|
彼女の猟分 あたしとアイコさんはとっても仲良し。 クールでキレイ系、男の人に交じってバリバリ営業なんかもしちゃう総合職のアイコさんと童顔でお目目クリクリ可愛い系、仕事は地味で単純事務職のあたしとは、好きな服、好きな音楽、好きな食べ物、いちいち面白いくらいに全然違うけど、あたし達はとっても仲良し。 ランチタイムに、近所で評判のベーカリーで買ってきたフランスパンのサンドイッチを優雅な手つきで口に運びながら(コレがアイコさん)、お母さんが作ってくれたカラフルなお弁当をちまちまと食べながら(コレがあたし)和やかに語り合っているあたし達の姿は『目と魂の保養』と社内で専らの評判だ。 「全く性格違うのに仲良しだなんて不思議だよねぇ」 と良く言われるけど・・・・みんな分かってない。全く違うからイイのだ。 だって。だって。 あたしとアイコさんは。 女同士の仲違いの原因でもトップクラスであると思われる。 男絡みのトラブルが起こりえないくらい、お互いに好みが全く違うのだから!! キャリアウーマンで今風のアイコさんは、意外や意外、男臭くて体育会系の『黙ってオレに付いてこい』タイプや、地味で真面目で内気なクラ〜イ感じの男が好み。 対するあたしはと言えば、オシャレで今風で女の子の扱いに慣れきった、所謂『軽い』感じのオトコが好き。インテリタイプにも弱い。 ところが皮肉なもので、それなりにモテるあたし達なのに、寄ってくるのはいつも好みとは正反対のタイプなのだ。 大人で派手顔のアイコさんの元には、遊び慣れた今風の男の子が『今度二人で遊びに行かない?』という言葉と共にわんさと携帯番号とメールアドレスが集まり、あたしのトコロには、大学でラグビーをやってたとか言う無骨なオトコが似合わぬ花束なんかを抱えて、『き、君のこと好きなんだ。オレと正式につ、付き合ってくれないかな』と、一世一代の決心、みたいな顔でやってくる。 『真面目な人が一番よ。口先ばかりのオトコはもう、うんざり』 アイコさんはちょっとキツめに描いた形の良い眉をキュッと寄せてつぶやき、 『オンナ慣れしてる人の方がいいですよぅ。恋愛慣れしてない人の告白って重くてイヤ』 と、あたしはアクセントにピンクのグロスを載せた唇を尖らせ、 『上手くいかないよねぇ』 とお互い顔を見合わせ、溜息をつく。 あたし達はとっても仲良しなので、たまぁに協力し合う。 アイコさんは、営業部の打ち上げの席にさりげなくあたしを呼んでくれて、社内で浮き名を流しまくってる澤野くんの隣に座らせてくれた。お陰様で、あたしの携帯メモリーには密かに狙っていた彼のプライベートアドレスと携帯電話が記録され・・・・更に予想外に・・・・『酔った振り』が効を奏し、その晩は彼の部屋にお持ち帰りされ、素敵な夜を過ごすことが出来た。 けど、最近、彼がメールにも電話にも全く応じないのは何故なのかしら? そういう、ツレないところがまたいいんだけどね〜。 ま、それはいいとして、素敵な夜のお返しにと、あたしは、『急にお腹が痛くなって・・・・チケット勿体ないから、アイコ先輩に代わりに行って貰うね、ゴメンネ』と、約束当日にドタキャンをかまし、デートと言えばスポーツ観戦にしか連れて行かない、脳みそ筋肉男との一日デートをアイコさんのためにセッティングした。 アイコさん曰く、融通が利かない、真面目で一徹な仕事ぶりが好き・・・・らしい。 ま、いいけどね、人それぞれだし。 ジーンズ姿で公園を散歩して、売店のホットドッグを囓りながら、たった今観てきた試合について熱く語り合い、夕飯はファミレスで済まし、お酒も飲まず駅の改札で別れる、という、色気のカケラもないデートを・・・・アイコさんはとっても楽しんだそうだ。 次の日、筋肉男に『昨日は残念だったね。すごくいい試合だったのに。来週は・・・』と違うスポーツのチケットを差し出されたのは内緒だ。 『牧野さん(アイコさんの名字)って気さくな人だね。いい友達になれそうだよ』って言ってたのは、もっと内緒だ。 更に、あたし達はホントに仲良しなので、お互いの親も知らないコトを知っている。 例えば、あたしが街でナンパされた男の子との一夜限りの関係のつもりが、運悪く大当たりしてしまい、入社一年目の初ボーナスをその後始末で全てパァにしてしまったことを知っているのは、この地球上ではあたしとアイコさんだけだし(手術に関わったイシャや看護婦さんは別だ)、アイコさんが数ヶ月間前まで、企画部の山下さんと不倫関係にあったことを知っているのは、多分本人達を除けばあたしだけだ。 勿論、誰にもそんなことを言う気はないし、アイコさんだってその筈。 あたしは、アイコさんが大好きだ。 時々、あたしのことを「アタマとオシリの軽い馬鹿な女」みたいな目で見るのはホントーにムカつくけど。 化粧を落とすと案外地味顔で、30近くなってきて体型が崩れがちになってきてるのを、高価なボディースーツとかで何とかごまかそうとしている姿には、つくづく笑っちゃうけど。 あたしたちは、本当に仲良しなのだ。 互いの領分を侵さない限りは。 |