晴れして見えるのが何だか可笑しかった。


A Theatrical Campany yakoudou