夜光堂TOPそこ、零れてる!!僕んちのたんす



思ひ出ほろほろ@



それはまだ、私の肌が透き通るように白く、消えないシミもシワもクマもなかった頃のこと。
クラスに、どぉ〜しても好きになれない女がいた。
理由は・・・・。
ヤツと好きな男のコが被ってたから。
あ、待って、ページを閉じないで(懇願)!! 理由はそれだけじゃないんだってば!!
恋に恋するオトシゴロにとって『誰かと好きな人が被ってる』ってぇのは、それはそれは深刻な話で。何と言うか・・・・『先に好きだと宣言したモノ勝ち』みたいな空気があって。
言えませんでしたもの。周りの人に。私が彼を好きなこと。
そして、その『誰か』が、学年でも名高い『ぶりっこ』(ところで、今でもこの言い回しは存在するのであろうか??)であったとなれば、それはもう、中学生女子には疎ましいに充分な理由だ。
そう、ヤツ(名をミホ、ということにしておきましょう。仮名です)は、男子と話すときは妙に上目使いで、鼻声を使い、一人称は『ミホはねぇ〜』な、典型的なオンナオンナキャラだったので、私だけでなく大半の女子に疎ましがられていたのである。
あ、あと、『女の媚』を理解できない、一部の男子諸君にも。(中学生男子は時に女子よりもその辺りが潔癖である・・・)
それでもミホが苛められたりしなかったのは、ひとえに、当時彼女と尤も仲が良かったミサコ(仮名)が、クラスの姉御的存在であったからだ。
一見、何の共通点もない二人なのだが、『恋に生きちゃってる』というか『女の子といるより男の子とお喋りしてる方が楽しい〜♪』という生活を送っている点で通じ合っていたのだと思う。
そして、ミサコには同じクラスに『結婚の約束をした』彼氏がいて、ミホの思い人(私の思い人でもあったわけだが)と、その彼がまた仲良しであった、という点も理由の一つだったと思われる。
溢れる思い(笑)を、ダダ漏れに、体育の授業の後に彼のジャージを畳んでやったり、放課後の教室で彼の机から教科書やノートを引っ張り出して、そこに書かれた名前や悪戯書きを愛おしそうに撫でたり、彼の下の名を呼び捨てて(因みに春日部の幼稚園児と一字違い)「昨日、楽しかったよねぇ」とか何とかクラス中に聞こえよがしに甘えてみせるミホの姿は・・・とにかく、目障りだった。
(私は宿題を写させてあげるくらいが精々でしたよ・・・。もう、この頃から『利用される女』だったわけですな、笑)
え? あー、そうですねぇ・・・。
単純に羨ましかったんでしょうね。
今なら、分かるんですけどね、そんな自分の屈折した思いが(笑)。
しかし、当時は『好きな男に変な虫がついたことに悩むワタシ』ってのに酔いまくっていたので、「私なら、あんなみっともないことしないわ」とか何とかうそぶき、赤川次郎の短編集読みながら、心のハンケチを噛みしめていたわけだ。自分、何もしないくせにな!
まぁ、そんな私の救いは彼がミホの言動を迷惑そうな素振りであしらっていたことであった。
中学生、恋に興味津々だから。やっぱり、周囲が冷やかしまくるわけですよ。
それにキレた彼が時々本気で『お前、明日からオレに話しかけるんじゃねぇぞ!』と怒鳴っている姿を何度も見たし。
その度に「ザマミロ、ばーか!」と思っていた私(←質悪いですね)。
それでもミホはケロっとしてて翌日になれば、『ねぇ、ねぇ〜』と子犬のように彼の元へ駆け寄る・・・・そんな繰り返しだった。
ある日。
何故か移動教室の時に、ミホと二人っきりになってしまった。別々に行くのも何なので(表面上はしごく和やかに付き合っていたのだ。中学生女子の友情は怖いよ?)並んで歩いた。
どーでもいいことをくっちゃべりながら、移動する道すがら、後ろから来たクラス男子が私たちを追い抜きざまにとんでもないことを言ったのである。
「おい、ミホ! アイツってホントはミサコが好きなんだぜ、知ってたか?」
衝撃の真実! グループ交際に見えて、実は泥沼の三角関係だった!?
思わず咄嗟に横を歩くミホの顔を見た。それが事実かどうかよりミホが、それにどう返すかの方が気になったからだ。
ミホは・・・涙目で小さく「知ってるもん」とつぶやいた。
その瞬間。
私はあんなに嫌いだったミホの肩を何のためらいもなく抱き寄せ、あまつさえ「気にすんな」と何度も何度もささやかけた。
まるで、親友のように。
今でも、信じられん。
この私が・・・。
まるで、ドラマ。
多分、ミホが「やだも〜、何でそう言うこと言うわけぇぇ〜?」とかいつもの鼻声を出していたら、私はそんな行動をしなかっただろう。
誓ってもいいが、あの時の私の中には同情心とか哀れみみたいなものは、一切なかった。
ただ、横を歩く小さな女の子を支えてあげたいと思った。
結局、本格的に泣き出したミホを宥めながらゆっくり移動教室までの廊下を歩いた。
余計なことを言った男子に怒りを覚えながら。不思議と自分の気持ちについては考えなかった。
思うに・・・・恋じゃなかったんだな、私のは!
その後・・・・ミホと私は、無二の友人に・・・・なってたら本当にドラマだが、そんなことは起こらず、翌日には、もう既にミホの鼻声に冷たい視線を向けていた私(笑)。
でも、このことはクラスの誰にも言ってない。誰かに言いたいとも思わなかった。
ミホも相変わらず、卒業まで鼻声でオトコを追い回していた。
そんな、もしかしたら、私の生涯最初で最後かもしれないオトコマエ行動の思い出。


A Theatrical Campany yakoudou