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とけい

2010.06.23

 
いつもは腕時計を全くつかわないのです。
その辺にいっぱいあるし、携帯でも分かるし…なにより、腕時計をはめなくなって慣れてしまったら、手首がフリーなほうが楽なのです。
 
ですが、仕込みのときは時間がすぐ分かったほうが楽なんですよね…。
えーとって携帯を取り出す手間も惜しいし、作業している場所から時計が見えないことも多々ある。
ので、いくつか持っている腕時計のうちひとつを電池を入れて動かすことにしました。
腕にはめなくたっていいもんね。
ベルトに通すとか、持っているものにつけとくとか、そういうのでいいかな、と。
 
ということで、止まっている時計から適当に「見やすそうなもの」を選んで電池交換に持って行きました。
時計屋さんの中にある、「修理専門」みたいなところで、時計を受け取る時も必ず専門のトレーで受け取る、というなんともしっかりしたところなのです。
「電池交換お願いしまーす」
と気楽に出したところ、バンドの部分にちょーっと傷があったからか、さすさすと触ってみたり、表裏とチェックをしていたのですね。
まぁ、電池交換自体は問題なくさっくりやっていただけたのですが。
何気なさを装って、店員さん…多分、職人さんが話し出したのです。
 
「これはスウォッチというもので、電池を交換する場所しかあかないんです。故障をしたら、この部分(本体)を全部交換するしかない。ただ、少しずつ違うものですから、同じものがあるとも限りません」
…え?
なんだろう。この淡々としたはなしくちは。
なんとなく怒られている気がする(汗)。
そこで、思い出しましたよ、預ける時の会話を。
 
『(バンドの傷を触りながら)このバンドはスウェードですので、少し傷がつきやすいものです。今後はこの交換も考えたほうがいいかもしれませんね。』
『・・・?はい。』
『因みに、この時計、いつ購入されました?』
『かなり、前ですね』
『そうですか…』
 
つまりこの職人さんは、かなり前に購入した時計をもっと丁寧に扱え、と言いたかったのですよきっと。
壊れたらなおせないタイプのものなんだから、バンドに傷がついたままにしたりしないで、丁寧に大事に使いなさい、と。
 
あああああ、仕込みでざっくり使うためにざっくり選んで電池交換してすみませんでしたー!!!
えーと、せっかく動くようにしていただいたので、持ち歩くバックにでもつけて少し使うようにします。
 
いやぁ…職人さんってすごいなーと思いつつ、顔も口調もまったく普通なのにあからさまに怒られていると思うこの「気」が…またスゴイナーと思いました。